雇用保険の特定理由離職者とは何ですか?

 服部印刷での離職者の雇用保険の受給に関する説明も大詰め。今回は「特定理由離職者」について説明することとなっていた。



福島照美福島さん:
 おはようございます、大熊先生。前回までの内容、ばっちり復習してきましたよ。で、今日は特定理由離職者でしたよね。
宮田部長:
 福島さんは相変わらず勉強熱心ですね。すごいなぁ。
大熊社労士:
 宮田部長も前回までの内容は問題ありませんか?
宮田部長:
 お話を伺いながら復習していくことにしますよ(苦笑)。
大熊社労士:
 それでは、始めましょう。前回、「特定受給資格者」について説明しました。倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた人たちのことでしたね。もうひとつの「特定理由離職者」とは、特定受給資格者以外の人で、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他のやむを得ない理由により離職した人のこと等を言います。
宮田部長:
 なるほど、倒産や解雇までの非常事態ではないけれども一定の配慮が必要と思われる人たちですね。
大熊社労士大熊社労士:
 はい、まさにそのとおりです。ですので、基本手当の受給資格において要件が緩和されています。具体的には、自己都合での離職等のいわゆる通常の離職者が基本手当の受給資格を得るためには、離職日以前に2年間に被保険者期間が12ヶ月以上必要になるのですが、特定理由離職者についてはこれが離職日以前に1年間に被保険者期間が6ヶ月以上あれば要件を満たすことになっています。
福島さん:
 1年間の有期雇用の人が退職したというような場合には、通常、失業手当をもらえないけれども特定理由離職者に該当した場合には、失業手当がもらえるということですね。
大熊社労士:
 はい、そのとおりです。今日は宮田部長も福島さんもいつも以上に冴えていますね。さて、その特定理由離職者の要件についてもう少し詳しく触れておくと、大きく2つに分かれています。1つ目は先ほどから説明していますが、「期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る)」です。
福島さん:
 労働者が更新を契約の更新を希望しなかった場合には特定理由離職者には該当しないということですよね。
大熊社労士:
 はい、そうですね。2つ目は「正当な理由のある自己都合により離職した者」です。
宮田部長:
 正当な理由のある自己都合?
大熊社労士:
 わかりづらいですよね。例えば体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者、配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者等があります。こちらもこのブログに載せたパンフレットにある程度具体的な理由が記載されていますよ。いずれにしても最終的な判断はハローワークで行いますので、必要に応じ、資料をハローワークに提出することとなりますね。
福島さん:
 こちらも前回の特定受給資格者のときと同様に本人の主張等があれば、資料を提出して協力する必要がありますね。
大熊社労士:
 そうですね。離職票の離職理由により確認することはもちろん、労使で意見が食い違うときには、両者の主張を把握し、その主張を確認することのできる資料により事実確認を行います。
福島さん:
 被保険者期間が短いような人にはと特定理由離職者に該当するかどうかで、失業手当がもらえるかどうかが変わるので大きな問題ですよね。
大熊社労士:
 そうですね、それに加え、現在は暫定的に基本手当の所定給付日数が手厚くなっているので、なおさら大きな問題といえますよ。
宮田部長:
 さらに離職者にメリットがあるのですか!?
大熊社労士:
 あくまでも暫定的な措置ですけどね。対象となるのは、受給資格に係る離職日が平成21年3月31日から平成24年3月31日までの間にある人です。この人たちについては、特定理由離職者ですが所定給付日数については特定受給資格者と同様となります。
宮田部長:
 なるほど。
大熊社労士:
 その他にもちょこちょこと例外があるので、具体的に該当しそうな人が出てきたらお話することにしましょう。
福島さん:
 はい、おそらく、本当に微妙な理由の差で該当したりしなかったりと変わるのだろうなと想像します。よろしくお願いします。
宮田部長宮田部長:
 確かにそうだね。これまで大熊先生の話を聞いてきて、このように基本手当の日数が変わってしまうと、「離職理由を歪めてしまおう」と思うよ
うな事業主も出てくるのではないかと心配になってしまいます。
大熊社労士:
 確かに、そのような懸念はありますね。そのように、偽りその他不正の行為で失業等給付を受けたり、又は受けようとした場合には、以後失業等給付を受けることができなくなり、さらに不正に受給した金額の還付・納付(3倍返し)を命じるとしています。もちろん、詐欺罪等で処罰されることもありえます。
福島さん:
 きちんと申請をしている人もいることを考えると当然のことですよね。
大熊社労士:
 そうですね。当然ながら、離職理由について虚偽の記載を行った場合には、偽りその他不正の行為をしたとして事業主にも先ほどのような処置が取られるので、事実に基づき、手続きを行わなければなりませんね。


>>>to be continued


 [大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。5回に亘り、雇用保険の受給について取り上げてきましたがいかがでしたか?雇用保険法は毎年のように改正され、その度に広範囲に亘って細かな点が変更されています。常に最新情報を収集するように総務担当者は心がけておく必要があります。



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(宮武貴美)


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