前年比16.8%の大幅増となった労働基準監督署への解雇申告件数

前年比16.8%の大幅増となった労働基準監督署への解雇申告件数 先日、東京労働局より「平成20年申告事案の概要について」という統計が発表されました。そもそも「申告」とは、労働者から労働基準監督署などに対して、労働基準関係法令に係る違反事実の通告がなされ、同通告を受けた労働基準監督署などによる調査および是正勧告等が行われることを指しますが、平成20年は秋以降、景気が急速に悪化し、「派遣切り」や非正規従業員の雇止めなどが急増したことから、解雇に関する申告件数が前年比16.8%という大幅増となっています(画像はクリックして拡大)。


 まず全体の申告受理件数については、平成20年は前年比で748件(12.9%)増の6,567件となりました。この申告件数は平成15年の6,404件をピークにその後減少し、平成17年は5,324件にまで減少していましたが、それ以降3年連続のプラスとなり、平成20年については平成13年以降で最悪の水準となっています。また申告処理件数の内訳を見ると、解雇の処理件数が大幅増となっています。平成20年の解雇に関する処理件数は前年比べ16.8%増の1,272件となりました。また申告処理件数の大部分を占める賃金不払の件数についても前年比8.4%増の5,392件となっています。


 平成21年については少なくともいまの時点では景気の底入れの目処もつかず、状況は悪化の一歩を辿っています。特に2月以降は本格的な人員削減を行う企業も増加していることから、今年は更なる申告件数の急増が懸念されます。企業の社会的責任として、人員削減はできる限り回避しなければなりませんが、そうは言ってもその状況によっては解雇に踏み切らざるを得ない場合もあるでしょう。そうした際には正確な知識を持って、従業員に十分な説明をするなど、適切なプロセスでもって対応を行うことが強く求められます。



関連blog記事
2008年5月18日「賃金不払事案による行政指導が前年比11%増と急増」
https://roumu.com
/archives/51332058.html

2008年2月27日「労働者から労働基準監督署への内部告発が急増」
https://roumu.com
/archives/51263004.html

2008年1月15日「内部告発の急増で求められる従業員の相談窓口の設置」
https://roumu.com
/archives/51219943.html

2007年5月26日「増加を続ける個別労働紛争解決制度の利用」
https://roumu.com
/archives/50980621.html

2007年5月21日「前年比2桁の伸びを見せる労働相談件数」
https://roumu.com
/archives/50974155.html

2006年12月25日「増加を続ける個別労働紛争と求められる企業の対応」
https://roumu.com
/archives/50832401.html


参考リンク
東京労働局「平成20年申告事案の概要について」
http://www.roudoukyoku.go.jp/news/2008/20090227-shinkoku/20090227-shinkoku.html


(大津章敬)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。