育児休業等終了後の社会保険の特例的取扱い

 最近は育児休業制度も一般化し、多くの従業員が育児休業を取得した上で職場復帰を果たしています。今回は、この育児休業に関する社会保険料の特例制度(育児休業等終了時の標準報酬月額変更と養育期間の従前報酬月額みなし措置)について取り上げたいと思います。



【質問】
 当社には、先日育児休業から復帰した社員がいます。しばらくは勤務時間を短縮して出勤するため毎月の給与額が休業開始前に比べて減少します。このような場合に社会保険料を見直すことができると聞きましたが、具体的にどのような手続をすればよいのでしょうか。


【回答】
 今回のご質問のように、3歳未満の子の養育のため短時間勤務をすること等で給与が育児休業前と比べ減少することにより利用できる社会保険の手続きは2つあります。いずれも被保険者本人が事業主を経由して申し出ることで行われるものですが、以下ではそれぞれについて手続方法をご説明しましょう。
育児休業等終了時の保険料負担軽減のための手続 
 この手続は「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出することで行います。基本的には随時改定のひとつと考えられますが、以下の3点について通常の随時改定と異なります。
(1)固定的賃金の変動を伴わなくてもよい
(2)支払基礎日数が17日未満の月は除外する
(3)1等級でも下がっていれば該当する


 つまり、育児休業終了日の翌日が含まれる月以後3ヶ月間に受けた報酬について、支払基礎日数が17日未満の月を除いた平均額に基づきその翌月からの新しい標準報酬月額が決められます。この手続きをすることで等級を下げ、保険料負担を軽減することができます。


年金額において従前の高い等級で計算するための手続
 この手続きは、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を提出することで行います。3歳未満の子を養育することにより給与額が低下し、その結果等級が下がると、本来であれば将来の年金額もこの下がった等級を元に計算されることになります。


 等級が下がる場合とは、の場合の他、定時決定時の等級低下、また通常の随時改定が考えられますが、保険料負担を軽減しながらも将来の年金には影響を与えないような措置が設けられています。具体的にはこの申出をすることで、3歳未満の子を養育する期間の標準報酬月額が養育開始前のもの(従前標準報酬月額)を下回る場合に、年金額の計算においてはこの従前標準報酬月額が反映されるのです。


 なお、これは厚生年金保険に関する特例措置であるため、健康保険の給付等に関しては原則の取扱いとなります。


【まとめ】
 今回の手続は、育児休業から職場復帰し、3歳未満の子を養育しながら働くことに対する社会保険上の特例措置です。いずれも本人が事業主を経由して申し出ることで行われる手続きですが、事業所としては職場復帰時の手続きの一つとして捉えて処理を進めていくことが求められるでしょう。


【具体例】
 7月10日に育児休業終了
 休業直前の標準報酬月額  300千円
育児休業等終了後の社会保険の特例的取扱い



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(豊田ゆかり)


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