[ワンポイント講座]36協定等労使協定締結時の周知の必要性

 早いもので3月となり、人事労務担当者にとって繁忙期に入ってきました。昇給に向けた人事評価に採用活動、春闘の対応や新入社員の受入れ準備など様々な業務が立て込んでいると思いますが、36協定や変形労働時間制の労使協定についても、年度単位で導入されている例が多く、この時期に対応することが必要です。そこで今週のワンポイント講座は、労使協定を締結した際の周知に関する留意点について取り上げてみましょう。


 労働基準法第106条1項は、労働基準法とこれに基づく命令の要旨、就業規則、労使協定、寄宿舎規則等についての周知義務を事業主に課しています。なお、「これに基づく命令」とは、労働基準法施行規則、年少者労働基準規則、女性労働基準規則、事業附属寄宿舎規程、建設業附属寄宿舎規則等のことを指しており、法令そのものではなく、法令が容易に理解できるようにまとめ、周知しておくことが求められています。


 周知というと、就業規則を周知しておけば問題ないだろうと考えてしまいがちですが、労使協定についても平成10年の改正により従業員に周知しておかなければならなくなりました。具体的には以下の協定が対象となります。
(1)労働者の貯蓄金の委託を受けての管理(労働基準法第18条2項)
(2)賃金の一部を控除しての支払い(労働基準法第24条1項但し書き)
(3)1ヶ月以内の期間の変形労働時間制(労働基準法第32条の2第1項)
(4)フレックスタイム制(労働基準法32条の3)
(5)1年以内の期間の変形労働時間制(労働基準法32条の4第1項)
(6)1週間単位の変形労働時間制(労働基準法32条の5第1項)
(7)一斉休憩原則の適用除外(労働基準法34条2項但し書き)
(8)時間外・休日労働(労働基準法36条1項)
(9)事業場外労働のみなし労働時間(労働基準法38条の2第2項)
(10)一定の専門職についての裁量労働制(労働基準法38条の3第1項)
(11)計画年休制(労働基準法39条5項)
(12)年休日の賃金の標準報酬日額での支払い(労働基準法39条6項但し書き)
 なお、上記に記載した協定以外の労使協定については、特に周知義務はありません。


 周知を行う際には、必ずしも労使協定そのものを交付する必要はありませんが、協定の内容を網羅的に周知できるように対応しておく必要があります。また、協定の内容に変更があった場合についても、変更後の内容を従業員に周知させる必要があります(平成11年1月29日 基発第45号)。なにかと忙しい時期ではありますが、労使協定の期間に空白期間が生じないように締結を行い、併せてイントラネットに協定の内容を掲示するなどして、従業員への周知を忘れずに行っておきましょう。


[関連法規]
労働基準法 第106条(法令等の周知義務)
 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第18条第2項、第24条第1項ただし書、第32条の2第1項、第32条の3、第32条の4第1項、第32条の5第1項、第34条第2項ただし書、第36条第1項、第38条の2第2項、第38条の3第1項並びに第39条第5項及び第6項ただし書に規定する協定並びに第38条の4第1項及び第5項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。
2 使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によって、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。



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参考リンク
奈良労働局「法令等の周知義務 (第106条)」
http://www.nararoudoukyoku.go.jp/03roudou/01kizyunhou14.html


(福間みゆき)


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