雇用保険事業年報にみる高年齢雇用継続給付の状況と今後

雇用保険事業年報にみる高年齢雇用継続給付の状況と今後 少し前になりますが、厚生労働省から「平成21年度 雇用保険事業年報」が公開されました。この年報は、雇用保険の適用面や給付面について、当該年度の状況をまとめたものです。今日はこの中から雇用継続給付、とりわけ高年齢雇用継続給付の給付額について取り上げてみましょう。

 高年齢雇用継続給付制度は、高齢化の進む中で、働く意欲と能力のある高年齢者について、就業意欲を維持・喚起し、60歳から65歳までの雇用継続を援助・促進することを目的として平成7年4月1日に施行されました。この制度により、60歳以降の継続雇用が促進されたことは間違いありません。そして、平成18年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、60歳以降の雇用確保義務が企業に課せられて以来、特に制度利用者が増加しています(画像はクリックして拡大)。このことから、継続雇用が法制化された現在では、高年齢雇用継続給付制度の存在意義が薄れているという指摘もなされています。

 そのため、平成19年1月9日に厚生労働省から発表された「労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会報告書」では、「高年齢雇用継続給付は、原則として平成24年度までの措置とし、激変を避ける観点から、その後段階的に廃止すべきもの」とされており、今年度に開催されている労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会でも改めて今後の課題として平成25年以降のあり方の検討を示唆しています。60歳以降の労働条件を設定する際に、この制度の利用を前提としている企業も少なくありません。今後の検討内容については注目しておきたいところです。


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参考リンク
厚生労働省「雇用保険事業年報について」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koyouhoken02/index.html
厚生労働省「第63回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会資料」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000qsz2.html

(宮武貴美)

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