過重労働に基づく過労死・精神障害の労災認定件数が過去最高を記録

過重労働に基づく過労死・精神障害の労災認定件数 先日、厚生労働省より「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況(平成19年度)について」という資料が発表されましたが、これによれば脳・心臓疾患および精神障害等に関する労災認定が急増している実態が明らかになりました。過重労働が労務管理上の大きな課題になる中、非常に深刻な状態になりつつあることが分かる資料ですので、以下でその概要を取り上げましょう。
「過労死」等事案の労災補償状況
 請求件数は931件で、前年と比べると7件(0.7%)減少しているものの、支給決定件数は前年度比べ37件(10.4%)の増加の392件。なお、業種別では運輸業、職種別では運輸・通信従事者、また年齢別では50~59歳がもっとも多くなっています。
精神障害等の労災補償状況
 請求件数は952件と前年度比133件(16.2%)の増加。更に支給決定件数は268件であり、前年度比63件(30.7%)の大幅増となっています。業種別では「製造業」、職種別では「専門的・技術的職業従事者」、年齢別では30~39歳がもっとも多くなっています。


労災認定における労働時間数 この労災の支給決定件数を年度別にまとめたのが左のグラフ(画像はクリックして拡大)ですが、平成17年度以降、毎年大幅な伸びを続けていることが分かります。こうした問題を回避するためにはまずは労働時間の適正化が求められますが、今回の資料において、脳・心臓疾患で「長期間の過重業務」により支給決定された事案の1ヶ月平均の時間外労働時間数をまとめたのが、右のグラフ(画像はクリックして拡大)になります。これを見ると、やはり80時間以上が中心になっていますが、60時間以上80時間未満でも28件について労災認定が行われています。こうした過重労働による健康障害を防止するためには、まずは長時間労働の是正が基本となりますが、仮に80時間未満であっても、休日労働や深夜勤務、そして交替制や出張の多さなど、時間数以外のファクターにも注意が必要となります。また実務的には組織内のコミュニケーションの改善や医師との面談制度などの整備も欠かせません。



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参考リンク
厚生労働省「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況(平成19年度)について」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/05/h0523-2.html


(大津章敬)


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