[改正労働契約法]定年後の継続雇用で通算5年を超えた場合に無期転換ルールは適用されるか

労働契約法 今年の4月は改正労働契約法と改正高年齢者雇用安定法の施行が重なり、各企業はその対応に追われつつあるかと思います。この対応を進める中で、実務上検討しておかなければならないことに、60歳以降の有期労働契約による継続雇用と改正労働契約法の無期転換ルールの関係があります。

 改正高年齢者雇用安定法では、定年は60歳のままとすることを認めながら、原則として希望者全員の65歳までの継続雇用制度を導入することを義務付けています。これまで定年後の継続雇用においては、正社員から嘱託社員に身分変更を行い、1年間の有期労働契約を締結した上で、65歳までの継続雇用する企業が多くありました。更には、技能の伝承や後任の不足を補うことを目的とし、65歳以降についても継続雇用するケースが見られました。このような事案では通常以下のように、有期労働契約を何度も更新することとなるでしょう。
60歳で定年退職、継続雇用制度により有期労働契約を締結(※平成25年4月1日以降の締結)
60歳から65歳まで有期労働契約を更新
65歳以降、会社の要請等により更に有期労働契約を更新

 改正労働契約法が施行される4月以降では、において、有期労働契約の通算契約期間が5年を超える契約となるため、例え65歳以降の労働者であっても、無期転換を申し込むことができることになります。

 この根拠として、厚生労働省労働基準局労働条件政策課が策定した質疑応答(以下、「質疑応答」という)に以下のような質疑と応答が記載されています。


(1)無期転換ルールの適用については、労働契約法の適用除外である船員、国家公務員、地方公務員、同居の親族のみを使用する場合を除くすべての労働者について適用される。このため、60歳以上の労働者についても適用されることになる。
(2)60歳定年後に有期労働契約で継続雇用している労働者を、65歳(通算5年)を超えて契約更新した場合でも、無期転換の申込みができる。


 これらから、そもそも無期転換ルールは60歳以上の労働者も対象であり、更に継続雇用後の事例であっても無期転換を申し込むことができることがはっきりと分かります。そのため、実務としては無期転換後の退職について規定しておく必要があります。具体的には、無期労働契約に転換した労働者を対象とした定年(第2定年)を規定することが考えられます。これについては、質疑応答に「適正な手続により別途定年を定めた場合には、その定年に達したことにより雇用終了とすることは可能と解される」と記載されています。

 今後は労働力不足等も相まって、65歳以降の労働力も積極的に活用するという企業もあるかと思いますが、そのような際には、無期転換が発生するかもしれないことを念頭に置き、規程整備を進めることが求められます。


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参考リンク
厚生労働省「労働契約締結時の労働条件の明示 ~労働基準法施行規則が改正されました~」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/meiji/index.html

(宮武貴美)

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