法制化された中国における年次有給休暇の規定

 今回は9月18日に公布・施行されました、「企業従業員年次有給休暇実施弁法」について報告いたします。表題のとおり、この弁法は「有休」について定めたものですが、中国における「有休」の概念そのものは、1995年1月に施行された、労働法規の基本法である「労働法」第45条において、「国は年次有給休暇制度を実施する。労働者は1年以上連続して勤務した場合、年次有給休暇を享受する。具体的方法は国務院が規定する」と規定されていました。この後、具体的な規定がなかったところ、2008年1月より「従業員有給休暇条例」が施行され、その具体的取り扱いを定めた、今回の実施弁法の施行となりました。


 有給休暇条例と実施弁法のポイントは下記のとおりとなります。
有給休暇実施条例
【第3条】累計勤務期間が1年以上10年未満の労働者は年休5日間、10年以上20年未満は10日間、20年以上は15日間とする。法定休日と休日は含めない。
[解説]
 割当られる休日そのものは少ない。中国では病欠時でも、診断書があれば、「給与計算基準額(通常給与×70%)×支給割合60%(勤務年数によって変化)」が病気休暇給与として支給されることも影響していると思われる。


【第5条】(前略)有給休暇は1事業年度内で集中的に割り当てることも、時期を分けて割り当てることもできるが、一般的には年度をまたがない。単位は生産や業務上、年度をまたいで割り当てる必要がどうしてもある場合には、1年度をまたぐことができる。単位は業務上の必要性から規定通りに有給休暇を割り当てることができない場合は、本人の同意を得た上で、割り当てないことも可能。単位は、その労働者に付与すべき休暇日数に対し、日給を標準に300%を報酬として支払わなければならない。
[解説]
 基本は毎年精算(余った有休の買取)を行なうことが前提となる。買取については、日給ではなく、上乗せした価額にて買取を行なうこととなる。300%については、実施弁法を参照。


企業従業員年次有給休暇実施弁法
【第3条】従業員が連続12ヶ月以上勤務した場合、年次有給休暇を享受する。
【第4条】年休の日数は従業員の累計勤務時間によって確定する。従業員が同一または異なる使用者において勤務した期間、並びに法律、行政法規または国務院の規定により勤務期間に見なされる時間は、累計勤務時間に算入される。
[解説]
 累計勤務時間は他の雇用単位での勤務期間も含めて判断される。


【第5条】従業員が使用者に新規採用され、且つ本弁法第3条の規定に合致する場合、同年度の年休日数は同使用者において残った西暦日数を換算して確定し、換算後1日を満たさない部分は年休として享受しないものとする。前項で規定した換算方法は次の通りとする。
(同年度同使用者における残った西暦日数÷365日)×享受すべき年休日数
[解説]
 途中入社の場合、暦年での残り日数に応じて、1年目の有休を日数按分にて確定。


【第6条】従業員が法により享受する帰省休暇、結婚・喪中休暇、出産休暇等国家規定の休暇、並びに労災による賃金支給の上の出勤停止期間は、年休期間に算入しない。
[解説]
 病気による休暇は明記されていないが、おそらく上記同様年休期間に算入しないと予想される。


【第10条】使用者が従業員の同意を得て年休を手配しない、または従業員に手配する年休日数が享受すべき年休日数を下回る場合、本年度内において従業員の未消化の年休日数に対し、その1日賃金収入の300%を未消化年休の賃金報酬として支給する。その中には使用者が従業員に支給する正常勤務期間の賃金収入も含まれる。(後略)
【第11条】未消化年休の賃金報酬を計算する1日賃金収入は、従業員本人の1ヶ月賃金を1ヶ月賃金計算日数(21.75日)で割って換算する。前項でいう1ヶ月賃金とは、従業員は使用者における未消化年休の賃金報酬を取得する以前の12ヶ月のうち、残業賃金を除いた月平均賃金を指す。同使用者における勤務期間が12ヶ月を満たさない場合、実際の月数によって月平均賃金
を計算する。
[解説]
 未消化有休の賃金報酬の計算は、正常勤務期間の賃金収入を含めて300%となるため、概算では(正常勤務期間100%+上乗せ分200%)の合計300%ということになる。また、平均賃金には残業手当以外の「昼食手当」「携帯手当」等の各種手当は含まれることとなる。


【第12条】使用者が従業員と労働契約を解除する、または終了させるに際し、従業員の同年度に享受すべき年休を手配できなかった場合、従業員が同年度に既に勤務した期間によって未消化年休日数を換算し、未消化年休の賃金報酬を支給しなければならない。(後略)
[解説]
 年途中で従業員が退職する場合も有休の買取が必要。



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(上海名南企業管理咨詢有限公司 近藤充)


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