[ワンポイント講座]労働災害により療養している従業員の解雇・退職の取扱い

 近年、労働災害の件数は減少傾向にありますが、その一方で過重労働に基づく過労死・精神障害の労災認定件数が増加しています。そのため、企業としては時間管理を徹底したり、セクハラ・パワハラに関する研修を行うなどの対策を講じることが求められています。労働災害においては療養期間が長期化することも少なくなく、会社としてどのように対応したらよいのか困ることが少なくありません。そこで、今回のワンポイント講座では、労働災害により療養している従業員の解雇・退職の取扱いについて、会社が押えておかなければならないポイントを取り上げましょう。


 そもそも解雇とは、会社から一方的に労働契約を解約することを指しています。従業員を解雇する権利は企業にありますが、労働基準法においては解雇制限と呼ばれる定めが設けられており、以下の場合においては従業員を解雇してはならないとされています。
業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間およびその後30日間
産前産後の女性が労働基準法第65条の規定によって休業する期間およびその後30日間


 それでは今回のテーマである労働災害により長期にわたって療養している従業員の解雇制限について考えてみましょう。労働基準法第19条の中で、労働基準法第81条の規定により打切補償を支払う場合には解雇制限の適用を受けないとされています。具体的には、療養開始後3年を経過しても負傷または疾病が治らない場合に、会社が平均賃金の1200日分の打切補償を支払うことで、解雇とすることを認めています(※天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となり、所轄労働基準監督署長の認定を受けた場合も解雇を認めています)。


 また療養が長期化した場合に定年となることがありますが、この場合、定年退職として扱うことができるのかという論点があります。定年退職とは、その年齢に達すると当然に退職になるとした労使の合意に基づく労働契約の解消事由であるため、定年退職と解雇とは法的性格が異なり、定年退職については解雇制限の適用は受けません。そのため、療養中であったとしても、定年となればその日に労働契約を解消したとしても問題はないという結論になります。なお、法律上の解雇制限については、労働基準法に定めるものだけでなく、育児介護休業法や男女雇用機会均等法、労働組合法によるものがあるため、会社としてはどのような場合に解雇してはならないのか理解しておくことが求められます。



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(福間みゆき)


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