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「人事評価制度構築」実践講座 福岡コース受付開始[8月8日-9日]

福岡コース決定! 先日より労務ドットコムで受付をしております「人事評価制度構築」実践講座ですが、多くのご要望にお応えして、福岡での開催が決定しました。自社主催としては初の九州でのセミナー開催です。本日より受付を開始しておりますので、是非ご参加ください。

「人事評価制度構築」実践講座
  パフォーマンスとメンテナンスの両面から「人事評価」を再構築する
https://www.roumu.com/seminar/seminar_evaluation.html


日 時 平成18年8月8日(火)および 9日(水)
 ※8日(火)が午後1時から午後5時、9日(水)が午前9時から午後1時
講 師 株式会社名南経営 人事労務統括 小山邦彦(社会保険労務士)
会 場 アクロス福岡 607会議室(福岡・天神)
受講料 52,500円(税込)
 ※懇親会参加の場合は別途5,000円の実費が必要となります。
対 象 社会保険労務士、コンサルタントの皆様
    ※一般企業の皆様もご参加頂けますが、基本的に専門家向けの内容になりますので、ご了承下さい。
定 員 30名
■詳細およびお申し込みは以下よりお願いします。
https://www.roumu.com/seminar/seminar_evaluation.html


 なお6月2日/3日の大阪コースおよび7月28日/29日の東京コースはいずれも満席となっております。


(大津章敬)


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始業時刻10分前までの出勤を義務付けできるか?




 当社では、始業時刻に業務ができるよう、その10分前までには出社するよう、従来から徹底していました。ところが、最近始業時刻ギリギリに出社する者が出てきたため注意したところ、始業に遅れていない以上問題ないはずと反論されました。法律上はどのような解釈となりますか。


 通常は、始業時刻をもって労働時間の始まりと理解してさほどの問題はないのですが、ご質問のように、始業時刻とは別に出社時刻が定められている場合、労働基準法上の労働時間はどの時点からかという問題が生じます。


 労働基準法上の労働時間とは、使用者の指揮命令下に労働力を提供している時間を意味します。また、いわゆる実労働時間ですから、始業時刻前でも労働の実態があれば、その時点から労働時間として法の規制の対象となります。


 したがって、ご質問の場合、始業10分前の実態が問題となります。


 ご質問からはその内容がわかりませんが、その間に具体的な業務やミィーティング等が予定されておらず、単に始業時刻から業務が開始できるよう余裕をもって出社するようにという意味にすぎないものであれば、労働基準法上の労働時間とはいえないでしょう。


 逆に、出社時刻に遅れた者に対して遅刻としての賃金カットやその他の不利益処分が予定されていたり、労働というに足りる行動(例えば全員参加が強制される業務打合せ等)が予定されている場合には、労働基準法上の労働時間とされる可能性が強くなります。


 基本的に、会社の始業時刻の定めは労働時間の概念と一致していることが望ましいと思われます。したがって、仮に10分前出社を義務付け徹底したいのであれば、その時間を労働時間として位置付け、賃金の対象とし、時間計算の対象とすることが適当でしょう。


 また、労働時間として取り扱わないならば、10分前出社はあくまで社員の心構えとして要請するに止め、義務付けや強制は避けるべきでしょう。


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まずは「ありがとう」から始めよう

 先日、ある医療機関のミーティングに参加しました。その医療機関はいま一時的な人員不足の問題を抱えており、勤務している従業員からは以下のような発言がありました。


「私たちの仕事はサービス業ですから、患者さんともっとお話をして、その気持ちを和らげてあげたい。不安を少しでも取り除くことで、患者さんのできる笑顔をたくさん作りだしてあげたい。しかし現状は人員不足から待ち時間が長くなっており、患者様から苦情が出ている状況。患者さんとお話をする余裕はなく、イライラも募り、私たち自身が笑顔で働くことができません!」


 この話を聞いて、従業員のみなさんの意欲の高さに感服したのですが、同時にすぐに人員を確保できない状況で、そのように彼女たちのモティベーションを維持しようかと考えました。もちろん各従業員が業務の進め方を改善することで時間を創り出すことの必要性は言うまでもありませんが、私は院長先生に対して「ありがとうという気持ちを率直に従業員に伝えて下さい」とお願いしました。すると従業員は時間がない中でも、これまでどおり笑顔で落ち着いて業務ができるようになり、サービスレベルをほとんど落とすことなく診療を継続することができました。


 人の仕事に対する動機には様々なタイプがありますが、「ありがとう」という言葉が頑張る動機になっている、感謝欲求の高い人が少なくありません。お客様などの仕事の相手方からそのフィードバックを受けることがもっとも効果的ですが、実際の仕事の現場ではなかなかそのような場面は見られませんし、そもそもそのようなフィードバックを直接受ける環境にない場合も多いでしょう。その場合は組織の中の誰かが「ありがとう」という感謝の気持ちを伝えてやる必要がありますが、これは上司が行うことがもっとも良いでしょう。上司と部下が信頼関係を築けていればいるほど効果はてきめんで、以前のブログにも書きましたが、上司のために頑張ると思わせれば、最高の環境ができるでしょう。


 部下に「ありがとう」と声掛けしたことがなければ、是非、一度試してみてください。そのようなフィードバックを受ければ、普通は誰であっても嬉しい気持ちになります。人によっては、「ありがとうと言われるようなことをしていない」と困惑することはあるかも知れませんが、不快に思うことはありません。「ありがとう」をもっと活用し、労使双方が「ありがとう」と言い合えるような信頼関係を築いていきたいものです。


(志治英樹)


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遅刻した者が残業した場合の割増賃金

 最近、遅刻の頻度が高い従業員がおります。何度注意をしても遅刻の回数は減らず、少しも改善される様子がありません。そのため、今後は遅刻をした時間分だけ残業をしてもらうことにしようと思っております。この場合、当社としては割増賃金を支払わなければならないのでしょうか?ちなみに当社の就業時間は、午前8時から午後17時まで(休憩1時間)です。


 遅刻の事実について、一向に改善の余地のない従業員に対して制裁を行いたいということのようです。結論から言うと、その方の1日の実労働時間がトータルして8時間(法定)労働時間を超えなければ、割増賃金の支払い義務はありません。


 今回の場合、遅刻をした時間(不就労時間)分について、そのまま終業時刻の繰り下げをしているだけということになり、結果として総実就労時間に変更はないことになります。よってこの時間帯に対しては、貴社の規定に「終業時間(午後17時)を超えた時間に対して割増賃金を支払う」等といった特別な規程がない限り、割増賃金を支払う必要はありません。


 なお、もし遅刻をした時間以上の残業を命ずるということになれば、割増賃金はもちろん36協定の提出等が必要となってくるため注意が必要です。とはいえこの場合、制裁としての残業を命ずることになり、もともとの時間外労働の必要性の趣旨に反することになります。この場合には法の範囲内の減給等、制裁の趣旨に基づく措置を講ずる必要性があるでしょう。


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健康診断実施後の措置

 ここ数回、健康診断をテーマとして取り上げていますが、健康診断の受診後に求められる措置について問い合わせがありましたので、今日はこのテーマを取り上げてみましょう。


■質問
 当社では毎年1回、定期健康診断を実施しています。一般的な健康診断実施機関で受診をしており、結果についてはその機関より送付されてきますので、個人に結果を渡すのみで特別なことはしていません。これは問題なのでしょうか?


■回答
【結論】
 事業主は健康診断の結果について医師等から意見を聴き、就業場所の変更等の適切な対処をしなければなりません。個人結果の通知のみでは、会社として適切な措置を取っているとはいえません。


【解説】
 労働安全衛生法では、健康診断の実施を義務付けており(第66条)、その結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について医師等の意見を聴くことを義務付けています(第66条の4)。その上で、この意見に基づき、労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じなければならないとしています(第66条の5)。


 今回のケースでは、恐らく健康診断実施機関からの結果に医師の所見がついているものと思われます。この所見を元に、異常の所見がある従業員と面談をし、状況を確認の上、ひとりひとりにあわせた具体的な対処をする必要があります。具体的には、時間外労働の制限、業務負荷軽減のための一時的な配置転換という業務に直結した内容から、人間ドックの受診斡旋等も考えられるでしょう。具体的には「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」が公表されていますので、指針を参考に対策を行う必要があるでしょう。


■まとめ
 いわゆる過労死の問題により、安全配慮義務を如何に履行するかがクローズアップされています。「定期健康診断を実施すれば大丈夫」という考えでは十分な安全配慮義務の履行を行っているとは言いがたく、従業員に万が一のことが起こった場合、事業主への責任追及は免れないでしょう。特に中小企業では、時間外の削減は困難であったり、配置転換といっても変えるところがないという実情も想定されます。しかし、有所見状態を放置することで、更に症状が悪化することは容易に想像されます。周りへの一時的な負荷があったとしても早めの措置は必要不可欠と言えるでしょう。



参照条文
労働安全衛生法第66条第1項(健康診断)
 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。


労働安全衛生法第66条の4(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
 事業者は、第66条第1項から第4項まで若しくは第5項ただし書又は第66条の2の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。


労働安全衛生法第66条の5(健康診断実施後の措置)
 事業者は、前条の規定による医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備その他の適切な措置を講じなければならない。
2 厚生労働大臣は、前項の規定により事業者が講ずべき指定の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
3 厚生労働大臣は、前項の指針を公表した場合において必要があると認めるときは、事業者又はその団体に対し、当該指針に関し必要な指導等を行うことができる。



参考リンク
健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針~静岡労働局
http://www.shizuokarodokyoku.go.jp/kijun/anzen/eisei06.html


(宮武貴美)


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残業は命令できるのか?




 当社は和菓子製造・販売業ですが、業種柄、毎年お歳暮やお中元の時期は多忙のため、工場従業員や店舗従事者とも、長時間労働を余儀なくされています。ところがこの度、ある従業員に、「子供を迎えに行かなければならないので、今日は残業をすることができない」と申し出を受けました。いままでに残業拒否を申し出た従業員はいなかったため、対応の仕方がわかりません。会社として、そもそも残業命令を行っても良いのでしょうか。なお、36協定届は法定通り労働基準監督署へ届け出ています。


 貴社は36協定(時間外・休日労働に関する協定届)を締結し、労働基準監督署へ届け出ていますので、刑事上の処罰は免責されます。しかし、これのみでは足らず、従業員に残業を命ずるにはその旨を就業規則等に定めなければなりません。


 具体的には、就業規則等に「業務上やむを得ない事由のある場合には、時間外勤務を命ずることがある」といった定めをしておきます。このような「合理的な理由があるときは時間外労働をさせることがある」との定めがないと、会社から残業を命令する権利、従業員がこれに応ずる義務といった民事上の根拠は存在しないことになります。


 以上から、就業規則等に記載があれば、会社として残業を命令することは可能です。ただし、規定の仕方が上記のように「業務上やむを得ない事由のある場合には…」といった一般的なものである場合、従業員側に相当な理由がある場合にはこれを拒否することもできるものであると解される場合があります。そのため今回のように、子供の送り迎えといった事情については、双方納得のいくように、個別の話し合いによる対応が望まれます。
 
 なお、この場合の「子供」が小学校入学前の子である場合、別途育児・介護休業法による勤務時間短縮等の措置に係る義務(第23条第1項、年齢により努力義務)が生じるため、こちらもご注意頂きたいと思います。



参考リンク
労務ドットコムブログ「育児休業等に関し事業主が講ずべき措置(その1)」
https://roumu.com
/archives/50264955.html


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兼業と労働時間管理、割増賃金の支払義務

 本日は、兼業を認めた場合の労働時間のカウント方法、割増賃金の支払義務について、ご紹介します。


 労働基準法第38条は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定しています。つまり、事業主を異にする事業場において労働する場合も時間を通算し、法定労働時間を超過するのであれば割増賃金の支払義務が生じることになります。


具体的には以下のようになります。
 前提)A会社・B会社ともその労働者が兼業している事を知っており、
    またB会社がA会社の後で労働契約を結んでいる。


A会社(4時間)の後、B会社(5時間)で勤務する場合
  →B会社で1時間分の割増賃金支払義務が発生


A会社(5時間)の後、B会社(4時間)で勤務する場合
  →B会社で1時間分の割増賃金支払義務が発生


A会社(4時間)の後、B会社(4時間)で勤務する契約であるが、
  たまたまA会社で5時間勤務してしまった場合
  →A会社で1時間分の割増賃金支払義務が発生


A会社で常勤勤務(8時間)の後、B会社でアルバイトをする場合
  →B会社での労働時間すべてが割増賃金支払義務発生
   ※例えば愛知県の最低賃金は688円/時ですので、B会社では最低でも
    その25%割増の860円以上の時給で雇用契約を結ぶ必要があるということになります。


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パートタイマーにも定期健康診断を受診させる必要があるか

 最近、雇用形態の多様化という言葉をよく耳にするようになりました。パートタイマーを初めとしたいわゆる非正規社員の増加は著しいものがあります。そこで今回は、パートタイマーにも定期健康診断を受診させる必要があるか(定期健康診断の受診労働者の範囲)について取り上げてみましょう。
■質問
 当社では社員は5名、パートタイマー・アルバイト10名で業務を行っています。社員には毎年1回の健康診断を実施していますが、パートタイマー・アルバイトについてはこれまで実施していません。先日、パートタイマーの方から「私も健康診断を受けたい」という申し出がありました。パートタイマーの方に対しても実施する必要があるのですか?


■回答
【結論】
 一定の基準満たすパートタイマーについては健康診断を実施する必要があります。


【解説】
 まず定期健康診断は、労働安全衛生法第66条および労働安全衛生規則第44条でその実施に関する事項が定められています。ここでは、「常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し」て行わなければならないと規定されていますが、具体的な労働者の範囲については、法律に明確な定めがあるわけではありません。その上で「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について」(平成5年12月1日基発第663号)という通達が、実施すべき労働者の範囲を以下のように明確に定めています。



 1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の労働時間の4分の3以上であり、かつ、雇用期間がのいづれかに該当する労働者については健康診断を実施する必要があります。
雇用期間の定めのない者
雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年(※)以上使用される予定の者
雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年(※)以上引き続き使用されている者
  ※特定業務従事者は6ヵ月


 なお、1週間の所定労働時間が2分の1以上の労働者については実施することが望ましいとされています。


 従って、御社でも上記の範囲に該当するパートタイマー・アルバイトについては定期健康診断を実施する必要があります。この範囲は社会保険に加入すべき範囲と似通っており、実施対象者選定の際には参考にできるかと思います。


■まとめ
 定期健康診断の費用については、事業主負担とされており、受診者が増加することで費用の負担も重くならざるを得ません。しかしながら、「健康であるからこそ業務の遂行ができるのだ」という考えのもと、対象者全員の健康診断実施に取り組む必要があるといえるでしょう。





参考条文
労働安全衛生法 第66条 第1項
 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。


労働安全衛生規則 第44条 第1項
 事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査及び喀痰検査
5 血圧の測定
6 貧血検査
7 肝機能検査
8 血中脂質検査
9 血糖検査
10 尿検査
11 心電図検査





 参考リンク
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について(平成15年10月1日改正基発第663号)[pdf]~厚生労働省[pdf]
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/151010-a.pdf
短時間労働者についても健康診断が必要です。~愛知労働局
http://www.aichi-rodo.go.jp/topics/docs/03-08-28-2.html


(宮武貴美)


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[福利厚生]保存有給休暇制度の活用

 春闘における労使交渉も本格化している時期かと思いますが、近年の春闘においては賃上げの交渉に止まらず、より安心して働くことができる労働環境の構築を目指し、様々な要求が出されることが多くなっています。そんな中で頻繁に耳にするのが「保存有給休暇制度」の導入です。本日はこの制度の概要と運用について簡単に解説したいと思います。


 保存有給休暇制度とは、本来であれば消滅してしまう年次有給休暇(以下「年休」)を一定の日数まで保存し、私傷病などによる長期欠勤の際に取得できるようにする制度のことをいいます。


 労働基準法では、入社し6ヶ月経過すると10日の年休が付与され、その後、勤続年数が1年増すごとにそれに対応した日数が毎年、付与されることになっています。また当年度中に取得できなかった場合には翌年度に限り、持ち越すことができることになっています。つまり入社して1年半を経過した時点で、前年度に1日も年休を取得していない場合には前年度分10日+今年度分11日の合計21日の休暇が与えられることになります。


 一方、年休は付与から2年を経過するとその取得ができなくなり、権利が消滅してしまうため、もし仮に同じ社員が翌年も1日の年休も取得しなかった場合には、初年度の10日の権利は消滅し、前年度分11日+当年度分12日の合計23日の年休が取得できることになるのです。保存有給休暇制度は、この消滅してしまう年休を積み立てておき、私傷病などによる長期欠勤の際など、特定の事由による休業の場合に限り、取得することを認めるという制度です。


 具体的な運用においては、1)保存有給休暇としてストックできる年休の上限日数、2)保存有給休暇を取得できる事由、3)年次有給休暇との兼ね合い(保存有給休暇は、法定の年休をすべて取得した後に初めて使用できるなど)、4)出勤率計算などにおける保存有給休暇取得期間の取扱い、5)保存有給休暇取得期間と休職の期間との関係などを定めることになります。


 社員にとっては、病気や怪我で長期欠勤しなければならない状況になっても一定の範囲で有給休暇が認められるのは、非常に大きな安心感に繋がります。現実的にはそれほど頻繁に適用者が出るような制度でもありませんので、福利厚生制度の見直しを行われる場合には、検討されてみてはいかがでしょうか?


(大津章敬)


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「労働時間」とは?

 昨年11月から3ヶ月の間、改正育児・介護休業法に関する要点や、実務上の疑問点等をご紹介してきました。今回から3ヶ月間は、昨今話題の「労働時間管理」について、今までと同様に週末を利用して、基礎的な内容をご紹介いたします。


 初回となる本日は、労働基準法に定められている労働時間に関して解説をします。


 労働基準法(以下、「労基法」)では、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」(第32条第1項)および、「1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」(同第2項)として労働時間の限度について定めています。また、同法第89条では「始業及び就業の時刻」を就業規則の絶対的必要記載事項であると定めています。
 労基法では、休憩時間を除く実働時間が「労働時間」だと定義しています。また判例によれば、労働時間とは、「労働者が使用者の指揮監督下に置かれている時間を意味し、労働者が労働契約の基本的義務である労務提供義務を履行する場合はもとより、これと不可分一体のものとしてそれ自体義務付けられ、かつ事実上使用者の拘束下で行われる活動に要する時間も含まれる」とされています。
作業前の準備や作業後の後始末、休憩時間中の電話当番、研修など本来業務の周辺にある活動が労働時間に該当するか否か、という問題を考えてみると、「使用者の指揮監督下にある」時間かどうかがポイントになります。つまり、業務との関連性と使用者の命令に基づくものかという2つの要素で判断され、この2つの要件を満たせばそれは労働時間と判断されます。
そもそも始業・終業の時刻は、労使間の取り決めにより決定します。では、始業時刻までに会社に到着していればいいのでしょうか。それとも仕事に着手できる状態にある必要があるのでしょうか。社会人としては始業時刻までに仕事に取り掛かる準備ができている状態にあることが当然要求されることだと思います。確かに就業規則の服務規程に項目を設けて労働者にそのような姿勢を求めているケースもありますが、むしろ組織風土の問題として捉え、積極的に業務に取り組む姿勢を持てる職場にすることが重要ではないでしょうか。


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