短時間勤務の義務化など拡充が検討される育児休業制度

育児・介護休業制度の見直し 昨年の12月25日、労働政策審議会は、雇用均等分科会の報告を受け、育児・介護休業制度の見直しについて厚生労働大臣に対して建議(仕事と家庭の両立支援対策の充実について)を行いました。この建議は、今後の我が国社会の目指すべき姿を実現していくには、子育てや介護をしながら働くことができるよう、仕事と家庭の両立支援対策の充実を進めることが重要であるという基本的考え方に基づき行われていますが、そのポイントは以下のようになっています(画像はクリックして拡大)。



子育て中の短時間勤務
 短時間勤務について、3歳に達するまでの子を養育する労働者に対する事業主による単独の措置義務とすることが適当である。この場合、例えば、勤務時間が1日6時間を上回る分の短縮の措置を含むこととするなど、措置の内容について一定の基準を設けることが適当である。対象者については、勤務時間が1日6時間以下の労働者は法令により対象外とするとともに、当該事業主に引き続き雇用された期間が1年未満の労働者等については、労使協定により、措置の対象から除外できるようにすることが適当である。


子育て中の所定外労働の免除
 所定外労働の免除について、3歳に達するまでの子を養育する労働者の請求により対象となる制度とすることが適当である。対象者については、当該事業主に引き続き雇用された期間が1年未満の労働者等については、労使協定により、措置の対象から除外できるようにすることが適当である。


父親の育児休業取得促進
 父母がともに育児休業を取得する場合に、育児休業取得可能期間を子が1歳2か月に達するまでに延長することが適当である。この場合、父母1人ずつが取得できる休業期間(母親の産後休業を含む。)の上限については、現行と同様1年間とすることが適当である。育児休業、時間外労働の制限等における労使協定による専業主婦(夫)除外規定等の廃止が適当である。


子の看護休暇
 付与日数を小学校就学の始期に達するまでの子が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日とすることが適当である。また、子どもの予防接種及び健康診断の受診についても取得理由として認めることが適当である。


介護のための短期の休暇
 要介護状態にある家族の通院の付き添いなどに対応するため、介護のための短期の休暇制度を設けることが適当である。この場合、付与日数については、要介護状態にある家族が1人であれば年5日、2人以上であれば年10日とすることが適当である。


育児休業の再度取得要件
 長期にわたる子どもの疾病が発覚した場合や、現在受けている保育サービスが受けられなくなった等の事情により新たに保育所等に入所申請を行ったが当面入所できない場合について、育児休業の再度取得を認めることが適当である。


 現行の育児休業制度はある意味で様々な抜け道が残されているという印象を受けていましたが、今回の建議の内容を見ると、短時間勤務の措置義務化や子育て中の所定外労働の免除、労使協定による専業主婦(夫)除外規定等の廃止など、実効性を重視したかなり踏み込んだ内容になっています。短期的には雇用問題への対策に焦点が集まりますが、中長期的には次世代育成支援は重要な政策であり、こうした改正が着々と行われることとなるでしょう。企業への大きな負担となる可能性が高いため、今後の動向には注目しておきたいところです。



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参考リンク
厚生労働省「労働政策審議会建議-仕事と家庭の両立支援対策の充実について」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/12/h1225-8.html


(大津章敬)


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