[雇用機会均等法]女性労働者にかかる措置に関する特例(3)

 男女雇用機会均等法の特集の第3回目は、女性労働者に係る措置に関する特例を取り上げましょう。2008年6月25日のブログ記事「女性管理職を有する企業の割合が66.6%に増加」では、女性管理職を有する企業の割合は増加しているものの、その中の役職別女性管理職割合は全体の1割程度となっており、まだまだ低いと言わざるを得ない状況をお伝えしました。


 男女雇用機会均等法における女性労働者に係る措置に関する特例とは、過去の女性労働者に対する取扱い等が原因で雇用の場において男性労働者との間に事実上の格差が生じている状況を改善する目的で、女性のみを対象とした措置や女性を有利に扱う措置については、法違反にならないというものです。これは、例えば女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない役職への昇進に当たって、その昇進のための試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して配置することその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること等があります。なお、ここでいう「相当程度少ない」という基準は、雇用管理区分ごとに女性労働者が4割を下回っていることを指すとされています。


 この特定は、男性労働者に対しては設けられていませんので、普段の会話で男性労働者のみに「昇進試験を受けてみないか」等の発言がなされていないか、振り返っておきたいものです。


[参考条文]
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 第8条 (女性労働者に係る措置に関する特例)
 前三条の規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。


[参考通達]
改正雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について(雇児発第1011002号 平成18年10月11日)
3 女性労働者に係る措置に関する特例(法第8条)
(1)法第8条は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置、すなわち、過去の女性労働者に対する取扱い等が原因で雇用の場において男性労働者との間に事実上の格差が生じている状況を改善する目的で行う女性のみを対象にした措置や女性を有利に取り扱う措置については、法違反とならないことを定めたものであること。 なお、男性労働者については、一般にこのような状況にはないことから、男性労働者に係る特例は設けられていないものであること。
(2)「支障となっている事情」とは、固定的な男女の役割分担意識に根ざすこれまでの企業における制度や慣行が原因となって、雇用の場において男女労働者の間に事実上の格差が生じていることをいうものであること。この格差は最終的には男女労働者数の差となって表れるものであることから、事情の存否については、女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない状況にあるか否かにより判断することが適当であること。
(3)「女性労働者に関して行う措置」とは、女性のみを対象とした措置又は男性と比較して女性を有利に取り扱う措置をいうものであること。
(4)「妨げるものではない」とは、法に違反することとはならない旨を明らかにしたものであり、事業主に対して支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関する措置を講ずることを義務付けるものではないこと。
(5)本条により特例とされる女性労働者に係る措置は、過去の女性労働者に対する取扱い等により女性労働者に現実に男性労働者との格差が生じている状況を改善するために暫定的、一時的に講ずることが許容されるものであり、指針第2の14の(1)イからヘまでの「相当程度少ない」状態にある限りにおいて、認められるものであること。
(6)指針第2の14の(1)は募集・採用、配置、昇進、教育訓練、職種の変更及び雇用形態の変更に関して本条により違法でないとされる措置を具体的に明らかにしたものであること。イからヘまでにおいて「相当程度少ない」とは、我が国における全労働者に占める女性労働者の割合を考慮して、4割を下回っていることをいうものであること。4割を下回っているか否かについては、募集・採用は雇用管理区分ごとに、配置は一の雇用管理区分における職務ごとに、昇進は一の雇用管理区分における役職ごとに、教育訓練は一の雇用管理区分における職務又は役職ごとに、職種の変更は一の雇用管理区分における職種ごとに、雇用形態の変更は一の雇用管理区分における雇用形態ごとに、判断するものであること。
(7)指針第2の14(1)イにおける「その他男性と比較して女性に有利な取扱いをすること」とは、具体的には、例示されている「募集又は採用に係る情報の提供について女性に有利な取扱いをすること」、「採用の基準を満たす者の中から男性より女性を優先して採用すること」のほか、募集又は採用の対象を女性のみとすること、募集又は採用に当たって男性と比較して女性に有利な条件を付すこと等男性と比較して女性に有利な取扱いをすること一般が含まれるものであること。ロ、ハ、ホ及びヘにおいて同じであること。
(8)指針第2の14(1)ニの「職務又は役職に従事するに当たって必要とされる能力を付与する教育訓練」とは、現在従事している業務の遂行のために必要な能力を付与する教育訓練ではなく、将来就く可能性のある職務又は役職に必要な能力を付与する教育訓練であり、例えば、女性管理職が少ない場合において、管理職に就くために必要とされる能力を付与する教育訓練をいうものであること。
(9) 指針第2の14(1)ニの「その他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること」には、例えば、女性労働者に対する教育訓練の期間を男性労働者よりも長くすること等が含まれること。



関連blog記事
2009年7月20日「[雇用機会均等法]男女雇用機会均等法で禁止されている間接差別(2)」
https://roumu.com
/archives/51591158.html

2009年7月9日「[雇用機会均等法]男女雇用機会均等法で禁止されている性別による直接差別(1)」
https://roumu.com
/archives/51584611.html

2008年9月24日「職階の差がもたらす男女間の賃金格差」
https://roumu.com
/archives/51417598.html

2007年8月22日「改正男女雇用機会均等法対策!セクハラ認識度チェックシートダウンロード開
始!」
https://roumu.com
/archives/51050348.html

2008年6月25日「女性管理職を有する企業の割合が66.6%に増加」
https://roumu.com
/archives/51357629.html

2007年2月22日「平成19年4月に行われる労働関連法改正のポイント~健康保険法・雇均法の改正
(2/2)」
https://roumu.com
/archives/50895210.html

2006年7月23日「平成19年4月に施行される改正男女雇用機会均等法のポイント」
https://roumu.com
/archives/50656676.html


参考リンク
厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/danjyokoyou.html


(宮武貴美)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。