中国人事管理の先を読む!第10回「進出企業の人事制度(6)レンジ給①」

 基本給におけるレンジ給とは、等級やポジションごとに基本給の上限と下限が設定されているものであり、シングルレートの基本給は等級に対してひとつの基本給額しか設定されないのに対し、レンジ給の場合、基本給自体に幅を持たせ、同一の等級やポジションであっても年齢、経験、能力などによって基本給に格差が生じるものです。従業員個々の基本給は、このレンジの中で決定されます。以下、レンジ給の一例を挙げてご説明します。

レンジ給 このように、幅を持たせて基本給の設計を行う場合、以下のように検討すべき2つの重要ポイントがあります。
(1)上位等級の下限値との関係
(2)レンジ自体の基本給の幅

 (1)の上位等級の下限値との関係を考える場合、昇格後の基本給の運用についても同時に想定しておかなければなりません。上記表モデル①のⅠ等級の最高値は4,100元になっており、上位等級であるⅡ等級の下限値も同じく4100元になっています。このように下位等級の上限値と上位等級の下限値を同じ基本給値にする場合、審査を経て上位等級に昇格しても、基本給は連続しているため、昇格のインセンティブ性が十分に発揮されない性質を持ち、昇格や上位等級と下位等級との役割責任の差が表現し難い制度となってしまいます。

 モデル②では、下位等級から上位等級に昇格した際、基本給の連続性はなく、100元のスキップが起こります。従って昇格による基本給は、昇給以外に100元のインセンティブを持つことになり、昇格に対するモチベーションを煽ることが可能になります。

 モデル③の基本給は、上位等級の上限値と下位等級の下限値が100元分だけ重なっているケースです。この場合、重なっている部分にいる従業員の基本給は、上位等級の社員の基本給よりも、下位等級の社員の基本給が高いという現象が起こります。このように重ねる要因としては、上位等級への昇格基準ラインを超えて昇格審査にモラトリアムを持たせること、或いは専門職のキャリアを選択させるため、同一等級に滞留させながらも、昇給に応じて基本給を上昇させていくという2つの狙いがあります。次回はこの3つのモデル基本給について制度設計の留意点を解説します。
(2011年4月18日 Bizpresso掲載記事)

[執筆者プロフィール]
清原学
株式会社名南経営 人事労務コンサルティング事業部
海外人事労務チーム シニアコンサルタント(中国担当)
 1961年兵庫県生。学習院大学経営学科卒。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。大手エンジニアリング企業の取締役最高人事責任者(CHO)を歴任し、上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード上海設立。中国進出日系企業約400社の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリー、人材育成に携わる。日本、中国にて講演多数。2011年からは株式会社名南経営にて日本国内での活動を行っている。
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
・ジェトロ上海センター 人事労務委託業務契約
・財団法人 社会経済生産性本部コンサルティング部 経営コンサルタント
・兵庫県中国ビジネスアドバイザー
・神戸学院大学 東アジア産業経済センター アドバイザー


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参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about

(清原学)

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