依然として増加傾向にある企業における「心の病」

依然として増加傾向にある企業における「心の病」 先日、財団法人社会経済生産性本部より「『メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケート調査結果」という資料が発表されました。これは全国の上場企業2,368社を対象にメンタルヘルスの状況および取り組みについて調査したもの。2002年、2004年、2006年に続き、4回目の調査になりますが、前回に引き続き依然として増加傾向であることが明確になっていますので、そのポイントをご紹介しましょう。


心の病の増減傾向
 最近3年間における「心の病」は56.1%の企業が「増加傾向」と回答しました。前回調査の61.5%より低下したものの、依然として半数を超える高い水準に留まっています。
 2008年:増加傾向(56.1%) 横ばい(32.0%) 減少傾向(4.5%)
 2006年:増加傾向(61.5%) 横ばい(29.4%) 減少傾向(1.8%)
 2004年:増加傾向(58.2%) 横ばい(25.0%) 減少傾向(1.9%)
 2002年:増加傾向(48.9%) 横ばい(24.8%) 減少傾向(3.5%)


心の病の最も多い年齢層
 次に心の病の最も多い年齢層の質問については、年齢別にみると約6割(59.9%)の企業が30代に心の病が最も多いと回答しています。この傾向は、前回の調査と似通っています。
 2008年:10~20代(10.8%) 30代(59.9%) 40代(21.9%) 50代以上(3.0%)
 2006年:10~20代(11.5%) 30代(61.0%) 40代(19.3%) 50代以上(1.8%)
 2004年:10~20代(10.4%) 30代(49.3%) 40代(22.0%) 50代以上(5.6%)
 2002年:10~20代(13.1%) 30代(41.8%) 40代(27.0%) 50代以上(9.6%)


健康づくりで力を入れている施策
 健康づくり施策の中で力を入れているものを回答では、「定期健康診断の完全実施」(71.7%)、がトップとなったが、次いで「メンタルヘルスに関する対策」(63.9%)が挙げられており、メンタルヘルスに関する施策に力を入れる企業が増加していることがわかります。なお、この数値は2002年の2倍近い値となっています(グラフはクリックして拡大)。
 定期健康診断の完全実施    71.7%
 メンタルヘルスに関する対策  63.9%
 定期健康診断の事後措置    58.4%
 人間ドックの実施、充実    20.1%
 職場の喫煙対策        20.4%
 健康教育、相談指導      18.6%
 職場環境の整備           0%


取り組みを通じて期待している内容
 メンタルヘルス施策を通じて企業が期待している主な内容は、不調者の早期発見、不調者に適切な対応ができることなどがあがっています。
 不調者が早期に発見できる         78.4%
 不調者に適切な対応ができる        71.0%
 休職者の復職が適切に支援できる      57.2%
 従業員の活力が高まり、生産性が向上する  51.7%
 従業員の健康が各職場で常に尊重される   39.8%
 労災、事故等が未然に予防される      38.3%
 組織・仕事の体制でストレスの対処を図れる 37.9%
 職場で何でも話し合える風土が出来る    32.0%
 職場で互いに学び、理解し合う風土が出来る 23.%
 その他                  2.9%


 メンタルヘルス対策については、以前は事後の対策が中心となっていましたが、から考えても、事前の予防に力を入れる企業が増えていることが分かります。今後、この事前の対策の効果が表れてくることが1の結果に反映されることが期待されているといえるでしょう。



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参考リンク
社会経済生産性本部「『メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケート調査結果」
http://activity.jpc-sed.or.jp/detail/mhr/activity000873.html


(宮武貴美)


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