[ワンポイント講座]社宅を貸与した際の社会保険の取扱い

 2009年2月18日のブログ記事「社宅を貸与した際の労働保険料の取扱い」では、社宅を従業員に貸与する際の労働保険料の取扱いを取り上げました。今回はこれに引き続き、社宅を貸与する際の社会保険の取扱いについてお話したいと思います。


 そもそも社会保険でいうところの「報酬」は、臨時に支給するものや3ヶ月を超える期間ごとに支給するものを除いて、金銭で支給するか現物で支給するかを問わず、会社が労働の対償として支払うすべてのものを指しています。そのため、社宅の貸与については現物給付として報酬に含める必要があり、金銭に換算した額を報酬としてみることになります。具体的には、協会管掌健康保険の場合は、各都道府県の社会保険事務局長が定めた標準価額(参考リンクを参照)に基づいて計算することになります。ポイントとしては、「社宅使用料」と「家賃」との比較ではなく、「社宅使用料」と「住宅の標準価額」との比較で判断することです。なお、組合管掌健康保険の場合は、各健保組合が地方ごとの時価によって定めた金額を報酬の価額とすることになっています。以上の基礎を押さえた上で、今回のテーマである社宅を貸与した際の取扱いに関し、以下の2パターンを考えてみましょう。
従業員からの社宅の費用を徴収していないケース
 このケースの場合、標準価額により計算した額が報酬に該当することになります。例えば、東京の場合、1畳あたりの標準価額は1,360円(1ヶ月)であるため、社宅が10畳であれば、1,360円×10畳=13,600円を報酬としてみることになります。


従業員から社宅の費用を徴収しているケース
 このケースにおいては、標準価額と徴収金額との差額が報酬に該当することになります。例えば、先と同様のケースで、従業員から10,000円を徴収しているのであれば、13,600円-10,000円=3,600円を報酬としてみることになります。逆に徴収金額が20,000円など13,600円を超えていれば、社宅の貸与によって受ける利益はないことから、報酬としてみる必要はありません。


[関連法規]
健康保険法(現物給与の価額)第46条
 報酬又は賞与の全部又は一部が、通貨以外のもので支払われる場合においては、その価額は、その地方の時価によって、厚生労働大臣が定める。
2 健康保険組合は、前項の規定にかかわらず、規約で別段の定めをすることができる。



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参考リンク
社会保険庁「全国現物給与価額一覧表(平成20年4月1日現在)」
http://www.sia.go.jp/seido/iryo/g_kyuyo19.pdf


(福間みゆき)


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