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女性労働力の積極的活用~ポジティブ・アクションへの取り組み~

 このblogでは、これまでにも女性労働力に着目し、これに関する法改正や国の政策の動向などについて紹介してきました。今回は、この労働力の積極的活用を考えるポジティブ・アクションについて紹介したいと思います。


 平成11年4月に男女雇用機会均等法が「男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的」として施行されました。しかしながら、それ以降も男女差別の完全な撤廃が進められることはありませんでした。このため、厚生労働省は平成14年4月に「ポジティブ・アクションのための提言~意欲と能力のある女性が活躍できる職場づくり~」を取りまとめ、女性の能力発揮を促進するための提言として発表しました。


 ポジティブ・アクションの定義は、「固定的な性別による役割分担意識や過去の経緯から、男女労働者のあいだに事実上生じている差があるとき、それを解消しようと、企業が行う自主的かつ積極的な取組」であるとされています。もう少し分かりやすく言えば、単に女性だからという理由だけで女性を優遇するためのものではなく、これまでの慣行や固定的な性別の役割分担意識などが原因で、女性は男性よりも能力を発揮しにくい環境に置かれている場合に、こうした状況を是正するためのあらゆる取組のことを言います。この提言書には経営者、プロジェクト・チーム等推進担当者、人事担当者、職場上司、働く女性、働く男性のそれぞれの立場での取り組みの具体例が書かれていますので、もしご関心をお持ちであれば是非ご参照ください。


 今後、深刻化する労働力人口の減少を考えた場合、更なる女性労働力の活用が不可欠となってきます。厚生労働省ではポジティブ・アクションのためのワークシートを作成し、同ホームページで配布を行っています。こうしたツールも活用し、現状分析と問題点の発見を行われてはいかがでしょうか。


(宮武貴美)

大企業を中心に導入が進むキャッシュバランスプラン

 先日、厚生年金基金連合会より「確定給付企業年金アンケート調査」:pdfの集計結果が発表されました。

 

 このアンケートは今年の5月から6月にかけて、1,142件を対象に行われたもので、回答数は基金型が442、規約型が185となっています。確定給付企業年金の基本的な制度設計や資産運用、会計基準に関する取り扱いなどに関する内容についてのアンケート集計が行われているのですが、その中で目を引いたのはキャッシュバランスプランの導入状況に関する項目です。

 

 「老齢給付金について、キャッシュバランスを導入していますか?」という問いに対して、以下のような回答がなされていました。
[全体]
 導入している       155件(24.7%)
 類似制度を導入している 87件(13.9%)
 導入していない      378件(60.3%)
[基金型]
 導入している       104件(23.5%)
 類似制度を導入している 66件(14.9%)
 導入していない      268件(60.6%)
[規約型]
 導入している        51件(27.6%)
 類似制度を導入している 21件(11.4%)
 導入していない      110件(59.5%)

 

 この結果をどのように見るかというのは判断が分かれるところかも知れませんが、私個人としては、CBPもしくは類似制度の導入が確定給付年金制度全体の約40%にも達しているというのには少し驚きました。先日、ある国内大手の生命保険会社の法人部長さんとの打合せの中で、CBPは(その保険会社では)被保険者300人以上でないと受託できないという話をお聞きしましたが、大企業を中心にこの制度の導入が着々と進められているようです。

 

※キャッシュバランスプラン
 キャッシュバランスプランは、2002年4月に施行された確定給付企業年金法によって新たに認められた企業年金制度です。確定拠出年金制度同様、企業が一定の金額を社員のために拠出(※1)し、この原資に対し、企業が毎年、一定の利息(再評価率※2)を付与して運用、最終的に積み立てられた金額が支給額となるという制度になります。従来の適格退職年金制度など、確定給付型の企業年金制度と確定拠出年金制度の両方の特徴を持っているため、ハイブリッド(混合)型とも呼ばれることもあります。この制度の最大の特徴は、運用の利率である再評価率を従来の適格退職年金制度のように固定せず、国債の応募者利回り(外部金利)と連動させることによって、運用のリスクを軽減しているところにあります。

 

(大津章敬)

地域産業保健センターによる無料の健康問題相談

 地域産業保健センターは、医師会が厚生労働省の委託を受け、産業医の選任義務のない小規模事業場(労働者数50人未満)の従業員に対する健康相談や個別訪問指導を行っている組織です。最近は職場での安全配慮義務が強く求められるようになってきています。従業員の適切な健康管理のためにも、こういった仕組みを積極的に活用されてはいかがでしょうか。



【内容】

 

 1.健康相談

  相談開設日に指定会場にて健康に関して専任の医師に対して相談することができます。
 
  相談できる人:小規模事業場(労働者数50人未満)の事業主および従業員

 

  相談内容:「健康診断はしたけれど、その後どうしたらいいの?」
          「従業員の健康管理はどうすればいいの?」
          「骨粗しょう症とはどういう病気?」  等、健康に関する様々な疑問

 

 2.個別訪問 

  原則として年1回、専任の医師が訪問し健康相談や希望により職場巡視、健康講話を
 受けることができます。

 

  相談できる人:原則、労働者数50人未満の事業所。訪問指導を希望される事業所。

 

  主な内容:健康診断結果に基づいた健康管理などの指導・アドバイス
           職場の巡視、改善が必要な場合の指導・アドバイス
           従業員の健康問題に関する相談対応 

 





  具体的な利用方法としては、健康診断で所見ありの労働者に対し、特別休暇として相談を促すこと等が考えられるでしょう。詳しくはお近くの労働基準監督署、地域産業保健センターにお問い合わせ下さい。

 
(志治英樹)

インターンシップの労働者性

 先日、厚生労働省のウェブサイトで、「厚生労働省におけるインターンシップの追加募集」という告知がなされていました。就職希望学生を対象とした「職場体験実習(インターンシップ)」については多くの企業においてその導入が積極的に進められていますが、今回厚生労働省の募集要項によると、厚生労働省のみで約100件の募集が行われており、指導員の下で1~2週間の実習に従事するといった内容となっていました。


 このインターンシップ運営にあたっては、実習学生の労働者性をどのように扱うのかという問題があります。特にインターンシップは、アルバイトとの境目が不明確であることが少なくないため、事前にしっかりとしたプログラム等を準備しておかなければ単なるアルバイトと変わらない実態が発生してしまう恐れがあります。この場合はインターンシップとはいえ、労働者性ありとされ、最低賃金の支給や、事故発生時の労災の問題などが生じることとなります。
 
 このインターンシップにおける学生の労働者性に関しては、以下の行政通達が存在します。
「一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられる。なお、この判断にあたっては、昭和57年2月19日付け基発第121号「商船大学及び商船専門学校の実習生について(一般に実習の委託を受けた事業場との関係において原則として労働者ではないとするもの)」も参照されたい。」(平9.9.18 基発第636号)
 
 インターンシップは学生の就労意識の醸成や企業とのミスマッチの防止という観点から、積極的に導入が進められるべきだと考えますが、こうした労働者性の問題については受け入れ側の起業において、事前に十分な検討を行っておく必要があります。一般的には、今回の厚生労働省の募集のように実習であることを前面に出し、労働者としては扱わず、また補助作業従事以外にも、プログラムの内容に講義を取り入れたり、レポートの提出を求めるなどの工夫をしている企業も多いようです。
 
(労働契約チーム)

政府税制調査会の報告書の大枠が固まる

 以前より政府税制調査会が行っている個人所得課税の見直しに関する検討の内容をお伝えしていますが、日経によれば昨日、その報告書の大枠が固まったということです。そのポイントをいくつかピックアップしてみましょう。

 

 まず増税の可能性があるものとして、給与所得控除、配偶者控除、退職金所得控除の見直しが行われる方向が打ち出されています。これはいわゆる標準世帯が消滅したことによる対応ということなのでしょう。人事制度もかつての男性労働者のシングルインカムに頼る世帯収入という図式が崩壊したことで、大きな影響を受けていますが、税務においても同じような問題が出ているのでしょう。

 

 一方で、子育て支援への扶養控除の税額控除化も提案されるようですが、こちらは減税になります。子育ての支援は国全体を挙げた重要な政策であり、労働の分野でも育児介護休業制度の拡充などが進められていますが、税務面での対応も進められるようです。

 

 近日中にこの報告書が公表されることになると思いますので、現物が公表されましたら、また取り上げたいと思います。

 

(大津章敬)

ベンチャー企業が成長過程で必ずぶつかる人材の問題

 今日の日経新聞ベンチャー面に「新興企業の8割『経営人材不足』3市場対象の調査」という記事が掲載されていました。これはリクルート・エックスが新興3市場の上場企業に対して行ったアンケート結果を紹介した記事でしたが、それによれば経営人材の不足感があるという回答が8割近くを占めたそうです。私もあるベンチャー企業の人事労務顧問を、その会社の創業2年目、従業員数が5名というときから受託させて頂いていますが、その会社でもこの人材の問題が会社の成長を止めてしまった時期がありました。


 この会社の社長は非常に優秀な研究開発者であり、新しい市場を作ってしまうような革新的な商品を自ら開発し、会社を大きくしてきました。しかし、社長1人で企業経営のすべてを仕切って、引っ張っていくというスタイルはいつか必ず限界を迎えます。通常は従業員が10人くらいになると、財務や人事など社内のマネジメントを任せられる人材が必要になる時期がやって来るのではないでしょうか。この会社でも研究開発職と同時にそういったマネジメント人材を採用したのですが、なかなかうまく行きません。ベンチャー企業の総務・財務というポジションは非常に守備範囲が広い上に、柔軟な対応が求められるという難しい職務ですから、適任の人材はなかなか労働市場にはいないのです。この会社の場合は、社長の生業から、組織としての企業に生まれ変わるこのタイミングで、本当に人材の問題に悩まされました。その後数年掛けて、この会社はそうした問題を乗り越え、新たな大ヒット商品を開発し、人の面も資金の面もかなり安定しました。今は客観的に見ても非常に強い会社になっています。今になって振り返ってみると、あのときに優秀な経営人材が採用できていれば、この会社はもっと早く成長することができただろうと思います。もっともあの苦しみがあったからこそ、社長の現在のマネジメントスタイルが確立されたのも間違いありません。一方で、税理士や社労士はこういった環境にあるベンチャー企業に対し、もっと積極的な支援を行い、その成長を後押ししていかなければならないとも思います。


 ちなみに記事とは関係ありませんが、この調査は対象企業577社のうち、回答はたったの67社。こんな少ないサンプル数の調査でも視点が良ければ日経も取り上げるのだなぁと感じました。


(大津章敬)


東京都産業労働局「賃金制度と労使交渉に関する実態調査」の調査結果

 少しネタとして取り上げるのが遅くなってしまいましたが、4月26日に東京都産業労働局が産業・就業構造の変動の中で、変わりつつある賃金制度と労使交渉の実態を調査した結果が発表されました。今日はそのポイントをご紹介したいと思います。

1)成果主義賃金制度導入事業所は3割、年俸制導入事業所は2割
□成果主義賃金制度を導入している事業所は31.7%。導入率は企業規模によって格差が大きい。導入した時期は、2000年以降が6割を超えている。
2)定期昇給制度は6割以上の事業所にあるが、半数は見直し予定
□定期昇給制度の見直し予定事業所は49.4%、見直し提案を受けている労働組合は31.0%。
□見直しの方向は「定期昇給の自動的昇給部分を引き下げ、職務・成果に応じた部分を増やす」が41.8%で最も多く、次いで「定期昇給制度は廃止し、成果や業績による賃金決定を考えている」が31.7%となっている。
3)賃金制度を見直したのは5割弱。見直し後の評価は労使とも不満足の方が多い
□2000年以降、賃金制度を見直したのは、事業所調査では46.5%、労働組合調査では、49.8%となっている。
□見直しの理由は「従業員の成果や業績の評価を明確にするため」が事業所調査、労働組合調査とも6割で最も多い。
・見直し後の評価は、「ほぼ満足している」のは事業所調査で35.9%、労働組合調査では26.0%にとどまり、「満足していないが現状ではやむを得ない」も含めると、労使とも6割以上が満足していない。
4)人事考課・査定は7割の事業所で行っており、過半数はほぼうまくいっていると評価
□人事考課・査定は71.4%の事業所で行っており、現在の人事考課・査定について、過半数はほぼうまくいっていると評価している。
□人事考課の方法は、「一次評価は絶対評価、最終評価は相対評価」が37.1%で最も多い。人事考課の評価基準□項目は、一部公開と全部公開を合わせて7割近くが公開されている。

 

 概ね予想通りの内容ではありますが、面白かったのは人事考課・査定に関する苦情処理制度についての設問。「苦情処理制度がない」が65.8%で、何らかの形で苦情処理制度がある事業所は全体の13.9%(105事業所)という結果となっていました。この調査のコメントとしては、苦情処理制度の導入が少ないと書かれていたのですが、私から見れば「14%もあるんだ!」といった感じ。セミナーなどではいつも「人事評価制度のユーザーは被評価者である社員。社員の納得度を高めるためには人事評価フォロー表などの仕組みが必要。」と話をしているのですが、実際にこれを導入している企業は極めて少ないのが実態です。それだけに14%というのは私には非常に多く感じられました。社員への説明責任や評価に対する納得性の確保という点から、本当の意味で人事評価を機能させたいのであれば、評価のフィードバックと同時に、苦情処理の仕組みを導入することが望まれます。要は社員を不満を聞く訳ですから、会社側としてはなかなかしんどいとは思います、是非ご検討をお勧めします。

 

 なお、より詳細な調査結果の概要についてはこちらをご参照下さい。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2005/04/60f4q201.htm

 

(大津章敬)

中小企業の育児休業に100万円の助成金~2006年度から厚生労働省方針

 今日の日本経済新聞夕刊1面に「育児休業 中小企業に支援金~厚労省来年度から取得者出れば100万円」という記事が掲載された。これによれば、厚生労働省はこれまでに育児休業の取得実績のない従業員100人未満の中小企業を対象に、新たに育児休業を取得する社員が出てきた場合に100万円程度、2人目の取得社員に関しては70万円程度を助成する制度を設ける方針を打ち出したそうだ。期間は2006年度から5年間の予定。かつては時短奨励金や中小企業基盤人材確保助成金など、比較的金額が大きな助成金が多く、「助成金バブル」のような状況になっていた時期もあるが、最近は支給額の大きな助成金の見直しが進められていた。そんな中、久し振りの給付額が7桁の助成金であり、また一定の投資というような条件も今のところなさそう。今回は育児休業というなかなか企業側でコントロールが難しい内容ではあるが、本当に価値のある使われ方をして欲しいと願わずにはいられない。


(大津章敬)

「総務・人事部門のための個人情報保護法対策」セミナービデオ 5,000円引きの先行予約を開始

20050425ビデオ 先日4月25日に名古屋商工会議所で開催しました「「総務・人事部門のための個人情報保護法対策」のセミナービデオですが、本日より受付を開始しました。今回も早期割引を設定しており、5月23日(月)までにお申し込みいただいたみなさまには、早割として5,000円引きとさせて頂きます。


 このセミナーは非常にタイムリーな内容だったこともあり、会場は超満員となりました。就業規則の具体的見直しポイントの解説もありますので、以下のような内容について疑問に思われる場合には、是非ご覧頂きたいと思います。
■採用選考時の履歴書ってどう取り扱えばいいの?
■労働者名簿や健康診断台帳は個人情報なの?
■退職者から情報の破棄を求められたときはどうすればいいの?
■懲戒処分の公表って違法なの?
■派遣社員がいるんだけど、特段の対策は必要?
■就業規則に個人情報保護法についてどう記載すればいいの?
■人事評価結果を社員に見せろって言われたんだけどどうすればいいの?
■社員から個人情報保護規程遵守の誓約書をとりたいんだけど?
■情報漏洩防止のため、社員のメールをチェックすることは問題ないの?
■労働組合に個人情報って教えていいの?


 なお、お申し込みは以下よりお願い致します。


https://www.roumu.com/video/video20050425.html


(大津章敬)

日産 適年の積立不足2280億円を現金で穴埋め

 今朝の日経1面のトップに「日産、企業年金に現金2280億円拠出・債務を前倒し処理」という記事が大きく取り上げられていた。同社は2004年度(2005年3月期)決算に関し、連結当期純利益が前年度比1.7%増で過去最高の5,123億円を達成したのであるが、その中から2280億円の現金を一括拠出し、企業年金の財務を健全化するそうだ。今時点では同社ホームページにこの件に関する情報が掲載されていないので、詳細は分からないが、7月に適年と厚生年金基金を柱とする企業年金制度を再編するようで、その際に信託銀行で退職給付信託を新たに設定するという手法をとる模様。

 

 多くの中小企業からすれば自社とは関係がない大企業の話と片付けられてしまいそうだが、できればこのニュースを見て、自社の退職給付の問題を考えるきっかけにして頂きたい。確かに2280億円の現金を用意するなんていうのはまったく想像もできないようなレベルの話であるが、企業年金を中心とした退職給付債務の問題は、退職金制度を有するすべての企業にとって、深刻な問題である。これはいつもセミナーなどでお話していることであるが、この問題を放置すれば傷口が広がることさえあれ、勝手に問題が解決するということはありえない。最悪の場合には退職金制度によって倒産に追い込まれる危険性さえある、重大な企業経営リスクである。まずは現状の把握から始め、早急に対策の立案を進めて頂きたいと願っている。

 

 なおroumu.comでは以前より「退職金制度診断システム」というExcelの簡単なシミュレーションを無料配布している。こちらも是非ご利用頂きたい。

 

(大津章敬)