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経営者が認識すべきリーダーシップ論「自己啓発意識の醸成」

 「企業は人なり」と言われますように、多くの企業で、社外研修やOJT(On the Job Training)など、様々な教育活動に力を入れておられます。ところが、いくら企業側が教育活動に力を入れたとしても、当の本人に、積極的に取り組りむ意欲が無ければ、いくら投資をしても好ましい成果を出すことは難しいといえます。せっかくの投資(研修費用、参加時間、参加の労力)がムダになっていることも決して少なくありません。


 そう考えますと、我々が教育活動をする上で、まずもって確認しておかなければならないことは、教育を受ける本人がどの程度「自己の成長」を願っているか、どの程度「自らの能力や意欲」を高める意識があるか、すなわちどの程度の「自己啓発意識)があるかという点において、しっかりと見極めておく必要があるということです。実際に、我々中小企業の現状は、研修などの教育活動に力を入れてはいるものの、社員一人ひとりがこうした意識を十分持ちえることが出来ず、結果として「やらされ」意識となり、それ故思うような成果を上げることができていないということがいかにも多いといえます。故に、社員教育に関しては何よりもまして、「自己啓発意識の醸成」という点に重点を置いた取組みがなされなければいけないといえます。


 それでは、社員一人一人に自己啓発の意識を持たせ、期待する行動を起こさせるためにはどうすれば良いのでしょうか?それには、自らを高めたいという欲求」を、何より強く持たせることです。欲求とは、「有るべき姿」と「現状」のギャップを埋めたいと思う心情です。したがって、欲求を持たせるためには、


○自分の有るべき姿(憧れ、目標)を明確に意識させる
○それとは異なる「現実の自分」を正しく認識させる


ことが何より必要となります。


 しかし、こうした「欲求」を持たせるだけで、期待する行動を起こすことができると断言するのはいささか乱暴であります。例えこうした「欲求」を持ちえたとしても、その「欲求」が行動に結び付くほど「強烈な欲求」ではなかったり、どのように行動に移せば良いのかわからないなどという状態では、行動に至ることは難しいといえます。したがいまして、社員に期待する行動を促進するためには、上司や周囲の方々の温かいサポートが必要になってくるのです。


 サポートとは、社員の行動様式が革新しやすい状況を作り出すことです。すなわち、


 ○欲求水準を“不断に高い状態”に維持させるような働きかけ
 ○その欲求を充足させるための方法を、“具体策”として明確にする


ことであります。


 人間の成長は、その人の意識の問題です。多くの知識や技能を与えても、受け入れるだけの「器」が無ければ、零れるだけです。何よりも、受け入れる「器」を広げる(=動機付ける)。これこそ、教育活動を行う上で我々が最も配慮しなければいけないポイントであります。

労働基準法における「管理監督者」の範囲

 昨日ご紹介した「神代学園ほか事件(東京高裁平成17年3月30日)」には、労働基準法第41条における管理監督者の範囲という、もう1つ大きな論点がありました。世間では「課長にすれば残業代が不要」などと言われることがありますが、その根拠とされるのが労働基準法第41条に言うところの管理監督者への労働時間に関する法規制の適用除外規定です。


 この管理監督者の範囲の問題は、時間外手当支給の取扱いが変わるという点から非常に重要な課題となっていますが、課長というような役職名ではなく、その者の勤務状態などの実態を見て判断され、具体的には以下の3点を充足しているかで判断が行われます。
1)経営に関する決定に参画する権限または労務管理に関する指揮監督権限がある
2)出退勤を始める勤務時間について自由裁量権がある
3)一般従業員と比較し、その地位と職責にふさわしい処遇を受けている


 現実の労務管理の状況を見た場合、以上の3要件の充足というのは実務上、非常に困難であるというのが実態ではないでしょうか。特に2)の要件は非常に厳しく、これを厳格に判断するとすれば、わが国の管理職の90%以上はこれを満たさないのではないかとさえ思えます。最近、マクドナルドの店長が会社を相手に時間外手当の支払いを要求する訴訟を起こしたというニュースが報道されていましたが、この提訴もこの管理監督者の範囲がその論点となっています。


 さて、この問題に関し東京高裁は今回、以下のように判事し、労働者側の請求を認めた上で時間外手当の支払いを命令しています。



「原告ら3名はいずれもタイムカードにより出退勤が管理され(中略)、原告が経営者である被告と一体的な立場において労働時間、休憩および休日等に関する規制の枠を超えて活動することを要請されてもやむを得ないものといえるほどの重要な職務上の権限を被告から実質的に付与されていたものと認めることは困難である。(中略)以上によれば、時間外手当支給の対象外とされる管理監督者に該当する旨の被告および被告学園の主張は採用することができない」




 今後、こうした事件が多く報道され、認知が進むにつれ、同様の請求は増加することでしょう。これまで労使間での暗黙の了解に基づき、積極的に触れられることがなかった論点ですが、今後は多くのトラブルを引き起こす火薬庫になっているように思えてなりません。今後行われるホワイトカラーエグゼンプション制度導入の議論により、前向きな解決が進むことを期待したいと思います。


参照条文:労働基準法第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
 この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
1.別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
2.事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
3.監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの


(大津章敬)

残業禁止命令に違反して行われた残業に対する割増賃金支払義務

 今年の3月30日に東京高裁で下された労働時間に関する判決(神代学園ほか事件)は、なかなか興味深い内容を含んでいますので、ここでそのポイントをご紹介したいと思います。


 この判決にはいくつかの論点があるのですが、その中からここでは「残業禁止命令に違反して行われた残業に対する割増賃金支払義務の有無」という点を見ることとします。この事案では労働組合と会社の間で36協定締結に関する交渉がまとまらない状態において、会社が従業員に対し、1)朝礼等の機会および役職者を通じて繰り返し、36協定が締結されるまでの残業禁止という業務命令を出した上で、2)残務がある場合には役職者に引き継ぐことを命じ、徹底していました。このような状況下において、業務命令に反して行われた残業について、労働者側が割増賃金の支払いを要求していたのですが、東京高裁は以下のように判事し、その請求を棄却しました。



「賃金(割増賃金を含む。以下同じ)は労働の対償であるから、賃金が労働した時間によって算定される場合に、その算定の対象となる労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下にある時間、または使用者の明示または黙示の指示により業務に従事する時間であると解すべきものである。したがって、使用者の明示の残業禁止の業務命令に反して労働者が時間外または深夜にわたり業務を行ったとしても(中略)賃金算定の対象となる労働時間と解することはできない」



 特に今回の事件では36協定未締結という状況であり、この残業禁止命令は労働者に時間外労働をさせない法的義務を履行するためのものであったこと、そして残務がある場合には役職者に引き継ぐという実務的な対応まで命令し、徹底していたことが決め手になったと考えられます。よってある意味では特殊な要素があることは否めませんが、労働時間の大原則は使用者からの業務命令に基づくものであるということを確認している点は実務を行う上においても、重要なポイントとなるでしょう。時間外労働および休日労働を行う際の申請および許可プロセスについて、問題がないか確認することをお勧めします。


(大津章敬)

労働契約法 報告書に見る注目事項[番外編 変更解約告知]

 現在、roumu.com blogで連載を行っております「労働契約法 報告書に見る注目事項」ですが、その中の[その8 雇用継続型契約変更制度]において、変更解約告知を取り上げました。読者の方よりこの内容に関するご質問を頂きましたので、今回は変更解約告知についてご説明したいと思います。


 変更解約告知とは、これまでの労働契約を一旦解消させ、同時に新たな労働契約の締結を相手方に打診するものです。使用者が従業員へ申し入れ、従業員がこの新たな契約への変更に応じなかった場合には、結果として労働契約は終了となり、当該従業員は解雇されるということになります。


 変更解約告知は、「ドイツでは労働契約上、職種や勤務場所が特定されることが多いので、それらの変更(主として配転)」に用いられることが多い(菅野和夫「労働法」P471)とのことですが、日本ではあまり立法的な手当がされていないため、馴染みが薄い制度ではないでしょうか。しかし実際に、この点に関して紛争となった事件がありますので、そのいくつかを見てみることにしましょう。
■スカンジナビア航空事件(東京地判 H7.4.13)
 以下の要件を満たした場合には、変更解約告知も有効であるとされた。
・労働条件変更が会社にとって必要不可欠
・上記必要性が、労働者が受ける不利益を上回る
・変更解約告知が、拒否した労働者を解雇するに足りるもの
・解雇回避努力がなされている


■大阪労働衛生センター第一病院事件(大阪高判 H10.8.31)
 使用者側に絶大な権力を持たせる結果となる当該制度を認めることは、日本の雇用慣行に馴染まない。解雇については整理解雇の要件と同レベルの厳格さが要求されるべき。(変更解約告知は無効)


 上記2つの裁判例は、変更解約告知に関して判断が下された有名な事件です。とはいえ日本においては、下段大阪労働衛生センターの見解が示すように、変更解約告知の適用に関してはどちらかといえば消極的で、それが故に未だ十分な議論がなされていないというのが現状です。変更解約告知の解釈について危惧される点を挙げれば、これを有効とすると、拒否した労働者は即解雇という大きな弊害がもたらされる危険性があるということです。契約変更の申出後、その是非が問われる間という、この間のいわば空白の期間を埋めるべく登場したのが冒頭に登場した雇用継続型契約変更制度というものです。これは労働者がその身分関係を維持しつつ、司法の判断を仰ぐことが可能な制度となっています。


  雇用継続型契約変更制度の新設に伴い、今後、変更解約告知に関するより突っ込んだ議論がなされることが期待されます。


(労働契約チーム)

労働契約法 報告書に見る注目事項[その4 採用内定]

 わが国では新規学卒者を中心に就労開始前に「採用内定」という段階を経ることが一般的となっています。この採用内定者という身分は、就職活動の早期化の影響から1年近くという長期間になる場合が少なくありませんが、法律上はあいまいな立場であり、内定取消などの扱いについては、これまで判例解釈に頼ってきました。今回の「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」報告では、その点について、立法上でルールを定める方針が述べられてます。


□採用内定と労働基準法の関係
 採用内定期間中における労働基準法第20条(解雇の予告)の適用を除外する。


□留保解約権の明文化と採用内定取消
 採用内定に際して留保解約権の存在とその事由が書面で明示されている場合には、その事由に基づく留保解約権行使による採用内定取消については、権利の濫用に当たらず有効であるものとする。但し、当該留保解約事項の内容が、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的である必要がある。また、採用内定当時に使用者が知っていた事由および知ることができた事由による採用内定取消は無効とすべきである。


 内定取り消しに関する重要判例として大日本印刷事件があります。この中で最高裁は内定者について、「解約権留保付であるとはいえ、卒業後の就労を期して、他企業への就職の機会と可能性を放棄するのが通例であるから、就労の有無という違いはあるが、採用内定者の地位は、一定の試用期間を付して雇用関係に入った者の試用期間中の地位と基本的に異なるところはない」と判示しています。これにより今では、採用内定者を労働者に準ずる者として保護するため、採用内定者と使用者との間には解約権留保付労働契約が成立しているという考え方が主流となっています。その上で、解雇予告の除外について、「試みの試用期間中の者については14日を超えて引き続き使用されるまでは同条の適用がないこととの均衡がとれていない」とする報告書の内容は納得性が高いと思われます。


 さらに今回の労働契約法の制定の大きな目的の一つである紛争予防への対応としての書面明示を求める傾向がここでも現れています。立法後の各社の実務面の課題としては、解約事由の具体的な検討や、採用関連書類の整備が重要となってくるでしょう。また、解約権留保付労働契約は、書面による採用内定通知の交付と誓約書の提出があいまって成立するとの考え方が主流ですが、標準的手順に合致しない中途採用も含めて自社の採用手続手順を見直す必要が出てくるかもしれません。





参照条文:
労働基準法第20条(解雇の予告)
 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
2 前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
3 前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。


(労働契約チーム)

労災保険未加入事業主に対する費用徴収制度が11月より強化

 11月1日から労災保険の未加入事業主に対する費用徴収制度が強化されることとなりました。これにより、事業主が労災保険の加入手続きを怠っていた期間中に労災事故が発生した場合、遡って保険料を徴収する他に、労災保険から給付を受けた金額の最大100%を事業主から徴収することになります。


[費用徴収の適用となる事業主]
1)労災保険の加入手続について行政機関から指導等を受けたにも関わらず、手続を行わない期間中に業務災害や通勤災害が発生した場合
 →事業主が「故意」に手続を行わないものと認定し、当該災害に関して支給された保険給付額の100%を徴収
2)労災保険の加入手続について行政機関から指導等を受けてはいないものの、労災保険の適用事業となったときから1年を経過して、なお手続を行わない期間中に業務災害や通勤災害が発生した場合
 →事業主が「重大な過失」により手続を行わないものと認定し、当該災害に関して支給された保険給付額の40%を徴収
※療養開始後3年間に支給されるものに限られ、また療養(補償)給付及び介護(補償)給付は除かれます。


 詳細については以下の厚生労働省ホームページをご参照下さい。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/09/h0920-1.html


(大津章敬)

これは面白い!平成17年版国民生活白書

 本日、経済産業省より、平成17年版 国民生活白書「子育て世代の意識と生活」が発表されています。人事労務管理実務者としては、一通り押さえておきたい内容ですが、そうでなくともなかなか面白そうな、週刊誌っぽい表題の文章が並んでいます。実際に読んでも面白いですから、是非話のネタにお読み下さい。
表題例:
□結婚するつもりのない人は少ない
□自由な時間を手放したくないと考えている未婚者が多い
□女性は結婚相手に対して経済力を重視している
□子どものいない夫婦は子育てに必要な年収を高く見込みすぎている
□男性の実質所得はやや減少している/女性の実質所得は緩やかに上昇している
□独身男性には低所得者が多い
□パート・アルバイトは既婚女性だけでなく若年層男女においても今や主要な働き方に
□大学教育への平均投資収益率は低下している などなど


http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h17/01_honpen/index.html


(大津章敬)

派遣先による派遣労働者からの個人情報収集

 先日、大手外資系企業が、テロ対策という目的の下に派遣労働者から国籍、旧姓、学歴、逮捕歴等を記載した個人情報の提供を求めるということがありました。これに関して社団法人日本人材派遣協会が厚生労働省に対し、「特定行為」に当たり労働者派遣法違反の可能性があるとして照会文を提出。その結果、厚生労働省より違法の恐れがあるという回答がなされました。
 
 労働者派遣法第26条第7項によると、「派遣契約に基づく労働者派遣に係る労働者を特定する行為をしないように努めなければならない」とされており、これを受けて派遣先事業主が構ずべき措置に関する指針の一部改正第2の3において「派遣労働者が自らの判断の下に派遣先企業に対して派遣就業期間中の履歴書の送付を行うことは、派遣先によって派遣労働者を特定することを目的とする行為には該当せず」と規定されています。つまり、「特定行為」は紹介予定派遣を除き、派遣法において原則禁止とされており、唯一許される例外が派遣労働者自らの意思による個人情報の開示ということになります。
 
 今回のケースでは、調査の結果で派遣契約の是非を判断することは、上述の「特定行為」に該当するとされ、また雇用契約のない派遣先が派遣労働者との間で書類、承諾書等のやりとりをすることは雇用契約の成立とみなされ、労働者供給事業にも該当しかねないという見解が明らかにされました。ちなみにこの場合、労働者供給事業に該当することになると派遣先・派遣元の双方に対して職業安定法より罰則が適用されます(職安法第64条第9号)。一方、個人情報保護法との兼ね合いから言えば、派遣法上に直接的な規定はないものの、個人情報は原則として派遣元を通じて収集すべきであり、また収集する個人情報も就業管理上必要なものに限るとされました。派遣契約においては上記の通り、一般的な雇用契約に比べ労働者からの個人情報の収集方法等、異なる点が多々あります。個人情報保護の気運の高まりに伴い、再度一般的な派遣契約について見直しをされてはいかがでしょうか。


参照条文:
労働者派遣法第26条第7項(契約の内容等)
 労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。


職業安定法第64条第9号
第64条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
(中略)
9.第44条の規定に違反した者


職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)
 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。


(武内万由美)

NEET(ニート)とjob cafe(ジョブカフェ)

 8月29日、文部科学省が「NEET」に対して、来年度予算の概算要求に約7億4千万円を盛り込むというニュースが報道されました。社会問題として深刻化している、就職も進学も職業訓練も何もしていない「NEET」に対して、将来の目標や職業意識を学生に持たせるためのキャリア教育を重点的に支援するというのが今回の目的であるようです。この「NEET」という言葉、最近新聞やテレビでも頻繁に登場していますが、いざ何?と聞かれたら答に困ってしまうという方もいらっしゃるかも知れません。そこで今回は「NEET」と、それに関連する「job cafe」についてご紹介したいと思います。


 「NEET」の語源は「Not in Education Employment or Training」、具体的には就職も進学も職業訓練も何もしていない10代から30代の若者を総称する言葉として使用されています。よく耳にする横文字に「フリーター」というものがありますが、「フリーター」と「NEET」との違いは、
1)「フリーター」は働いているが「NEET」は働いていない。
2)「フリーター」は、労働日数や労働時間に応じて各種社会保険等に自ら加入しているが、「NEET」は無職ですから通常、親の保険の扶養に入り、国民年金も保険料は親が負担しているか、未納を続けているかのどちらかである。


 また、「NEET」は「失業者」でもありません。「失業者」とは、
1)仕事がなく、月末1週間(調査期間)にまったく仕事をしていなかった。
2)仕事があればすぐにでも働ける状態にある。
3)調査期間に求職活動や事業開始の準備していた。
以上の3点すべてに該当して、初めて「失業者」となります。「NEET」は求職活動や起業のための準備をしていないので、「失業者」の定義にも当てはまらないのです。


 ただ、「NEET」と「失業者」は関係がないとは言えません。それは、一度就職をして、会社を辞めて失業者になり、次第に働く意欲が低下して、「NEET」になっていくケースもあるからです。例えば退職後、次の職場を探し就職活動をしていたが、不採用が続き、落ち込み徐々に就業意識が低下していくといった場合などが考えられます。世の中に希望を見出せなくなり、親や家族の収入をあてにして生活を依存していき、就職活動や勉強、職業訓練を行わなくなってしまうのです。事実、「なぜ就職活動等をしないのか」という質問に対して、「仕事をうまくやる自信がない」「希望どおりの就職先がみつからない」という仕事に対する不安や諦めの意見と、「ただなんとなく」「人付き合いが苦手、嫌いだから」という少し自信のない、言い方によっては甘えた考えの意見が多く見られています。「NEET」は働く意欲や明確な目標が持てず、無職の状態にある若者達なのですが、そこには、人格形成に係る家庭環境、学校環境、その他の周辺の環境も要因としてあるように思えます。


 総務省の労働力調査などによると15歳から34歳のニートは平成16年では64万人にのぼるとされています。統計的に中卒者、高校中退者、高卒者において「NEET]比率が高いとされています。これらの状況を踏まえ労働力不足を懸念した政府が平成15年に「若者自立・挑戦プラン」を策定し、中核的施策として打ち出されたのが「ジョブ・カフェ」です。これは若者の能力向上と就職促進を図るため、若年者が雇用関連サービスをまとめて提供する施設です。カフェに立ち寄る感覚で気軽に入って、気軽に就職に関する情報の提供を受けられたり、スタッフが疑問、質問に答えるといった支援を行っています。


 昔、子供達は、野球選手、お医者さん、パイロット、看護師さん等になりたい!!と目をキラキラ輝かせながら話していたものでした。つまり「夢」=「仕事」でした。それが今では、働くことが嫌である、つまり「夢」を持たない若者が急増しています。確かに働くことは辛いことも多いですが、それ以上の楽しみ、喜び、達成感が存在します。もっとこのことを今の若者に気付いてもらえるように、社会人として将来の日本を担う若者達に向けてアクションを起こさないといけない時期に来ているのかも知れません。


(赤田亘久)

外国人労働者を雇用する際の基本ポイント

 先日、「初めて外国人の方に働いてもらおうと思っているんだけど、気をつけなければいけないこと、何がある?保険は入れなきゃいけないの?」という問合わせを受けました。外国人労働者を雇用する際に、不法滞在、不法就労、強制送還という明らかに悪意のある違法行為でなくとも、見逃してしまっている点はありませんでしょうか。今回は外国人雇用における基本的な注意事項として、以下の2点についてご説明させていただきます。
1 まずは就労可能かどうかを確認
 外国人の方は、「出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)」で定められている在留資格の範囲内において、日本国内での活動が認められています。有効なパスポートを所持し、有効な在留期間内であり、在留資格の範囲内であるとき、就労することが可能となります。これら在留資格や在留資格はパスポートの「上陸許可証印」、「外国人登録証明書」等により確認できます。これらの書類は必ず確認することが必要です。 もし、これらについての十分な知識を有せず、就労が認められない者を雇用してしまった場合は、外国人労働者本人のみならず、雇用した側にも「不法就労助長罪(3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金)」(入管法第73条の2第1項)が適用されることもありますので、十分な注意が求められます。
 
2 労働関係法令の取扱及び労働保険・社会保険等保険関係は日本人と同一
 労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などについては、外国人労働者についても日本人同様に適用されます。たとえば、労働基準法第3条は、労働条件面での国籍による差別を禁止しています。従って、賃金等労働条件を外国人であることを理由として低賃金、長時間労働等日本人と比べて低い労働条件とすることは、もちろん許されません。


 その他各種保険の適用についても、外国人ということを理由とした適用除外要件は何もありません。社会保険、雇用保険ともに所定の労働時間以上の勤務をする場合には加入させる必要があります。つまり、正社員として雇用する場合は、当然被保険者となり、パート・アルバイトという短時間労働者であっても、適用要件を満たせば被保険者としなければなりません。今年の6月頃、社会保険庁が外国語学校に対して、保険加入の一斉調査を行ったというニュースもありましたが、何らかの調査が入り、未加入が発覚すれば、原則2年間遡っての保険料負担という事態になります。そのようなことになれば、金銭面の負担はもとより、雇用関係自体がこじれかねません。正社員(常用雇用)として雇用する場合は、保険加入は本人の選択によるものではなく、条件を満たせば当然に適用されることを十分説明し、納得させなければなりません。そうでなければ適用除外となる条件での雇用契約とすることが必要です。
 
 外国人雇用というと何か特別のことのように考えてしまうかもしれませんが、1でご説明した点以外の雇用に関する諸条件については特別日本人とかわるところはありません。具体的な事例については、最寄の入国管理局、職安等にご確認のうえ、適正な雇用をしていただきたいと思います。





参照条文等:
□労働基準法第3条
 使用者は労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならない。


□在留資格の種類
①在留資格に定められた範囲で就労が認められる在留資格
 教授、芸術、宗教、報道、経営、法律、技術、企業内転勤など。その他「特定活動」という在留資格においては、ワーキングホリデー等許可の内容によっては就労が認められるものあり。
②原則として就労が認められない在留資格
 文化活動、短期滞在、留学など
③就労活動に制限がない在留資格
 永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者


□入管法第73条の2第1項
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
  一  事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
  二  外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
  三  業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者


(労働契約チーム)