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パートタイマーが扶養家族にこだわる理由

 前回、大熊はパートタイマーとの雇用契約時の注意点についての説明を行った。それに引き続き、今回はパートタイマーの雇用でもっとも特徴的な扶養に関することについて説明することとした。



大熊社労士:
 パートタイマーの雇用契約時の注意点について説明させて頂いたとおりですが、実際にパートタイマーを雇用したときに、よく現場が困ってしまうことがあります。それはどのようなことかお分かりになりますか?
宮田部長宮田部長:
 そうですね、家庭の事情でパートタイマーをしている方が多いでしょから、家族の急病や家事などで突然休むといったことがあるのではないでしょうか。
大熊社労士:
 そうですね。一般的には正社員に比べて、そうした突然の欠勤は多いので、シフトの調整に手間取ることが多いのは事実ですね。しかし、その頻度の多少はともかくとすれば、欠勤のことは正社員にも同じようなことは言えます。それ以外に思い当たるところはありませんか?
福島照美福島さん:
 よろしいでしょうか?私は収入のことではないかと思います。夫の扶養家族の範囲で働きたいというパートタイマーの方が多く、年末になるとそのやり繰りで現場が困っているということを聞いたことがあります。
大熊社労士:
 さすが福島さん、そのとおりです。後で詳しく説明しますが、扶養家族の範囲で働くということは、簡単にいうと一定の年収以下で働かなければならないということです。このことが影響して、本当は繁忙期で一番働いて欲しい年末に働けないという事態になり、現場が困って泣かされるという話は御社に限らず、多くの企業でよく聞かれます。もちろん、この扶養家族の範囲にこだわらない方であれば、問題はありません。
宮田部長:
 そうなのですか。私の妻はずっと専業主婦でしたので、そのようなことにはまったく関心がありませんでした。その扶養家族の基準とはどういうものなのですか?
大熊社労士:
 被扶養者の範囲内の基準として、一般的に「103万円基準」「130万円基準」があるといわれています。まずは「103万円基準」から説明してみましょう。所得税の関係で配偶者控除が受けられる配偶者の年収基準は、給与所得控除額(最低65万円)プラス基礎控除(38万円)の合計103万円、これ以下となります。これがいわゆる年収103万円基準と呼ばれるものですが、もう少し具体的にみてみましょう。例えば、1月から11月までに合計100万円の収入があったとしましょう。そうすると12月には3万円分しか働けませんので、時給750円のパートタイマーであれば40時間、普段の約3分の1程度しか働けません。単純に臨時アルバイトを雇って済むのであれば良いのですが、その人に頼っているような業務の場合は困ってしまいます。
服部社長服部社長:
 大熊さんが採用のところでも計画性を持ってパートタイマーを採用しなければならないとおっしゃっていましたが、そのことですね。
大熊社労士:
 はい、パートタイマーの労働時間はしっかりとした計画を持った上で設定しなければなりません。これには残業分も考慮しなければなりませんので、社員以上にスケジュール管理が必要といえるでしょう。
福島さん:
 そのスケジュールの立て方としては、まず年間総労働時間数を計算して、次に繁忙期に必要な労働時間数を予定し年間総労働時間数から差し引く。残った時間数を他の期間に振り分けるということで良いのでしょうか。
大熊社労士:
 すばらしい、私の秘書になってもらいたいくらいですね。さらに残業がある場合の割増賃金分や賞与を支給する場合はその分を考慮しなければなりませんので、労働時間数はさらに短くなるでしょう。したがって、現場とよく相談し、余裕をもって勤務スケジュールを組むことがポイントとなります。
宮田部長:
 なるほど、よく分かりました。もう一つの基準について教えていただけますか?
大熊社労士大熊社労士:
 はい、次は年収「130万円基準」についてご説明いたしましょう。健康保険の被扶養者として認定されるためには、対象者の年収が130万円未満であることが一つの要件とされています。ただし、ここで注意しなければならないのが、正社員の勤務時間数及び勤務日数の4分の3以上勤務している場合は、パートタイマーであっても健康保険の被保険者となるという点です。基準は年収だけではないということです。例えば、時給750円のパートが週30時間(1日7.5時間)、週4日(月換算17日)働くとすると、月収は7.5時間×17日×750円で95,625円、これを年収に換算すると95,625円×12月で1,147,500円となり、年収では130万円未満ですが一定以上の労働時間数があるため被扶養者ではなく、被保険者本人の扱いとなります。
福島さん:
 なるほど、そうなのですか。実は“130万円”と“労働時間”の2つの要件で少し頭が混乱していましたが、よく理解できました。
大熊社労士:
 ちなみにここで更に問題を複雑にしているのが、家族手当の支給要件です。多くの企業では家族手当の支給対象について、所得税や健康保険の被扶養者であることを要件としています。そのため、配偶者であるパートタイマーがこの手当の支給停止を嫌って、年収のコントロールをすることになるのです。具体的な例をあげて説明しましょう。
[前提条件]
・夫の勤務する会社では配偶者手当20,000円が支給されている。その支給要件は健康保険の被扶養であること。
・パートタイマー(月収120,000円)が健康保険の被保険者本人となった。
[影響額]
夫の方に支給される家族手当の支給停止=
年額240,000円のマイナス
パートタイマーの健康保険料(介護保険あり)=月額5,564円、年額換算66,768円のマイナス
パートタイマーの厚生年金保険料=月額8,639円、年額換算103,668円のマイナス
 以上のように、家族の単位で考えると=年額410,436円の手取りが減少することになります。
福島さん:
 扶養家族の範囲内であれば、夫に家族手当が支給され、パートタイマーの保険料負担もなくなることを考えれば、扶養家族にこだわるのも無理はないですね。
大熊社労士:
 厳密には、社会保険料控除や将来もらえる年金額の増額などの細かな点について計算は行っておりませんが、現在の手取りがどうかということが最大の関心ですので現実的なものといえるでしょう。したがって、家族手当や時給の金額にもよりますが、一般的には年収130万円を超え180万円位の間は、逆に手取りが減るといわれています。
宮田部長:
 先生の説明で、パートタイマーがなぜ扶養家族にこだわるのかよく理解できました。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は「パートタイマーの扶養家族」について取り上げてみました。被扶養者の範囲内で働くことを希望しているパートタイマーの場合は、いずれにしても正社員以上に計画的に勤務スケジュールを組むことが必要となります。現場の責任者とよく相談し会社側の求める勤務時間と、パートタイマー側の希望する勤務時間との調整を図っておく必要があります。とにかく現場として困るのが、計画どおりに業務が進まないことでしょうから事前に双方の予定をつき合わせておくことが望まれます。また、子女の手が離れて働く時間の余裕ができた(扶養家族にこだわる必要がなくなった)パートタイマーには、労働時間の見直しの相談をしてみてもよいでしょう。労使双方の条件に食い違いがないよう人事担当者としては調整を図ってください。


[関連条文]
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_docframe.cgi?MODE=hourei&DMODE=CONTENTS&SMODE=NORMAL&KEYWORD=&EFSNO=1336



関連blog記事
2007年5月28日「パートタイマーとの雇用契約締結時はここを注意しましょう」
https://roumu.com/archives/54253639.html
2007年5月21日「パートタイマー募集にあたって、これだけは押さえましょう」
https://roumu.com/archives/54203815.html


参考リンク
タックスアンサー「所得税 配偶者控除」
http://www.taxanswer.nta.go.jp/1191.htm
社会保険庁「(健康保険)被扶養者(被扶養者とは?)」
http://www.sia.go.jp/seido/iryo/iryo07.htm
社会保険庁「(健康保険)保険について」
http://www.sia.go.jp/~yamaguchi/insurance/health01.htm
社会保険庁「健康保険・厚生年金保険適用関係届書・申請書一覧」
http://www.sia.go.jp/sinsei/iryo/index.htm
社会保険庁「定期的な被扶養者の認定状況の確認(検認)の実施について」
http://www.sia.go.jp/topics/2006/n0825.html


(鷹取敏昭)


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キャリアの行きづまり

 日々、社員は仕事を通じて能力を高め、成長しています。しかし、同じ会社に勤めていても、社員間で昇進の違いがあったり、仕事や会社に対する満足度が異なっています。キャリアに行きづまりを感じているときは、昇進が遅れていたり、仕事や会社に対して不満を抱えたりすることが多くなる傾向がありますが、このような状態では社員はいま勤めている会社で自分がどのようになってゆくのか先行きが見えない、あるいは期待がもてない状況になっていることが通常です。会社や仕事に対して心が離れている状況であり、このままでは社員が会社を去ることにもなりかねません。


 このような状態にある場合、会社としてはキャリア面談や研修といった制度を導入し、機能的に動くようにしておくことが求められます。しかし、制度を導入さえすればキャリア支援が万全という訳ではなく、本来的には仕事そのものの魅力向上や上司の対応力などがキャリアを開発していく上で重要になってきます。実際、自分のキャリアについて考える機会を設ける、上司との面談を行うだけではキャリアを伸ばしていくことは難しいものです。キャリアの源となるのは、仕事の中からの経験や人との出会い、新しい仕事といったものの積み重ねであることが少なくありません。こうした出会いや仕事からキャリアが形成されてくる部分が、キャリア支援制度よりもずっと重要なものになっているでしょう。


 すべての社員が新しい仕事に就けるという訳ではありませんから、いまの仕事をどのように設計するかが大きなウエイトを占めています。そのため、会社は社員がこのままの状況で仕事を続けていくことで、本当にキャリアの発達につながるのかを見直してみることが望まれるでしょう。以前「キャリアの停滞」で書いたように、社員の成長を止めている原因が会社にあるということも少なくないように思います。だからこそ、会社は社員にどのような仕事に従事させていくことがより効果的なキャリア形成につながるのかを考えてみることが望まれているのではないでしょうか。



関連blog記事
2006年11月4日「キャリアの停滞」
https://roumu.com
/archives/50782411.html


(福間みゆき)


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慶弔見舞金規程

慶弔見舞金規程 社員の結婚や出産、本人や家族の死亡などの場合に会社から支給する慶弔見舞金の基準について定めた規程のサンプル(画像はクリックして拡大)です。
重要度:★★★

[ダウンロード]
WORD
Word形式 keichou.doc(40KB)
PDFPDF形式 keichou.pdf(13KB)

[ワンポイントアドバイス]
 昨日ご紹介した出張旅費規程同様、就業規則整備を行う際、同時に作成を行うことが多い関連規程の一つ。社員の慶弔に関する統一的な取り扱いと事務の効率化のために基準を明確化しておくことが求められます。

(大津章敬)

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出張旅費規程

出張旅費規程 社員が出張を行なった際の旅費、日当、宿泊費などの取り扱いについて定めた出張旅費規程のサンプル(画像はクリックして拡大)です。
重要度:★★★

[ダウンロード]
WORD
Word形式 shucchou.doc(46KB)
PDFPDF形式 shucchou.pdf(21KB)

[ワンポイントアドバイス]
 就業規則整備を行う際、通常はこの出張旅費規程の整備も行います。規程の中では出張の定義や費用精算の手続き、出張期間中に休日がある場合や時間外労働の取り扱いなどを明確にしておきたいところです。

(大津章敬)

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正社員転換制度規程

正社員転換制度規程 パートタイマーから正社員への転換制度の取り扱いについて定めた規程のサンプル(画像はクリックして拡大)です。
重要度:

[ダウンロード]
WORDWord形式 seishain_tenkan.doc(28KB)
PDFPDF形式 seishain_tenkan.pdf(9KB)

[ワンポイントアドバイス]
 財団法人21世紀職業財団が平成17年9月に実施した「パートタイム労働者実態調査結果」によると、正社員転換制度が「ある」と回答した事業所は全体の47.3%になっています。平成13年の調査では46.4%であったことから、実態としては、制度の導入があまり進んでいないことが伺えます。

 そんな環境の中、先日改正パートタイム労働法が国会において成立しました。2008年4月に施行されるこの法律は、短時間労働者に対する適正な労働条件の確保や教育訓練の実施、福利厚生の充実などについて、通常の労働者との均衡の取れた待遇の確保を求めるものになっています。またこの中には、通常の労働者への転換の推進という内容も盛り込まれており、今後、パートタイマーから正社員への転換制度を設ける企業が増加することが予想されています。


参考リンク
厚生労働省「パートタイム労働法のあらまし」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/parttime1.html
財団法人21世紀職業財団「パートタイム労働者実態調査」
http://www.jiwe.or.jp/jyoho/chosa/h1709_parttime/index.html
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案要綱
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/166-5a.pdf

 

(福間みゆき)

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2006年の大企業年間賞与平均支給額 非管理職は1,576,821円・管理職は2,911,270円

2006年の大企業年間賞与平均支給額 先日、日本経団連より「2006年夏季・冬季「賞与・一時金調査結果」の概要」という資料が発表されました。これは日本経団連企業会員会社および東京経営者協会会員会社2,057社を対象に昨年実施された調査の結果。


 これによれば、非管理職の平均賞与支給額は、夏季794,052円(前年プラス4.0%)、冬季782,769円(前年比プラス3.8%)の年間1,576,821円、一方で管理職の平均賞与支給額は、夏季1,522,490円(前年比プラス4.0%)、冬季1,388,780円(前年比プラス4.8%)の年間2,911,270円という結果になっています。これはいずれも4年連続プラスで、過去最高の支給水準。大企業における賞与へのシフトを感じさせる結果となっていますが、こうした統計の中で管理職の調査データというのは結構珍しいので非常に興味深いところです。今年も昨年同様の年間4%程度の伸びとなれば、年間300万円の大台に到達します。中小企業に勤務する労働者との格差の大きさを感じずにはいられません。



関連blog記事
2007年5月25日「今夏の大企業賞与妥結額平均は938,555円(プラス2.77%)」
https://roumu.com
/archives/50979303.html
2007年5月9日「2007年夏季賞与は5年連続増加も伸び率は小幅に」
https://roumu.com
/archives/50965560.html
2007年2月12日「昭和45年から現在に至る我が国の賞与支給水準の推移」
https://roumu.com
/archives/50882853.html
2006年12月26日「都内労働組合の2006年冬季賞与は平均799,187円(2.42ヵ月)」
https://roumu.com
/archives/50832058.html


参考リンク
日本経団連「2006年夏季・冬季「賞与・一時金調査結果」の概要」
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/046.pdf


(大津章敬)


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専門職制度規程

専門職制度規程 これは特定の分野において高度な専門的知識・技術を有している従業員を専門職として任用し処遇するための規程サンプル(画像はクリックして拡大)になります。
重要度:

[ダウンロード]
WORDWord形式 senmonshoku.doc(26KB)
PDFPDF形式 senmonshoku.pdf(8KB)

[ワンポイントアドバイス]
 企業において資格制度を整備する際、どうしても管理職を中心にその設計を行うことになりがちです。しかし、社員の間で働き方の多様化が進んでおり、管理職を目指すだけでなくその分野のプロを目指すことを望む社員が増えてきています。そのため、キャリアルートのひとつとして専門職制度を導入する企業が増えています。管理職としてではなく、専門職として自らの専門性を高めることで会社に対する貢献を大きくするというキャリアも当然ありますので、これを積極的に認め、適切な処遇を行うことは重要な人事背策の一つということができるでしょう。もっとも、実務的にはその専門性の高さをどのように認定するのか、その専門性が陳腐化するリスクをどのように考えるのかといった解決すべき課題も少なくありません。

(福間みゆき)

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進路選択制度規程

進路選択制度規程 55歳など一定年齢に達した時点で、本人の意志に基づき、関連会社への転籍や早期退職などを含めた進路選択させる制度の運用に関する規程サンプル(画像はクリックして拡大)です。
重要度:

[ダウンロード]
WORDWord形式 shinro.doc(25KB)
PDFPDF形式 shinro.pdf(6KB)

[ワンポイントアドバイス]
 この制度は、一定年齢で自らのキャリアを選択させることで、個人のニーズにあった働き方を実現し、組織活性化を行うことを目的に行われるものです。また役職定年制度などと組み合わせ、人材配置の見直しやポスト不足対策としても機能させます。この制度のように社員に主体的なキャリア選択をさせる場合には、その該当年齢になって突然選択させるというのではうまく機能しないでしょう。こうした制度を成功させるためには、より早い段階でのキャリア教育を計画的に行っていくことが重要です。


関連blog記事
2007年5月25日「営業所長任期制度規程」
https://roumu.com/archives/54266356.html
2007年5月24日「選択定年制度規程」
https://roumu.com/archives/54265750.html
2007年5月23日「管理職任期制度規程」
https://roumu.com/archives/54252712.html
2007年5月22日「管理職定年制度規程」
https://roumu.com/archives/54240115.html

 

(福間みゆき)

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暑くなってきました!熱中症の予防策と救急措置を確認しましょう

暑くなってきました!熱中症の予防策と救急措置を確認しましょう 昨日は西日本を中心に気温が上がり、大分県豊後大野市ではなんと36.1度を記録したそうです。これから夏を迎えると心配になってくるのが熱中症です。左のグラフ(クリックして拡大)は先日、厚生労働省の「熱中症による死亡災害発生状況(平成18年分)」の中にある過去3年間の月別被災状況です。例年7月から8月に集中して死亡事故が発生していますが、6月にも過去3年間で5件の死亡事故が発生しており、直射日光により高温環境となる屋外作業場所等ではいまの時期から注意が求められます。


 以下では熱中症の予防策と、発生時の救急措置のポイントについて解説します。特に屋外作業を行う際には十分に以下の事項を注意し、現場指導を徹底することが求められています。
[予防策]
 そもそも熱中症とは、高温の環境で発生する障害の総称で、射病、熱けいれん、熱虚脱、熱ひはいに分けられますが、その基本的な対策としては以下のようなことに注意が必要です。
□日除けや風通しを良くするための設備を設置し、作業中は適宜散水する。
□水分・塩分補給を行い、また身体を適度に冷やすことのできる冷たいおしぼりなどの物品を用意する。
□日陰などの涼しい場所に休憩場所を確保する。
□十分な休憩時間や作業休止時間を確保する。
□作業服は吸湿性・通気性の良いものを着用する。
□健康診断や巡視などにより、作業者の健康状態を把握しておく。


[救急措置]
 以上のような予防策がまずは求められますが、それでも実際に熱中症が発生してしまった際には、以下の手当を早急に行った上で、直ちに病院に連れて行き、医師の手当を受けることが必要です。
□涼しい場所で安静にする。(安静中は1人にさせない。)
□水やスポーツドリンクなどを取らせる。
□体温が高いときは、裸体に近い状態にし、冷水をかけながら扇風機の風を当てるなどして、体温の低下を図る。



参考リンク
厚生労働省「熱中症による死亡災害発生状況(平成18年分)」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei16/index.html
環境省「熱中症保健指導マニュアル(2006年6月改訂版)」
http://www.env.go.jp/chemi/heat_stroke/manual.html
財団法人日本気象協会「WBGT熱中症予防情報」
http://www.tenki.jp/heat


(大津章敬)


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パートタイマーとの雇用契約締結時はここを注意しましょう

 服部印刷では年度があけても繁忙が続いており、パートタイマーの新規雇用を計画している。そこで前回、大熊は服部社長と宮田部長にパートタイマー採用についての注意事項の説明を行った。今回は引き続き、その後の雇用契約時の注意点について説明を行うこととした。



大熊社労士:
 それではパートタイマーの採用が決定した際の準備もしていきましょう。まず初めに必要となるのが労働契約書ですが、現在いらっしゃるパートタイマーさんとの間で契約書は交わされていますか?
宮田部長宮田部長:
 現在わが社にはパートタイマーは1人しかいません。それもかなり以前に知人の紹介でパートタイマーとして雇用した人ですから、口頭で了解してもらっているだけで特別書類は交わしていません。しかし、現在も気持ちよく働いてもらっており、こちらもたいへん助かっています。
大熊社労士:
 現在までトラブルなしで雇用されているのは良いのですが、今後は契約書をしっかり取り交わしておいたほうが良いでしょうね。最近、パートタイマーなど非正規従業員と呼ばれる方がどこの企業でも増加しており、それにつれトラブルも急増しているのです。中でも言った言わないであるとか、聞いている労働条件と違うなど、証拠となる書類がないことが原因で不必要な争いやトラブルを生じさせてしまうことが少なくありません。こうしたトラブルを回避するためにはやはり労働条件を明確に書面で交わしておくということが重要です。
服部社長:
 そういえば、知り合いの社長が労働条件の食い違いによるトラブルで対応に苦慮していたのですが、やはり口頭のみの対応だったことを思い出しました。
大熊社労士:
 いくらパートタイマーといっても、やはり契約上のことですので、たとえ信用のおける方からの紹介であっても後々のトラブルを避けるために、きちんとした契約を交わしておいてください。
宮田部長:
 分かりました。今後はそうすることにします。ちなみに実際に用いる労働契約書は、どのような内容・形式なのでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 ここに「パートタイマー労働契約書」(こちらよりダウンロード可)がありますので参考にしてください。基本的には正社員用の契約書と同様のもので、内容としては勤務場所、仕事の内容、就業時間、休憩時間、休日・休暇、賃金などに関することを明記します。通常、正社員とは「雇用の期間」「更新の有無と更新の判断」といった点が異なりますので、ここは十分に注意を払ってください。
服部社長:
 「雇用の期間」は理解できるのですが、「更新の有無とその判断」については何か特別な理由があるのですか?
大熊社労士:
 はい、それをこれから説明しましょう。パートタイマーの雇用契約の場合、契約の期間は数ヶ月から1年、そしてその期間が満了する際、引き続き雇用の必要があれば条件を見直して更新するのが一般的です。問題はその更新の方法です。多くの会社では、契約の更新に関すること自体を説明していなかったり、更新時の判断方法などを明記しないで済ませているケースが多く見られます。
宮田部長:
 同じ人を引き続きパートタイマーとして同条件で雇用するのでしたら、わざわざ契約書を作り直したり交付したりせずに済ませてもよいと思うのですが違うのでしょうか?
大熊社労士:
 パートタイマーを実質的に期間の定めなく雇用するときは自動的に更新するという扱いでよいのですが、そうではなく一定の期間で雇用を終了させることがある場合は、更新の都度面談し、契約書を取り交わす必要があります。そして、その面談の際に更新期間が満了したときに会社はどのように判断をするかということについて予め示しておくことが望ましいのです。
宮田部長:
 よくわからないのですが、具体的にはどのようにすればよいのでしょうか?
大熊社労士:
 例えば1年契約のパートタイマーと契約更新する場合、期間満了前に実際に面談をします。そして、次の期間満了時に更新するか否かわからない場合は「更新をする場合があり得る」、その判断としては「契約期間満了時の業務量、従事している業務の進捗状況、従業員の能力、業務成績、勤務態度、会社の経営状況、その他」に基づいて判断すると説明し、雇用契約書にも明記します。また「契約を更新しない」ということが予めわかっている場合は、そのように説明し契約書を交わします。
宮田部長:
 契約更新の手続きを、まったく行っていない場合はどうなるのでしょうか?
大熊社労士:
 実は、次のような判決が出ています。
紀伊高原事件(大阪地裁 平成9年6月20日判決)
「本件の事情に照らせば、本件契約については、契約期間満了の際に更新が行われていたと断定することはできず、本件契約の当初の契約期間満了後の平成3年1月以降も原告が稼働していたことについて、被告がこれを知りながら異議を述べなかったとするほかはないから、本件契約は、民法629条1項により、期間の定めのない労働契約として継続していたことになる。そうすると、本件契約が満了したとするためには、契約期間満了以外の終了原因が必要となる。」
 判決のように有期雇用契約の場合には、期間満了時に使用者が異議を述べないで雇用を継続すると黙示の更新となり、以後は実質的に期間の定めのない契約となります。そうなると予定していた期間が到来しても雇用契約の終了の扱いをすることはできなくなります。それでも雇止めを行おうとすると期間満了による契約終了ではなく解雇の扱いとなりますので、くれぐれも注意してください。
服部社長服部社長:
 なるほど、予定していた雇用期間の満了が来たときに、労使双方トラブルなく契約を終了させるためには、採用時や契約更新時
に説明をちゃんと行い、契約書を一人ひとりに交付し、期間満了時の見通しができるようにしておくことが必要ということですね。
大熊社労士:
 その通りです。採用計画に基づいて必要とする一定の雇用期間が到来したときに、引き続きパートタイマーの雇用が必要であればよいのですが、その必要性がなくなった場合は雇止めをせざるを得ないでしょう。そのときにトラブルにならないようにするためには、パートタイマーにも予測できるような説明を行い、雇用契約を締結しておくことが必要です。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。前回に続きパートタイマーの雇用について取り上げてみました。最近、多くの企業でパートタイマーや契約社員などいわゆる非正規社員の割合が増加しています。業種によっては正社員よりも多くの非正規社員を雇用しており、どちらが「正規」なのか分からない状態になっている企業も少なくありません。こうした流れが進むにつれ、パートタイマーなどとの労働トラブルが増加しています。一般的にパートタイマーとして雇用されている方々は、賃金や休日、その他の労働条件について正社員よりもシビアに考える傾向が強く、細かいことでトラブルになることが少なくありません。また期間満了による雇止めなども考えれば、契約書を確実に作成し、そこにおいて労働条件を明確に示すことは不可欠であるといえるでしょう。それでは次回も引き続きパートタイマーに関することを取り上げ、労務管理上の注意点をみてみることにしたいと思います。


[関連条文]
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_docframe.cgi?MODE=hourei&DMODE=CONTENTS&SMODE=NORMAL&KEYWORD=&EFSNO=1336



関連blog記事
2007年2月5日「パートタイマー労働契約書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/52080828.html
2007年3月16日「労働条件通知書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/53101068.html
2007年05月16日「注目のパートタイマーへの厚生年金適用拡大 3つの要件と猶予措置の案が明らかに」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50971577.html


参考リンク
厚生労働省「一般労働者用モデル労働条件通知書(常用、有期雇用型/日雇型)」
http://www2.mhlw.go.jp/info/download/19990226/01.htm
厚生労働省「パートタイム労働法のあらまし(事業者向けパンフレット)」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/parttime1.html
大阪労働局「パートタイム労働者の雇用管理改善について」
http://osaka-rodo.go.jp/joken/kinto/part.php


(鷹取敏昭)


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