海外勤務者(役員)への給与支給に関する所得税の取扱い

 不定期連載中の海外勤務者の取り扱いですが、今回は海外勤務する者が役員であった場合の取り扱いについて取り上げましょう。



[質問]
 これまで、中国に当社の社員を出向させていましたが、この度、当社の役員を中国の会社の役員として出向させることになりました。少なくとも3年間は出向させる予定ですが、年に数回は日本に帰国し、当社の会議への出席などを行ってもらう予定です。中国での勤務にはなりますが、当社の業務も行うため、当社から役員報酬を支払う予定をしています。この場合の所得税は非居住者で非課税で扱えば良いでしょうか?


[回答]
 今回のケースは通常の社員とは異なり、20%の税率で源泉徴収する必要があります。


 以前、当ブログでも取り上げたように、海外で働く非居住者が受け取る給与には、勤務地の所在する国の税法が適用され、日本にある本社から支払われていても勤務地が外国ならば、日本の所得税法は適用されません。しかし、海外支店などに勤務する日本の法人の役員が受け取る給与については、日本国内で生じたものとして、支払を受ける際に20%の税率で日本の所得税が源泉徴収する必要があります。ちなみに、この役員の範囲には取締役支店長などの使用人として常時勤務している役員は含まれないとされていますので注意が必要です。


[まとめ]
 役員の給与に対する課税の取扱いについては、いくつかの国と租税条約を結んでおり、この租税条約に異る取扱いがあるときは、その取扱いが優先することになっています。勤務地の国との租税条約の内容を確認することが必要です。



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2007年8月7日「海外勤務者への賞与支給に関する所得税の取扱い」
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参考リンク
国税庁 タックスアンサー「居住者と非居住者の区分」
http://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2875.htm
国税庁 タックスアンサー「海外に勤務する法人の役員などに対する給与の支払いと税務」
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1929.htm


(宮武貴美)


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