[速報]補正予算案で示された雇用調整助成金の再拡充などの雇用対策

補正予算案で示された雇用調整助成金の再拡充などの雇用対策 政府は昨日(2009年4月27日)の臨時閣議で、追加経済対策を裏付ける2009年度補正予算案を決定し、国会に提出しました。13兆9256億円という補正予算としては過去最大の歳出規模となっていますが、このうち厚生労働省関係の予算は4兆6,718億円。本日は厚生労働省が公表した「平成21年度厚生労働省補正予算(案)」の中から、2兆5,128億円の予算が確保されている緊急雇用対策の内容について取り上げます(画像はクリックして拡大)。



雇用調整助成金の拡充等 6,066億円
 雇用調整助成金および中小企業緊急雇用安定助成金について、解雇等を行わない場合の助成率の上乗せ(4/5→9/10(大企業2/3→3/4))、残業を大幅に削減し、解雇等を行わない場合の助成(30万円~45万円(大企業20万円~30万円))に加え、大企業に対する教育訓練費の引上げ、1年間の支給限度日数の撤廃などを行う。


再就職支援・能力開発対策の推進 7,416億円
(1)「緊急人材育成・就職支援基金(仮称)」の創設による職業訓練、再就職、生活への総合的な支援 7,000億円
・雇用保険を受給していない者の再就職を促進するため、職業訓練を抜本的に拡充するとともに、訓練期間中の生活保障のため、「訓練・生活支援給付(仮称)」の支給(単身者:月10万円、扶養家族を有する者:月12万円)および貸付け(それぞれ上限月5万円、月8万円)を行う。併せて、訓練の受入枠の確保等を図るため人材育成機関への支援を実施する。
・中小企業等の人材ニーズを踏まえ、新規成長・雇用吸収分野等において、十分な技能・経験を有しない求職者への実習雇用・雇入れの支援を実施する。
・介護、ものづくり分野などについて、事業主団体等と連携した職場体験や職場見学を実施する。
・長期失業者や住宅を喪失し就職活動が困難となっている者について、民間職業紹介事業者への委託による再就職支援、住居・生活支援を実施する。
(2)職業能力開発支援の拡充・強化 145億円
 雇用型訓練を実施する企業への助成制度の拡充(中小企業の助成率を3/4→4/5等)など、職業能力形成機会に恵まれない労働者への職業訓練に対する支援を充実させる。また、民間教育訓練機関等を活用した離職者訓練を拡充するとともに、母子家庭の母等子どもの保育を必要とする者が職業訓練を受ける際の託児サービスを提供する。さらに、雇用調整助成金および中小企業緊急雇用安定助成金を活用して休業中の労働者に教育訓練を実施する事業主に対して、訓練計画の策定、実施機関の情報提供、訓練実施のコーディネート等の支援を行う。
(3)障害者の雇用対策 5.5億円
 障害者に関する雇用調整助成金の助成率の引上げ(4/5→9/10(大企業2/3→3/4))、障害者が公的機関で一般雇用に向けた就労経験を積む「チャレンジ雇用」の拡大、ハローワークの障害者専門支援員の増員等を実施する。
(4)ハローワークの抜本的機能強化等 265億円
 雇用情勢の急速な悪化に対応するため、ハローワークの利用者サービスの向上に向けて、人員・組織体制を抜本的に充実・強化する。また、非正規労働者就労支援センターの増設(5カ所→19カ所)、ハローワークにおける職業訓練情報の収集・提供及び求人開拓の充実・強化等、各種相談体制の強化を図る。(職員304人、職業相談員7,043人(職業相談員については他項目の金額に計上する人数を含む))
(5)短時間勤務を希望する者への支援の充実 1億円
 短時間労働者均衡待遇推進等助成金の拡充(短時間正社員制度の導入促進に加え、同制度利用者の10人目まで助成金を支給)、両立支援レベルアップ助成金(子育て期の短時間勤務支援コース)の拡充(対象となる短時間勤務制度の拡充等)を図る。


緊急雇用創出事業の拡充 3,000億円
 都道府県に創設した基金を積み増し、地方公共団体における非正規労働者や中高年齢者等の一時的な雇用・就業機会のさらなる創出を図る。


内定取消し問題、外国人労働問題等への適切な対応
 緊急人材育成・就職支援基金(仮称)(7,000億円)の内数 その他106億円
(1)内定取消し問題への適切な対応 2億円
 大学等と連携して、学生等の就職状況や内定取消し情報を把握するほか、未内定者や採用内定を取り消された学生等を対象にした就職面接会を開催する。
(2)外国人労働問題等への適切な対応
1.帰国支援の実施
 帰国を希望する日系人離職者やその家族に帰国支援金を支給するとともに、企業の倒産等により帰国費用の支払いを受けられない外国人研修生・技能実習生について、帰国費用の立替払を実施する〔緊急人材育成・就職支援基金(仮称)(1頁、第1、2(1)参照)7,000億円の内数〕。
2.相談支援体制の強化 16億円
 ハローワークなどにおいて、通訳や相談員の増員など相談体制の強化等を図る。
(3)未払賃金立替払の請求増加への対応 74億円
 倒産した企業から賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金のうち一定額を政府が立替払する「未払賃金立替払制度」により、早期に立替払が受けられるよう調査体制の充実及び立替払に必要な原資の増額等を図る。
(4)海運事業等雇用調整助成金(仮称)の創設 13億円
 船員の雇用対策として船員保険制度においても船舶所有者の教育訓練・休業等による雇用維持の取組を支援するための海運事業等雇用調整助成金(仮称)を創設する。


失業等給付費等の確保 6,836億円
(1)失業等給付費の確保 6,810億円
(2)失業保険給付費(船員保険)の確保 26億円


6住宅・生活支援等 1,704億円
(1)雇用と住居を失った者等に関する緊急的な総合支援策 1,093億円
 雇用対策の補完として、住居を失った者などのうち就職活動を行う離職者を支援するため、住宅手当の創設、生活福祉資金の貸付要件の緩和、公的給付等を受けるまでの「つなぎ」資金貸付の創設、既存建築物の借上げ方式による緊急一時宿泊施設の増設等のホームレス支援策の拡充及び生活保護受給者で就労意欲の低い者等への支援などの生活支援策を実施する。
(2)生活保護費国庫負担金の確保 612億円
 生活保護制度において、厳しい雇用情勢の中で増加傾向にある被保護者数の伸びを踏まえた必要な財源を確保する。


 選挙対策のばら撒きという野党の批判もあり、補正予算の審議は様々な紆余曲折が予想されますが、助成金などにも影響を与える内容だけに今後の動向に注目したいところでしょう。



関連blog記事
2009年4月14日「政府の経済危機対策に盛り込まれた雇用対策の内容」
https://roumu.com
/archives/51536151.html

2009年3月31日「ワークシェアリング推進の大型助成金 残業削減雇用維持奨励金が創設」
https://roumu.com
/archives/51527922.html

2009年3月30日「[速報]雇用調整助成金の助成率 本日の省令で大企業3/4 中小企業9/10へ引上げ」
https://roumu.com
/archives/51527777.html

2009年2月26日「助成率が大幅引上げとなった育児介護関連の助成金」
https://roumu.com
/archives/51508226.html

2009年2月22日「第二次補正予算により創設・拡充された雇用関係助成金の概要」
https://roumu.com
/archives/51507686.html

2009年2月19日「平成21年2月6日よりキャリア形成促進助成金が拡充」
https://roumu.com
/archives/51506044.html

2009年2月17日「障害者雇用に関して創設・拡充された助成金制度」
https://roumu.com
/archives/51503716.html

2009年2月14日「雇止めした労働者に住居を提供する企業に支給される「離職者住居支援給付金」の概要」
https://roumu.com
/archives/51499820.html

2009年2月12日「年長フリーター・内定取消者等の雇用に対し支給される「若年者等正規雇用化特別奨励金」」
https://roumu.com
/archives/51499250.html

2009年2月10日「2月6日に創設された派遣労働者雇用安定化特別奨励金の概要」
https://roumu.com
/archives/51499235.html


参考リンク
厚生労働省「平成21年度厚生労働省補正予算案の概要」
http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/09hosei/index.html


大津章敬)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。