育児休業期間延長の申出があった場合の対応

 育児休業制度に関するトピックを紹介する不定期連載。第3回目の今回は、育児休業期間の延長に関する対応を考えてみましょう。



【質問】 
 当社には、間もなくお子さんが1歳になり育児休業が終了する予定の従業員がいます。先日、その従業員から「保育園に空きがなく、子供を預けられないため、あと半年休業させて欲しい」という連絡がありました。この申出に対して、会社はどう対応すれば良いのでしょうか。


【回答】
 保育園に空きがないという理由であれば、お子さんが1歳6ヶ月になるまでの6ヶ月間、育児休業の期間を延長することができ、会社はこの申出を拒むことはできません。育児休業の期間について育児介護休業法では、以下のように定めています。
[基本的な期間の定め]
 子が出生した日から1歳に達する日(誕生日の前日)までの間で労働者が申し出た期間育児休業することができる。


[延長する場合の期間の定め]
休業を申し出る労働者またはその配偶者が子が1歳になる日に育児休業をしていること
子が1歳になった日以後も休業することがその労働者の雇用の継続のために特に必要であると厚生労働省令で定める場合に該当すること


 この2つのいずれにも該当する場合であれば、子が1歳から1歳6ヶ月に達するまでの期間について、事業主に申し出ることで育児休業することができるとされています。またこのうち、の厚生労働省令で定める場合とは、次の2点のうちどちらかに該当する場合をいいます。
(1)保育所における保育の実施を希望し、申し込みを行っているが当面その実施が行われない場合
(2)常態として子の養育をおこなっている配偶者が子を養育できなくなった場合

 
 今回のご質問の場合は、この従業員さんはその子女が1歳になるまでの予定で休業しており、その後保育園に空きがなく入れないという状況ですので延長の要件に該当することとなります。


【まとめ】
 育児休業を延長する場合は、それに伴って社会保険料の免除期間の延長や雇用保険の育児休業給付の受給期間の延長手続などが必要になります。これらの手続には実務上のポイントがいくつかありますので、別に機会を設けてご説明したいと思います。


[参照条文]
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第5条3項(育児休業の申出)
 労働者は、その養育する一歳から一歳六か月に達するまでの子について、次の各号のいずれにも該当する場合に限り、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者であってその配偶者が当該子の一歳到達日において育児休業をしているものにあっては、第一項各号のいずれにも該当するものに限り、当該申出をすることができる。
一 当該申出に係る子について、当該労働者又はその配偶者が、当該子の一歳到達日において育児休業をしている場合
二 当該子の一歳到達日後の期間について休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合として厚生労働省令で定める場合に該当する場合


育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第6条1項(育児休業申出があった場合における事業主の義務等)
 事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。ただし、当該事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、次に掲げる労働者のうち育児休業をすることができないものとして定められた労働者に該当する労働者からの育児休業申出があった場合は、この限りでない。
一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者
二 労働者の配偶者で当該育児休業申出に係る子の親であるものが、常態として当該子を養育することができるものとして厚生労働省令で定める者に該当する場合における当該労働者
三 前二号に掲げるもののほか、育児休業をすることができないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの


育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則 第4条の2(法第五条第三項第二号 の厚生労働省令で定める場合)
 法第五条第三項第二号 の厚生労働省令で定める場合は、次のとおりとする。
一 法第五条第三項 の申出に係る子について、保育所における保育の実施を希望し、申込みを行っているが、当該子が一歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合
二 常態として法第五条第三項 の申出に係る子の養育を行っている配偶者であって当該子が一歳に達する日後の期間について常態として当該子の養育を行う予定であったものが次のいずれかに該当した場合
イ死亡したとき。
ロ 負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により法第五条第三項 の申出に係る子を養育することが困難な状態になったとき。
ハ 婚姻の解消その他の事情により配偶者が法第五条第三項 の申出に係る子と同居しないこととなったとき。
ニ 六週間(多胎妊娠の場合にあっては、十四週間)以内に出産する予定であるか又は産後八週間を経過しないとき。



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(豊田ゆかり)


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