[ワンポイント講座]定年・再雇用時における社会保険の標準報酬月額改定
今日は土曜日ですが、毎週水曜日にお届けしているワンポイント講座を特別に掲載したいと思います。今日は定年・再雇用時における社会保険の標準報酬月額改定についてQ&A形式で取り上げます。
[質問]
当社では就業規則により「定年は満60歳に達した日の属する月の月末」「本人が希望する場合は65歳まで継続雇用する」と定めてあります。このたび、1月15日に60歳の誕生日を迎え、1月末日で定年退職をする者がいるのですが、本人の希望もあり、引き続きフルタイムの嘱託社員として再雇用する予定でいます。賃金は60歳までの月額40万円から月額30万円に引き下げることで本人も同意しております。このような場合、社会保険の取扱いに特例があると聞いたのですが、それはどのようなものでしょうか。
[回答]
社会保険の標準報酬月額は、昇給や降給によって、固定的賃金の額が大幅に変動した場合に改定を行うことができるとされています。これを標準報酬月額の「随時改定」といいますが、この方法は原則として、固定的賃金の変動月から3ヶ月間に支払われた報酬の平均月額により判断されます。つまり、賃金が下がっても同時に標準報酬月額が下がるわけではなく、変動月から4ヶ月後に随時改定に該当した場合に標準報酬月額は改定されます。ただし、今回のように60歳定年を迎え、同一の事業所において雇用契約上いったん退職した者が1日の空白もなく引き続き再雇用された場合は、特例として定年退職日の翌日にいったん被保険者資格を喪失したものとみなし、新しい賃金額で再取得することができます。この手続は、同じ日に被保険者資格の取得と喪失を行うことから「同日得喪」と呼ばれています。
したがってご質問の件では、定年退職日の翌日である2月1日を資格喪失日とした「資格喪失届」と同日を資格取得日とした「資格取得届」を提出することにより、同日得喪を行い、随時改定を待つことなく、標準報酬月額の改定を行うことができます。なお添付書類は、健康保険被保険者証と就業規則のコピーなど定年・再雇用の事実の分かるものとされています。
[関連法規]
健康保険法 第43条(標準報酬月額の改定)
保険者等は、被保険者が現に使用される事業所において継続した3月間(各月とも、報酬支払の基礎となった日数が、17日以上でなければならない)に受けた報酬の総額を3で除して得た額が、その者の標準報酬月額の基礎となった報酬月額に比べて、著しく高低を生じた場合において、必要があると認めるときは、その額を報酬月額として、その著しく高低を生じた月の翌月から、標準報酬月額を改定することができる。
2 前項の規定によって改定された標準報酬月額は、その年の8月(7月から12月までのいずれかの月から改定されたものについては、翌年の8月)までの各月の標準報酬月額とする。
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(佐藤浩子)
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