技能実習生の労働条件に関して注意が必要な事項

 技能実習生の連載の第3回目は、技能実習生を雇用する際の労働条件等の確保について取り上げておきましょう。技能実習生については、使用者がその賃金を強制的に貯金させたり、実質的には労働時間であるにも関わらず「内職」という名の下に低額な賃金を払うといった問題が発生していました。


 こうした状況を背景として、今回の改正に際し改めて出された通達の中から技能実習生の労働条件に関する内容を抜粋し、確認しておきましょう(基発0208第2号 平成22年2月8日「技能実習生の労働条件の確保について」より抜粋)。



1.中間搾取の禁止
 監理団体の代表者、その役員等が、実習実施機関に対し、監理団体名義の銀行口座や監理団体が管理する技能実習生名義の銀行口座に賃金を振り込ませ、これを引き出す等して当該賃金を不当に利得するようなことは、業として他人の就業に介入して利益を得るものであって、労働基準法第6条が禁止する中間搾取に該当すること。


2.強制貯金の禁止
 使用者は、技能実習生に対し、労働契約に付随して貯蓄金を管理する契約をしてはならないこと。ここでいう貯蓄金の管理には、使用者が受け入れた技能実習生の預金を技能実習生個人ごとの名義で金融機関に預け入れ、その通帳、印鑑を使用者が保管することが含まれること。なお、法務省が策定した「技能実習生の入国・在留管理に関する指針(平成21年12月)」(以下「法務省指針」という。)においては、技能実習生からの要望があったとしても通帳等を預かるべきではないとされていること。


3.賃金
(1)賃金の控除等
 賃金の控除については、法令に別段の定めがある場合及び事理明白なものについて法定の労使協定を締結した場合にのみ認められるものであること。すなわち、実習実施機関が宿泊施設や食事を提供する場合に、その費用を労使協定に基づき控除することは認められるが、労使協定を締結していたとしても、「管理費」の名目でその具体的な使途が明らかにされない等、使途が不明であるものや、一部の使途は明らかであるが控除額の合計が実際に必要な費用に比して均衡を欠くもの等は事理明白といえず、これを控除した場合には労働基準法第24条違反となること。


 なお、法務省令及び法務省指針において、技能実習終了時の帰国旅費や、監理団体が講習の実施に要する会場費や監査の実施に要する交通費等の監理に要する費用は、実習実施機関又は監理団体が負担することとされており、これらを技能実習生に直接又は間接に負担させてはならないものとされていること。


(2)最低賃金
 技能実習制度は、現在の技術又は技能のレベルを向上させることを目的として創設された制度であり、技能実習生は当該業務に一定の経験を有しているものであるため、技能実習生は、特定(産業別)最低賃金の適用が除外されている「雇入れ後一定期間未満の者であって、技能習得中のもの」に該当しないものであること。


4.労働時間
(1)時間外・休日労働
 時間外・休日労働は時間外・休日労働協定届の範囲を超えて行わせてはならず、また、これらに対しては法定の率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないこと。時間外労働を「内職」と称して行わせ、これに対する報酬を非常に低額なものとし労働基準法第37条に定める計算による金額を下回る場合には、同法違反となること。なお、入管法上、「内職」を技能実習生に行わせることは認められていないこと。


5.健康診断の実施等
 技能実習生についても、労働安全衛生法第66条等に基づき、雇入時の健康診断、定期健康診断、特殊健康診断を行うとともに、その結果必要と認められるときは事後措置を実施する必要があること。


6.労働者災害補償保険等
 実習実施機関が暫定任意適用事業に該当する場合を除き、技能実習生に対しては、労働者災害補償保険が強制適用されることはいうまでもないが、法務省令において、労働者災害補償保険の暫定任意適用事業であっても、技能実習生を受け入れる場合には、労働者災害補償保険に係る保険関係の成立又はこれに類する措置を講じる必要があるとされていること。雇用保険についても、技能実習生に対しては、通常の労働者と同様に適用されること。


 これらより技能実習生については、一般の労働者と同様に取り扱うことが必要なのはもちろん、例え本人の希望があったとしても、労働関係法令に抵触することが疑われないように、十分に配慮が必要だということがわかります。



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参考リンク
入国管理局「新しい研修・技能実習制度について」
http://www.moj.go.jp/ONLINE/IMMIGRATION/ZAIRYU_NINTEI/zairyu_nintei10_0.html


(宮武貴美)

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