過労死危険水準の過重労働が見られる事業所が激増
先日、東京労働局より「従業員の健康管理等に関するアンケート調査結果」が発表されました。この調査は都内に本社を置く規模300人以上の企業に対し、健康管理等の取組状況に関する調査を実施したものですが、非常に驚くべき結果が出ていますので、本日より数回に分けて、そのポイントを取り上げたいと思います。本日は過重労働の状況について見て行きましょう。
いわゆる過労死認定基準(「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」基発第1063号 平成13年12月12日)では、発症前1か月間におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、その過重労働と脳・心臓疾患発症との関連性が強いと評価できるとしています。よって労働時間管理としてはこれらの水準を超える時間外労働は非常にリスクが高い状態であるとされるのですが、今回の調査では1か月100時間を超える時間外・休日労働があるとする企業がなんと47.5%にも達しており、また、1か月に100時間を超えるか、2~6か月を平均して月80時間を超える時間外労働があるとする企業は63.1%(グラフはクリックして拡大)にも上っていることが明らかになりました。特に後者の値は、平成14年度が24.9%、平成15年度が31.9%、平成16年度が35.7%でしたので、今回の調査では3年でほぼ倍増という結果になっています。
またこうした状況を受け、過重労働による脳・心臓疾患の「発症が懸念される」としている企業は全体の50.2%に上っており、内訳としては「過去3年程度の間に過重労働が関連したと思われる健康障害の発症例があった」企業が3.8%、「発症例はないが発症が懸念される」としている企業が46.4%となっています。このように企業の過重労働は深刻な状態にあり、労働安全衛生の観点から早急な対策が求められているのは間違いありません。過労死など悲惨な事故が発生する前に、労働時間の適正管理を真剣に考えていきましょう。
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参考リンク
東京労働局「従業員の健康管理等に関するアンケート調査結果」
http://www.roudoukyoku.go.jp/news/2008/20080512-kenkokanri/20080512-kenkokanri.html
厚生労働省「脳・心臓疾患の認定基準の改正について」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/0112/h1212-1.html
(大津章敬)
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