飲食店店長労務管理超基礎【第9回】飲食店店長ならばシフト管理を徹底し、労働時間を効率化する

 長時間労働は、多くの飲食店が共通して抱える労務管理上の課題であります。長時間労働は離職率の高さの原因となるだけでなく、それが更に進んでしまった場合には過労死という大きな問題にも発展します。また時間外割増賃金の負担の大きさも見逃すことはできません。こうした様々な問題を回避するためには、従業員のシフト管理を的確に実施することが求められます。

 飲食店の労働時間管理において店長が最初にすべきことは月間労働時間を把握することです。あってはならないことですが、もしもサービス残業があるのであればそれらも含めて把握します。そして次に全労働時間を現在の全従業員で割り振ります。正社員にしか割り振ることのできない業務とパートタイマーやアルバイト(以下「パート」とする)にも割り振れる業務があるでしょう。まずは正社員の労働時間を割り振った上で、パートのシフトを設定していきます。

 パートのシフト管理は固定シフト制か変動シフト制のどちらかを採用しているでしょう。ここでは固定シフト制とは、A君は、月曜日と水曜日の17時から22時に勤務し、Bさんは月曜日と木曜日と土曜日の17時から22時に勤務するのが毎週決まっているようなシフト管理のことをいいます。変動シフト制とは、C君もDさんも1ヶ月毎に翌月のシフト希望表に出勤できない日のみ×をつけて提出し、1ヶ月毎に毎月店長がシフト表を作成するような管理方法をいいます。どちらの制度にも一長一短がありますが、長時間労働対策という観点からは、固定シフト制を採用すべきでしょう。なぜなら正社員の長時間労働の原因の一つにパートのシフトの穴埋め勤務があるからです。固定シフト制を採用した場合は、パート自身にそのシフトに対する責任感を持たせる効果があります。最近は皆勤手当を支給している企業は少なくなりましたが、パートが自身のシフトに皆勤した際に手当を支給することは効果的でしょう。更に自身のシフト交替については、パート自身に責任を持たせるべきです。ただ他のパートにシフト交替を頼みやすいように交替勤務をしてくれた際の報酬(金銭的報酬に限らない)などに対する配慮は必要でしょう。

 飲食店にとって長時間労働は永遠の課題です。長時間労働を減らせるか否かは、店長のシフト管理力にかかっています。「飲食店業なら長時間労働は当たり前」という甘えは、いますぐ捨てなければなりません。長時間労働を減らすことができれば、店を過労死による莫大な損害賠償リスクから守ることができます。月間残業時間数が45時間程度になれば従業員の離職率も下がり、従業員のオペレーションレベルやサービスレベルも向上し、売上を上げていくことも期待できるでしょう。


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(中島敏雄)

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