[ワンポイント講座]社宅を貸与した際の労働保険料の取扱い

 毎週水曜日はワンポイント講座を連載していますが、今回は社宅を従業員に貸与する際の労働保険料の取り扱いについてお話したいと思います。


 そもそも労働保険料の算定基礎になる賃金総額には、会社が従業員に支払うもののうち労働の対償として支払うものが含められ、実費弁償的なものや恩恵的なものは含まれません。また、通常であれば恩恵的なものと解釈されるものであっても、就業規則等によってその支給が会社に義務づけられている場合は、原則として労働の対償として支払うものとなることから、賃金総額に含める必要があります。以上の基礎を押さえた上で、今回のテーマである、社宅を貸与した際の取扱いに関し、以下の2パターンを考えてみましょう。
社宅の貸与を受けない従業員についても、定額の手当を支給しているケース
 このケースについて労働基準法コンメンタールによると、「住宅の貸与は、原則として福利厚生施設と解する。ただし、住宅の貸与を受けない者に対して定額の均衡給与(住宅を貸与しない者に対して貸与されている者との均衡上支給される手当)が支給されている場合には、住宅貸与の利益が明確に評価され、住居の利益を賃金に含ませたものとみられるので、その評価額を限度として住宅貸与の利益は賃金であると解される」としています。このことから、社宅を貸与されない従業員に対して住宅手当などの均衡給与が支給されている場合は賃金となり、支給されていない場合は福利厚生施設として扱われることになります。


社宅を貸与している従業員から、社宅の費用を徴収している場合
 このケースにおいては、従業員から代金を徴収するものについては原則として賃金ではないとされ、但しその徴収金額が実費の3分の1以下であるときは、徴収金額と実費の3分の1との差額部分についてはこれを賃金とみなされることになっています(昭和22年12月9日 基発452号)。例えば、実費が12万円で徴収額が3万円のときは、実費の3分の1である4万円を下回っていますので、差額の1万円(4万円-3万円)が賃金になります。逆に徴収額が5万円であれば、実費の3分の1以上を徴収していますので、賃金とはならないということになります。


[関連法規]
労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第2条(定義)
 この法律において「労働保険」とは、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号。以下「労災保険法」という。)による労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)及び雇用保険法(昭和49年法律第116号)による雇用保険(以下「雇用保険」という。)を総称する。
2 この法律において「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通常以外のもので支払われるものであつて、厚生労働省令で定める範囲外のものを除く。)をいう。
3 賃金のうち通貨以外のもので支払われるものの評価に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。
4 この法律において「保険年度」とは、4月1日から翌年3月31日までをいう。


労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則 第3条(通貨以外のもので支払われる賃金の範囲及び評価)
 法第二条第二項 の賃金に算入すべき通貨以外のもので支払われる賃金の範囲は、食事、被服及び住居の利益のほか、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長の定めるところによる。
2 前項の通貨以外のもので支払われる賃金の評価額は、所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長が定める。



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(福間みゆき)


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