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ダブルワーカーの労働時間算定と割増賃金

 従来、従業員の兼業を認める会社はほとんどありませんでしたが、ここ数年、残業規制の強化やワークシェアリングの進展などに伴い、それを認める事例が徐々に増加しています。このようなダブルワークをしている労働者については、労働時間の計算や社会保険の加入、事業所間移動における事故発生時の労災適用など多くの問題がありますが、今回は労働時間のカウント方法について、その法的取り扱いを見ることにしましょう。


 労働基準法第38条は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定していますが、これは、同一事業主に属する異なった事業場において労働する場合だけではなく、事業主を異にする事業場において労働する場合も含んでいることを意味します。(昭和23.5.14、基発769号)よって、労働時間の通算の結果、時間外労働に該当する場合には割増賃金を支払わなくてはいけないということになるのです。
 
 この場合、どちらの事業主が割増賃金を支払わなくてはならないのでしょうか?いくつかの例を挙げて解説しましょう。(甲事業主・乙事業主ともその労働者が兼業していることを知っており、また乙事業主が甲事業主の後で労働契約を結んでいるとします。)
A.甲事業場(4時間)の後、乙事業場(5時間)で勤務する場合
   ⇒乙事業所で1時間の時間外労働による割増賃金の発生
B.甲事業場(5時間)の後、乙事業場(4時間)で勤務する場合
   ⇒乙事業所で1時間の時間外労働による割増賃金の発生
C.甲事業場(4時間)の後、乙事業場(4時間)で勤務する契約であるが、たまたま甲事業場で5時間勤務してしまった場合
   ⇒甲事業場で1時間の時間外労働による割増賃金の発生
 
 実務上良く見られるのが、甲事業場で常勤として8時間勤務した後に、乙事業場にアルバイトとして勤務するするケースでしょう。この場合は乙事業所のついてはそのすべてが法定労働時間超になりますので、割増賃金の対象となります。愛知県の場合は現在、最低賃金は683円/時ですので、最低でもその25%増の854円以上の時給で雇用契約を結ぶ必要があるということになります。


 現実、このような取り扱いが行われていることは稀だとは思いますが、今後、社員の兼業を積極的に認める企業は年々増加することでしょう。その際にはこうした法律の原則的な取り扱いについて押さえて、実務を行うことが求められます。


(労働時間チーム)

高齢者雇用に関する助成金(継続雇用定着促進助成金)

 平成18年4月より施行される60歳以降の年齢への雇用年齢引き上げ義務化が大きな話題となっております。そこで今回はいち早く継続雇用制殿導入などを行った事業主のための助成金制度(継続雇用定着促進助成金)をご紹介したいと思います。


■ 継続雇用定着促進助成金
1.継続雇用制度奨励金(第Ⅰ種)
 継続雇用制度の導入または改善を行う事業主に対して助成する制度です。次のいずれにも該当する雇用保険の適用事業主に支給されます。
①下記②の継続雇用制度導入日から1年以上前において労働協約または就業規則により60歳以上の定年が定められていること。
②労働協約または就業規則により、(イ)または(ロ)に該当する継続雇用制度を設けたこと。
 (イ)定年延長等。(a)または(b)
   (a)定年を61歳以上に引き上げ、引き上げ前の定年を越える年齢の者を当該引き上げ後の定年に達するまで雇用する制度を設けたこと。
   (b)定年延長と実態上同一の制度改善を行ったこと。
 (ロ)継続雇用制度または在籍出向制度により、65歳以上の年齢まで雇用する制度を設けたこと。
③上記②の継続雇用制度の導入前の過去における定年または継続雇用制度による最高の退職年齢を超えるものであること。
④上記②の継続雇用制度を導入した日において、常用被保険者のうち、1年以上継続して雇用されている55歳以上65歳未満の常用労働者が1人以上雇用されていること。


2.多数継続雇用助成金(第Ⅱ種)
 第Ⅰ種支給事業主のうち、高年齢者の雇用割合が15%を超える事業主に対して助成する制度です。


 さらに、平成16年4月1日以降は、65歳以上の定年導入と同時に高齢短時間正社員制度を導入した事業主には上記「1.継続雇用制度奨励金(第Ⅰ種)」に支給加算が行なわれることとなっています。今後も様々な改正が予想されますので、注目していく必要があるでしょう。


参考:http://www.jeed.or.jp/elderly/employer/subsidy/subsidy1.html


(伊藤里奈)

退職金単行本プレビュー第5回「適格退職年金解約のスケジュール確認」

 本日は9月に発売予定の退職金単行本プレビューの5回目(最終回)です。適年コンサルの中でもっとも重要なパートの1つが生命保険会社など幹事会社との折衝およびスケジューリングになります。最近は幹事会社自身が中退共などへの切り替えの支援を行っていますが、社会保険労務士など外部の専門家がここに入ることによって、その企業にとって客観的な解決方法を提示し、最適な制度改革を行うことができると考えています。今回はその折衝のパートをご紹介しましょう。(退職年金規程の解約時按分基準の変更というテクニカルな取り扱いを行っている部分になります。)




大熊コンサル:
「それでは順番に今後の流れを確認しながら、スケジュールを確定していきましょう。適年から中退共への引継を行うためには、最終的に新日本生命様より「証明書」という書類を発行して頂き、それを添付して中退共の加入手続きを行うことになります。9月より新退職金制度を施行予定ですので、当面のゴールを9月10日に(16)の証明書受領が完了しているというところに設定したいと思います。」
生保佐藤:
「分かりました。」
大熊コンサル:
「それに向けてのスケジュールですが、まず[(1)適年解約の意思表示]は本日、この場でさせて頂いているので既に完了しています。次に[(2)中退共加入書類取り寄せ]ですが、こちらについては申請書類を事前に中退共のホームページで取り寄せておきましたので、こちらに記入をして、後ほどFAXしておいて頂けますか?」
宮田部長:
「分かりました。」
大熊コンサル:
「(3)適年解約必要書類の受領ですが、この点についてはこれまでお話していないことがありますので、ここで補足します。以前、退職金診断報告会を行った際に積立不足の金額についてお話しましたが、実はあの表(○ページ資料2参照)を詳細に見ていきますと、適格退職年金からの解約返戻金が、退職金規程の要支給額を上回る社員がいるのです。」
服部社長:
「あれだけ大きな積立不足があったにも関わらず、要支給額を上回る社員がいるのですか?」
大熊コンサル:
「ええ、例えば社員番号48番の北村さんですが、基準日現在の退職金支給額は会社都合で212,800円、自己都合で106,400円ですが、適格退職年金の解約返戻金は309,922円とこれらの金額を上回ってしまっています。これは解約時に限って発生する不都合なのですが、退職金規程と退職年金規程のちょっとしたズレに原因があります。退職年金規程を見ると、第○条に解約返戻金の分配についての定めがあり、それによれば適格退職年金を解約するときには、その解約返戻金を責任準備金に比例して配分すると規定されています。責任準備金とは、各社員に将来退職年金を支払うために現在積み立てておく必要がある金額ですが、これは退職金規程の金額と同一ではありません。そのため、特に勤続年数が短い社員について、こういった逆転現象が発生してしまうのです。」
服部社長:
「なるほど。大きな積立不足がある社員がいる一方で、逆転してしまっている社員がいるというのは望ましくはないですね。これについてはどうしようもないのでしょうか。」
大熊コンサル:
「対策はあります。ただこれは新日本生命様に相談に乗って頂く必要があります。」
生保佐藤:
「退職年金規程の変更ですね?」
大熊コンサル:
「そうです。この問題は、先ほどの退職年金規程の条文を変更することで解決されます。但し、その場合には、この規程変更に関する被保険者全員の同意をもらう必要があります。佐藤さん、この対応は可能でしょうか?」
生保佐藤:
「ええ、それほど頻繁に行われる取り扱いではありませんが、被保険者全員の同意があるのであれば、可能です。それでは本社に相談した上で、この取り扱いに必要な書式を用意させて頂きます。」
大熊コンサル:
「ありがとうございます。それでは、その書式も含め適年解約に必要な書類はいつ頃までにご用意頂けますか?」
生保佐藤:
「それでは5月末ということでいかがでしょうか。」
大熊コンサル:
「わかりました。よろしくお願いします。次は社内的なことですが、最終的には今回の退職金制度変更について、社員のみなさんからの個別同意を得たいと考えています。そのステップとして、まずは全社員に発表する前に、幹部社員への説明を行い、意見を求めたいと思いますが、近日中にみなさんが集まる場はございませんでしょうか?」
宮田部長:
「毎週月曜日の朝に管理職全員参加の経営会議を行っています。そこで説明するということでどうでしょうか。」
服部社長:「そうだな。それでは来週の月曜日の会議で説明することにしよう。」




 ということで、9月発売予定の単行本の原稿のうち、そのメインとなる小説部分を5回に亘ってご紹介しました。内容としてはこのあとももちろん続くのですが、あとは発売後、実際の書籍でお読み頂ければと思っています。この単行本については正式タイトルや発売日が決定次第、当blogやroumu.comでお伝えします。発売になりましたら、是非お手にとって頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

(大津章敬)

退職金単行本プレビュー第1回「退職金制度診断」

 先週の日曜日、9月に発売予定の退職金単行本(タイトル未定:日本法令)の原稿が書きあがったという記事を掲載しました。本単行本では服部印刷という仮想の企業での退職金制度改定を小説形式で取り上げ、退職金制度改定を実際に行う際の検討ポイントや手順を解説しています。本日から全5回(予定)に亘り、この単行本のメインとなる小説部分をプレビューとして当blog上でご紹介したいと思います。


 それでは第1回の本日は退職金制度診断報告会の中から、適格退職年金の状態について取り上げている部分をご紹介しましょう。



大熊コンサル:
「次に退職金の支払いのために新日本生命様と契約されている適格退職年金の状況について簡単に解説します。[解説1]先日、宮田部長様にお願いし、新日本生命様から『解約返戻金予定額明細』という資料をお取り寄せ頂きました。これは、仮に今の時点で適格退職年金を解約した場合、社員のみなさん1人1人に支給される解約返戻金の金額をまとめた資料になります。今回の分析シートの中にそのデータを入力しておきましたが、まずは全体像から把握しましょう。現時点での適格退職年金の積立金は総額で58,947,172円になります。この金額は現時点のものであり、今後の掛金の払い込みや退職者への支払いなどによって、この金額は常に増減しますが、仮にこの5800万円という積立金で今後の定年退職者の支払いを行おうとすれば、この積立金は今後5年間の6人の定年退職者の退職金(58,878,700円)で完全に枯渇してしまいます。
■図表 今後5年間の定年退職金支払予想■
 平成 定年退職者 定年退職金予想額
 17年   0人        円
 18年   1人    7,934,800円
 19年   3人   31,417,600円
 20年   1人   99,236,400円
 21年   1人   10,289,900円
 合計   6人   58,878,700円


 これを聞いた服部の表情が蒼ざめた。隣に座っている宮田も同様である。
服部社長:
「5年後には枯渇?!宮田部長、どういうことなんだ?」
宮田部長:
「これまで適格退職年金については保険会社の担当者に任せ切りで、状況をほとんど把握していませんでした。こんな状況になっているとは….。しかし、この適格退職年金の契約は社員の定年退職・中途退職の別に関わらず、その全額が支給されるという内容になっていたはずですが。大熊さん、どういうことなのでしょうか?」
大熊コンサル:
「はい、これが最近良く言われる積立不足の問題です。積立不足の原因はいくつかあるのですが、もっとも大きいのが予定利率の問題です。予定利率というのは、掛金や給付額の算定の基礎となる利率ですが、御社ではこれを年5.5%と設定しています。つまり毎年5.5%の運用がなされるという前提で掛金が決まっている訳です。しかし、実際の運用利率を決算報告書で確認したところ、現在は年0.75%の運用となっていました。年5.5%で運用されるつもりが、年0.75%でしか運用できていない訳ですから、少なくともその差額部分については積立不足となってしまいます。更に、今の状態で適格退職年金を継続するとすれば、その差額は膨らみ続ける、つまり積立不足が拡大することになります。その他にも要因はあるでしょうが、この結果が積立金の少なさに繋がり、あと5年でそれが枯渇するという大きな原因になっています。」
服部社長:
「いまどき年5.5%の運用という現実離れした設定をしていること自体が問題ということですね。宮田部長、当社ではなぜこれまでこの予定利率を見直して来なかったのか?」
宮田部長:
「言われてみれば2年位前に保険会社の担当者から利率の見直しが何とかという話があったのですが、それを行うと毎月の掛金が倍くらいになるというので見送ったことがありました。」
服部社長:
「そういえば、そんな相談を受けた気がするな。事情が良く分からないままに、掛金が上がるのは困るので、据え置くように指示した覚えがある。」
大熊コンサル:
「他社もほとんど御社と同じ状況です。適格退職年金では5年毎に財政再計算といって掛金の見直しを行うのですが、その際に予定利率を変更することができます。しかし、中小企業では、掛金が大幅に増加することを嫌って、5.5%で据え置かれている事例がほとんどでしょう。御社の適格退職年金の決算報告書の貸借対照表を見ると、責任準備金、つまり将来の年金給付を賄うために現時点で必要な積立金は88,275,206円となっています。これに対し、実際に貯まっているお金が保険積立金で、その額は58,947,172円です。よってこの差額である29,328,034円が、積立不足となるのです。もっともこれは年金制度の計算上の数字ですので、退職金規程に基づく社員への債務という視点とは若干異なっています。しかしそのような細かい話はともかくとして、まず現時点では現在適格退職年金という外部積立に貯まっているお金が6,000万円弱しかないという点を押さえて頂ければ結構です。



 話としてはこの後、適年の資産状況の説明から積立不足の話に展開していくことになります。今回はこのような小説形式を採用することで、コンサルティング現場でのやり取りを再現し、実際に検討しなければならないポイントを具体的に解説しています。明日もこの続きをご紹介することとします。お楽しみに。


(大津章敬)


女性労働力の積極的活用~ポジティブ・アクションへの取り組み~

 このblogでは、これまでにも女性労働力に着目し、これに関する法改正や国の政策の動向などについて紹介してきました。今回は、この労働力の積極的活用を考えるポジティブ・アクションについて紹介したいと思います。


 平成11年4月に男女雇用機会均等法が「男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的」として施行されました。しかしながら、それ以降も男女差別の完全な撤廃が進められることはありませんでした。このため、厚生労働省は平成14年4月に「ポジティブ・アクションのための提言~意欲と能力のある女性が活躍できる職場づくり~」を取りまとめ、女性の能力発揮を促進するための提言として発表しました。


 ポジティブ・アクションの定義は、「固定的な性別による役割分担意識や過去の経緯から、男女労働者のあいだに事実上生じている差があるとき、それを解消しようと、企業が行う自主的かつ積極的な取組」であるとされています。もう少し分かりやすく言えば、単に女性だからという理由だけで女性を優遇するためのものではなく、これまでの慣行や固定的な性別の役割分担意識などが原因で、女性は男性よりも能力を発揮しにくい環境に置かれている場合に、こうした状況を是正するためのあらゆる取組のことを言います。この提言書には経営者、プロジェクト・チーム等推進担当者、人事担当者、職場上司、働く女性、働く男性のそれぞれの立場での取り組みの具体例が書かれていますので、もしご関心をお持ちであれば是非ご参照ください。


 今後、深刻化する労働力人口の減少を考えた場合、更なる女性労働力の活用が不可欠となってきます。厚生労働省ではポジティブ・アクションのためのワークシートを作成し、同ホームページで配布を行っています。こうしたツールも活用し、現状分析と問題点の発見を行われてはいかがでしょうか。


(宮武貴美)

大企業を中心に導入が進むキャッシュバランスプラン

 先日、厚生年金基金連合会より「確定給付企業年金アンケート調査」:pdfの集計結果が発表されました。

 

 このアンケートは今年の5月から6月にかけて、1,142件を対象に行われたもので、回答数は基金型が442、規約型が185となっています。確定給付企業年金の基本的な制度設計や資産運用、会計基準に関する取り扱いなどに関する内容についてのアンケート集計が行われているのですが、その中で目を引いたのはキャッシュバランスプランの導入状況に関する項目です。

 

 「老齢給付金について、キャッシュバランスを導入していますか?」という問いに対して、以下のような回答がなされていました。
[全体]
 導入している       155件(24.7%)
 類似制度を導入している 87件(13.9%)
 導入していない      378件(60.3%)
[基金型]
 導入している       104件(23.5%)
 類似制度を導入している 66件(14.9%)
 導入していない      268件(60.6%)
[規約型]
 導入している        51件(27.6%)
 類似制度を導入している 21件(11.4%)
 導入していない      110件(59.5%)

 

 この結果をどのように見るかというのは判断が分かれるところかも知れませんが、私個人としては、CBPもしくは類似制度の導入が確定給付年金制度全体の約40%にも達しているというのには少し驚きました。先日、ある国内大手の生命保険会社の法人部長さんとの打合せの中で、CBPは(その保険会社では)被保険者300人以上でないと受託できないという話をお聞きしましたが、大企業を中心にこの制度の導入が着々と進められているようです。

 

※キャッシュバランスプラン
 キャッシュバランスプランは、2002年4月に施行された確定給付企業年金法によって新たに認められた企業年金制度です。確定拠出年金制度同様、企業が一定の金額を社員のために拠出(※1)し、この原資に対し、企業が毎年、一定の利息(再評価率※2)を付与して運用、最終的に積み立てられた金額が支給額となるという制度になります。従来の適格退職年金制度など、確定給付型の企業年金制度と確定拠出年金制度の両方の特徴を持っているため、ハイブリッド(混合)型とも呼ばれることもあります。この制度の最大の特徴は、運用の利率である再評価率を従来の適格退職年金制度のように固定せず、国債の応募者利回り(外部金利)と連動させることによって、運用のリスクを軽減しているところにあります。

 

(大津章敬)

地域産業保健センターによる無料の健康問題相談

 地域産業保健センターは、医師会が厚生労働省の委託を受け、産業医の選任義務のない小規模事業場(労働者数50人未満)の従業員に対する健康相談や個別訪問指導を行っている組織です。最近は職場での安全配慮義務が強く求められるようになってきています。従業員の適切な健康管理のためにも、こういった仕組みを積極的に活用されてはいかがでしょうか。



【内容】

 

 1.健康相談

  相談開設日に指定会場にて健康に関して専任の医師に対して相談することができます。
 
  相談できる人:小規模事業場(労働者数50人未満)の事業主および従業員

 

  相談内容:「健康診断はしたけれど、その後どうしたらいいの?」
          「従業員の健康管理はどうすればいいの?」
          「骨粗しょう症とはどういう病気?」  等、健康に関する様々な疑問

 

 2.個別訪問 

  原則として年1回、専任の医師が訪問し健康相談や希望により職場巡視、健康講話を
 受けることができます。

 

  相談できる人:原則、労働者数50人未満の事業所。訪問指導を希望される事業所。

 

  主な内容:健康診断結果に基づいた健康管理などの指導・アドバイス
           職場の巡視、改善が必要な場合の指導・アドバイス
           従業員の健康問題に関する相談対応 

 





  具体的な利用方法としては、健康診断で所見ありの労働者に対し、特別休暇として相談を促すこと等が考えられるでしょう。詳しくはお近くの労働基準監督署、地域産業保健センターにお問い合わせ下さい。

 
(志治英樹)

インターンシップの労働者性

 先日、厚生労働省のウェブサイトで、「厚生労働省におけるインターンシップの追加募集」という告知がなされていました。就職希望学生を対象とした「職場体験実習(インターンシップ)」については多くの企業においてその導入が積極的に進められていますが、今回厚生労働省の募集要項によると、厚生労働省のみで約100件の募集が行われており、指導員の下で1~2週間の実習に従事するといった内容となっていました。


 このインターンシップ運営にあたっては、実習学生の労働者性をどのように扱うのかという問題があります。特にインターンシップは、アルバイトとの境目が不明確であることが少なくないため、事前にしっかりとしたプログラム等を準備しておかなければ単なるアルバイトと変わらない実態が発生してしまう恐れがあります。この場合はインターンシップとはいえ、労働者性ありとされ、最低賃金の支給や、事故発生時の労災の問題などが生じることとなります。
 
 このインターンシップにおける学生の労働者性に関しては、以下の行政通達が存在します。
「一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられる。なお、この判断にあたっては、昭和57年2月19日付け基発第121号「商船大学及び商船専門学校の実習生について(一般に実習の委託を受けた事業場との関係において原則として労働者ではないとするもの)」も参照されたい。」(平9.9.18 基発第636号)
 
 インターンシップは学生の就労意識の醸成や企業とのミスマッチの防止という観点から、積極的に導入が進められるべきだと考えますが、こうした労働者性の問題については受け入れ側の起業において、事前に十分な検討を行っておく必要があります。一般的には、今回の厚生労働省の募集のように実習であることを前面に出し、労働者としては扱わず、また補助作業従事以外にも、プログラムの内容に講義を取り入れたり、レポートの提出を求めるなどの工夫をしている企業も多いようです。
 
(労働契約チーム)

政府税制調査会の報告書の大枠が固まる

 以前より政府税制調査会が行っている個人所得課税の見直しに関する検討の内容をお伝えしていますが、日経によれば昨日、その報告書の大枠が固まったということです。そのポイントをいくつかピックアップしてみましょう。

 

 まず増税の可能性があるものとして、給与所得控除、配偶者控除、退職金所得控除の見直しが行われる方向が打ち出されています。これはいわゆる標準世帯が消滅したことによる対応ということなのでしょう。人事制度もかつての男性労働者のシングルインカムに頼る世帯収入という図式が崩壊したことで、大きな影響を受けていますが、税務においても同じような問題が出ているのでしょう。

 

 一方で、子育て支援への扶養控除の税額控除化も提案されるようですが、こちらは減税になります。子育ての支援は国全体を挙げた重要な政策であり、労働の分野でも育児介護休業制度の拡充などが進められていますが、税務面での対応も進められるようです。

 

 近日中にこの報告書が公表されることになると思いますので、現物が公表されましたら、また取り上げたいと思います。

 

(大津章敬)

ベンチャー企業が成長過程で必ずぶつかる人材の問題

 今日の日経新聞ベンチャー面に「新興企業の8割『経営人材不足』3市場対象の調査」という記事が掲載されていました。これはリクルート・エックスが新興3市場の上場企業に対して行ったアンケート結果を紹介した記事でしたが、それによれば経営人材の不足感があるという回答が8割近くを占めたそうです。私もあるベンチャー企業の人事労務顧問を、その会社の創業2年目、従業員数が5名というときから受託させて頂いていますが、その会社でもこの人材の問題が会社の成長を止めてしまった時期がありました。


 この会社の社長は非常に優秀な研究開発者であり、新しい市場を作ってしまうような革新的な商品を自ら開発し、会社を大きくしてきました。しかし、社長1人で企業経営のすべてを仕切って、引っ張っていくというスタイルはいつか必ず限界を迎えます。通常は従業員が10人くらいになると、財務や人事など社内のマネジメントを任せられる人材が必要になる時期がやって来るのではないでしょうか。この会社でも研究開発職と同時にそういったマネジメント人材を採用したのですが、なかなかうまく行きません。ベンチャー企業の総務・財務というポジションは非常に守備範囲が広い上に、柔軟な対応が求められるという難しい職務ですから、適任の人材はなかなか労働市場にはいないのです。この会社の場合は、社長の生業から、組織としての企業に生まれ変わるこのタイミングで、本当に人材の問題に悩まされました。その後数年掛けて、この会社はそうした問題を乗り越え、新たな大ヒット商品を開発し、人の面も資金の面もかなり安定しました。今は客観的に見ても非常に強い会社になっています。今になって振り返ってみると、あのときに優秀な経営人材が採用できていれば、この会社はもっと早く成長することができただろうと思います。もっともあの苦しみがあったからこそ、社長の現在のマネジメントスタイルが確立されたのも間違いありません。一方で、税理士や社労士はこういった環境にあるベンチャー企業に対し、もっと積極的な支援を行い、その成長を後押ししていかなければならないとも思います。


 ちなみに記事とは関係ありませんが、この調査は対象企業577社のうち、回答はたったの67社。こんな少ないサンプル数の調査でも視点が良ければ日経も取り上げるのだなぁと感じました。


(大津章敬)