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中国人事管理の先を読む!第9回「進出企業の人事制度(5)シングルレートの基本給」

 基本給の設計には、等級やポジションごとに一つの基本給額のみを設定する「シングルレート」と、等級やポジションごとに基本給の上限と下限が設定される「レンジ給」の2つがあります。どちらの基本給のあり方を選択するか、企業の理念や人材マネジメントに対する考え方が大きく反映されるところですが、今回からはそれぞれの基本給制度の特長、メリットとデメリットを説明したいと思います。

シングルレート まず左の表をご覧下さい。これがシングルレートの基本給制度の一例です。このようにシングルレートは、各々等級に対してひとつの基本給が設定されています。つまり、昇給の条件として昇格を伴うということになり、欧米企業や中国企業に多く導入されている「職務給制度」に多く見られるケースで、ジョブディスクリプションとセットで運用されるものです。この場合、昇格条件としては上位のジョブに対する遂行能力の有無がポイントとなり、審査・決定を経て昇格昇給が実施されます。非常にシンプルで、給与の決定が合理的に行われる一方、昇格する以外に昇給はあり得ず、年功や勤続年数等の属人的要素が排除されてしまいますので、従業員の会社に対する帰属的モチベーションを阻害しやすくなります。

 更に等級と組織におけるポジションとが連動している場合が多く、組織上、自分の上位職務者が存在する場合、上司が昇格するか異動、或いは退職しない限り、自分の昇格は行われず、結果的にポテンシャルの高い従業員の退職を招いてしまいやすくなってしまいます。バックヤードに多くの控え選手がいる場合を除いて、人材の確保が困難となっている中国の事情や、長期的な雇用を基本理念とする多くの日系企業の考え方にはそぐわない制度かも知れません。シングルレートの基本給制度を導入している日系企業が陥りやすい代表的な運用上のミスの要因には、本来のシングルレートの理念から逸脱し、従業員を昇給させることが目的となってしまい、不合理な昇格を濫用することで等級階層が極度に多くなってしまったり、基本給表に載っていない基本給を設定してしまうことが挙げられます。そうなってしまいますとそもそも制度と会社の理念とが合致していない状態ということになりますので、基本給制度自体を見直す必要があるということになります。
(2011年4月6日 Bizpresso掲載記事)

[執筆者プロフィール]
清原学
株式会社名南経営 人事労務コンサルティング事業部
海外人事労務チーム シニアコンサルタント(中国担当)
 1961年兵庫県生。学習院大学経営学科卒。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。大手エンジニアリング企業の取締役最高人事責任者(CHO)を歴任し、上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード上海設立。中国進出日系企業約400社の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリー、人材育成に携わる。日本、中国にて講演多数。2011年からは株式会社名南経営にて日本国内での活動を行っている。
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
・ジェトロ上海センター 人事労務委託業務契約
・財団法人 社会経済生産性本部コンサルティング部 経営コンサルタント
・兵庫県中国ビジネスアドバイザー
・神戸学院大学 東アジア産業経済センター アドバイザー


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中国人事管理の先を読む!第8回「進出企業の人事制度(4)基本給の設計」

 給与を構成する要素のうち、中核を成すのが基本給です。今回は、基本給はどのように設計するのかについてお話します。

 一般的に基本給には、「シングルレート」と「レンジ給」の2通りの決め方があります。シングルレートとは、等級やポジションごとに一つの基本給額のみを設定しているものに対し、レンジ給とは、等級やポジションごとに基本給の上限と下限が設定されているものです。つまり前者の場合、同じ等級やポジションであれば、年齢や経験の差に関係なく一定の給与額が支払われるのに対し、後者では同じ等級やポジションであっても年齢、経験、能力などによって基本給に格差が生じるものです。
【シングルレートによる基本給例】
等級S1の基本給 3000元
等級S2の基本給 3500元

 上記のように、各々の等級に基本給額が1対1で対応している基本給制度をシングルレートと呼びます。人事制度の中でも、職務給制度に多く取り入れられているものです。この場合、基本給の上昇、即ち昇給は、昇格することで上位等級のレートの基本給まで上がることになり、昇格と昇給が同時に行われることになります。シングルレートの場合、等級定義の資格による昇格審査を厳格に実施したり等級間の基本給額差が大き過ぎ、昇格に躊躇してしまうことで、昇給の運用が硬直化してしまいやすいことから、基本給以外に「業績給」を設け、昇格以外の評価によって給与を弾力的に運用するケースも多く見られます。
【レンジ給による基本給例】
等級S1の基本給 3000元~3500元
等級S2の基本給 3500元~4000元

 このように、各々の等級の基本給に一定の幅(レンジ)を持たせ、その範囲で基本給を決定する制度をレンジ給と呼びます。レンジ給の場合、社員の評価によって基本給を弾力的に運用することができ、また中途採用等の初任給の決定がレンジの中でできるため、シングルレートと比較すると、運用はやりやすい制度となります。レンジの中を更に細分化し、「号」を用いて基本給テーブルを作成するパターンと、兎に角レンジだけ決めておいて、その中で自由に基本給が決定できるようにしておくパターンとの2通りがあります。しかし、給与の決定に対して比較的自由な裁量が与えられているため、逆に給与の決定に恣意的要素が加わったり、基本給の差に対する合理的な裏付けが無くなってしまうことの懸念が存在します。次回からは、シングルレートとレンジ給のそれぞれ、運用上のメリット、デメリットについて解説します。
(2011年3月22日 Bizpresso掲載記事)

[執筆者プロフィール]
清原学
株式会社名南経営 人事労務コンサルティング事業部
海外人事労務チーム シニアコンサルタント(中国担当)
 1961年兵庫県生。学習院大学経営学科卒。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。大手エンジニアリング企業の取締役最高人事責任者(CHO)を歴任し、上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード上海設立。中国進出日系企業約400社の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリー、人材育成に携わる。日本、中国にて講演多数。2011年からは株式会社名南経営にて日本国内での活動を行っている。
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・財団法人 社会経済生産性本部コンサルティング部 経営コンサルタント
・兵庫県中国ビジネスアドバイザー
・神戸学院大学 東アジア産業経済センター アドバイザー


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土井英司氏による「士業のための実践!自分ブランド塾」10月28日に東京で開催

土井英司氏による「士業のための実践!自分ブランド塾」 株式会社名南経営/日本人事労務コンサルタントグループ(LCG)では、社会保険労務士のみなさんのコンサルティング能力向上とブランディングの支援を行っていますが、この度、有限会社エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役で、日刊書評メールマガジン「ビジネスブックマラソン」編集長でもある土井英司氏を講師にお招きし、士業向けのブランディング講座を開催することとなりました。この機会に是非ご参加をお待ちしています。


 情報やサービスで差別化しにくい時代。事業の成否を分けるのは、クライアントがあなたを選ぶ理由を明確化することです。

 立場上、頭を下げて営業できない士業にとって、ウェブでのプロフィール作りとマーケティングは儲けるための生命線。本セミナーでは、元アマゾンのカリスマバイヤーで、独立後は、『年収200万円からの貯金生活宣言』(FP横山光昭氏、シリーズ累計34万部)のプロデュースや、『稼ぐ人は、なぜ長財布を使うのか?』(16万部)、『経営のやってはいけない!』(3万部)などの出版戦略指導を手掛ける土井英司氏が、ブランド作りと出版成功のためのノウハウを指南。年商5千万円超のカリスマ士業を多数クライアントに抱える土井氏が、士業のためのブランディングを徹底指導いたします。


士業のための実践!自分ブランド塾
 ~強み発見、プロフィール作りから出版まで~
有限会社エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役 土井英司氏


数多くいる士業のなかから選ばれる人になるために
・パーソナルブランディング概論
・一行プロフィールを作る
・300字でプロフィールを書いてみる
・欲しいクライアントと自己イメージのすり合わせ

facebookで集客するための人脈作り
・リアルの人間関係がネット集客の成否を決める
・写真は極めて重要。プロとアマチュアの写真の違いを知る
○士業の方は、絶対に正面写真を取ってはいけない
○「頼りになりそう」「親身になってくれそう」をどう演出するか
○講演で稼ぎたい人の写真の撮り方
・人はどんなメッセージに反応するか

士業の方がメディア露出するための方法
・ブログを持つことは必須条件
・できれば出版で信用をつけたい
・メディアに重宝されるテーマ、キャラクター

[日時および会場]
日 時:平成23年10月28日(金)午後2時~午後5時
会 場:名南経営東京事務所 セミナールーム(日比谷)
定 員:50名

[受講料]
一般15,750円(税込)

[セミナーに関するお問い合わせ]
 セミナーに関するお問い合わせは下記までお願いします。
日本人事労務コンサルタントグループ事務局
名古屋市東区泉一丁目12番35号 1091ビル4F(株式会社名南経営内) 電話:052(962)2833

[お申込み]
 本セミナーのお申し込みは以下よりお願いします。なお、LCG会員のみなさんは会員専用ホームページ「MyKomon」の専用フォームよりお申込みをお願いします。
http://www.lcgjapan.com/sr/seminar/1110doi.html

(大津章敬)

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中国人事管理の先を読む!第7回「進出企業の人事制度(3)等級とモチベーション」

 日本国内の企業の多くが採用している「職能資格制度」は、一般的にゼネラリストを育成する制度としての特徴を持っています。従って、職能資格制度とセットになって運用されるのが「ジョブローテーション」です。職能資格制度の起源は日本の公務員の人事制度であり、公務員制度の場合、部局へ就任してから3年程度経過するとまた違うセクションへの異動を伴います。このようにジョブローテーションを繰り返しながら、多種多様の業務経験を積ませ、何でもできるゼネラリストを育てていくわけです。

 それでは、そもそも中国ではこのようなジョブローテーションが馴染むのか?答えはNoです。中国人従業員の場合、日本人に比べ、キャリア志向に対する非常に強いモチベーションを保有していますが、一方で専門性の習熟に対する高いモチベーションを持っている側面もあります。担当職務異動の打診をしても、「私はその仕事をするためにこの会社に入社したのではない」と平気で言ってきたりもします。中国でジョブローテーションが運用できないもうひとつの要因として、職務別の給与の差が大きいということがあります。日本の職能資格の場合、職務間の給与格差は大きくないので(それが職能資格の特徴でもありますが)職務の異動は比較的スムースに行うことができますが、中国では職務間の給与差が大きく、異動の大きな障害になってしまいます。このように、中国人従業員のモチベーションの一端を紐解いてみても、日本式の人事管理の限界を垣間見ることができます。

 このようなことから推察しますと、中国での等級管理は仕事を基軸とした職務等級制度によるものが主流であることが理解することができます。中国の人事管理では本来、「崗位」という概念があります。これは正にジョブを表しており、「崗位」の定義がジョブディスクリプションということになります。このような特徴は、中国の人事管理が欧米企業のそれに非常に近いことを表しています。従業員の給与はすべてこの「崗位」によって決定し、「崗位」が上昇、つまり昇格することで給与も同時に上がっていくという考え方です。日系企業の場合、長く職能資格制度に慣れてしまっておりますので、このように仕事の区分、グループに基準を置いて人事管理を行うということに制度的な抵抗感もあるようですが、まず組織、等級を設計していく上では、この仕事による等級、「崗位」による管理を念頭に置いて制度を設計していくことが、中国で人事管理を成功させるためには、極めて重要なポイントとなってくることを理解して下さい。
(2011年3月8日 Bizpresso掲載記事)

[執筆者プロフィール]
清原学
株式会社名南経営 人事労務コンサルティング事業部
海外人事労務チーム シニアコンサルタント(中国担当)
 1961年兵庫県生。学習院大学経営学科卒。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。大手エンジニアリング企業の取締役最高人事責任者(CHO)を歴任し、上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード上海設立。中国進出日系企業約400社の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリー、人材育成に携わる。日本、中国にて講演多数。2011年からは株式会社名南経営にて日本国内での活動を行っている。
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
・ジェトロ上海センター 人事労務委託業務契約
・財団法人 社会経済生産性本部コンサルティング部 経営コンサルタント
・兵庫県中国ビジネスアドバイザー
・神戸学院大学 東アジア産業経済センター アドバイザー


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中国人事管理の先を読む!第6回「進出企業の人事制度(2)等級を設計する」

 人事制度設計の基礎となるものが等級制度です。企業が有する部門や、その部門に誰が属しているか、指示命令のラインはどうなっているかについては組織図によって表すことができますが、組織図だけではそれぞれの従業員の関係や組織内における従業員のポテンシャルについては表すことができません。個々の従業員が組織でどこに位置付けされているのか、従業員のキャリアパスはどう描いていくのかをデザインするものが等級制度ということになります。

 人事制度には様々な手法の選択肢があるように、この等級制度にもいくつかのパターンがあります。代表的なものとして、等級を従業員の能力で区分し、組織全体を共通の等級で括り、能力基準を等級定義とする「職能等級制度」、それぞれの等級は従業員個々が担当する仕事の特異性によって表されるべきものであり、職務遂行のレベルに応じて等級を区分し、ジョブディスクリプションのような職務定義を基準とする「職務等級制度」があります。人事制度を設計していく上でまず検討しなければならないのは、このようにいくつかある等級制度の特性、運用上のメリット・デメリット等を比較しながら、自社でどのような等級制度を運用していくべきかという選択であり、等級の設計については経営理念や事業計画、従業員が担当している仕事の分析、従業員のキャリアデザイン等を通じて議論し、決定します。

 一般的に日本国内の企業では「職能資格制度」による「職能等級制度」が多く用いられておりますが、中国では従業員の欲求として専門性を追及する意識レベルが高いこと、ジョブローテーションを通じてゼネラリストを育成する風潮が醸成されていないこと、更に組織内での職務に応じた賃金水準の格差が大きいことなどから、担当する仕事に応じて等級を設計する「職務等級制度」が理解されやすく、運用しやすい傾向にあります。

 しかし、職務等級制度で制度運用を阻害する要因もあります。例えば従業員の職務遂行レベルは高まっているにも関わらず、日本からの駐在員が部門の長を占めてしまっているような状況が存在すれば、従業員の昇格モチベーションに大きな弊害が現れてしまい、職務等級制度の運用に支障を来たしてしまう結果となってしまいます。このように、等級制度の運用というのは単にどのような制度を導入するかということだけでなく、従業員を中・長期的にどのようにマネジメントしていくかという戦略も合わせて検討し、有機的な組織を作っていくことが求められます。
(2011年2月22日 Bizpresso掲載記事)

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中国人事管理の先を読む!第5回「進出企業の人事制度(1)グランドデザイン」

 財団法人社会経済生産性本部(現日本生産性本部)で人事制度のコンサルティングを担当していた1990年頃、企業の人事制度は「職能資格制度」によるものがマジョリティを占めており、職能資格制度こそが日本の人事制度の代表格でした。日本の職能資格制度の原点は高度成長期における企業の盛隆時代にまで遡り、産業政策、雇用政策により、兎に角人手が必要であり、社員を増やし、その結果役職者が増えることを回避しながらもキャリアパスを設計するために作られたものです。職能資格制度は等級を職務レベルから切り離し、能力レベルで位置付ける制度で、「職能要件書」と呼ばれる等級ごとの能力の定義を行い、従業員の能力に基づいて等級の位置付けを行うものです。90年代後半から企業は業績の悪化に伴い、「成果主義」による人事制度を導入するも、職能資格制度からの完全な脱却までは到底行かず、結果的に年功序列の人事制度をそのまま引きずってきました。

 中国進出企業の人事制度は、その大半が日本本社の制度を受け継いでおり、やがて日本の人事制度である職能資格制度は中国に合っているかという命題に直面することとなります。前述のように、職能資格制度は職務ではなく能力によって従業員を等級に格付けを行うものです。しかし中国の場合、従業員各々が担当する職務(仕事)に対する遂行レベルへの期待感が大きいこと、同一企業内であっても職務ごとの給与水準に大きな差があることから、組織を共通の等級で区分すること自体、運用が極めて困難な状況に陥ることになります。また、従業員の能力レベルを評価することにより等級に格付けするということは、逆に評価(職能要件)を曖昧にせざるを得ないということになり、従業員個々が担当する職務を遂行できる評価(職務要件)に関しては評価が行われないという結果を招いてしまいます。このような制度的特性から職能資格制度は、社員のモチベーションや人材市場の賃金水準を吸収するには、それをそのまま中国で運用することはかなり難しい制度であるということになります。では、職務に応じた制度が中国には相応しいか、ということになりますと、職務に対する要件が同じである以上給与が上昇しない、上位のポジションが空かない限り昇格できない等、やはり運用上の問題点が幾つか存在します。

 このように、中国の人材モチベーション、採用とリテイン戦略、今後の所得水準政策等を考えた場合、中国の現状と将来を考えた制度の構築が必要となってまいります。次回からは中国に合った人事制度をひとつずつ紐解いてみたいと思います。
(2011年2月10日 Bizpresso掲載記事)

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日本の公的年金制度を解説した小冊子がダウンロードできます

日本の公的年金制度を解説した小冊子 昨日、厚生労働省から「厚生年金・国民年金の平成22年度収支決算の概要」が発表されました。これによると平成22年度の収支決算(簿価ベース)は、厚生年金で[歳入]40兆4,056億円、[歳出]40兆1,151億円、[差引]2,905億円、国民年金で[歳入]4兆7,050億円、[歳出]4兆4,658億円、[差引]2,392億円となったとのことです。厚生年金では保険料率の引き上げの影響等により保険料収入が増加していますが、年金制度の信頼の回復にはまだまだ様々な取組みが必要だといえるでしょう。

 このような背景もあり、日本年金機構は様々な対策や改善を講じてきましたが、先日、「公的年金制度の解説」というリーフレットのダウンロードが開始されました。年金制度の説明を受ける機会が少ない人にとっても分かりやすいように公的年金制度の必要性からその仕組み、受けられる給付までがコンパクトに6ページにまとめられています。

 9月からは厚生年金保険料率も引上げられ、年金保険料の負担が大きくなります。このような機会に、こうしたリーフレットを活用し、社員への情報提供を進められてはいかがでしょうか?

日本年金機構からダウンロードできる「公的年金制度の解説」はこちら
http://www.nenkin.go.jp/pamphlet/pdf/koutekiseido_h23.pdf


関連blog記事
2011年8月5日「厚生労働省から公開された「中小企業に役立つ時間外労働削減の事例集」」
https://roumu.com
/archives/51865009.html

2011年7月13日「精神障害に係る国民年金・厚生年金保険障害認定基準の一部改正」
https://roumu.com
/archives/51859918.html

2011年3月25日「平成23年4月より在職老齢年金の支給停止基準額は46万円に変更
https://roumu.com
/archives/51833833.html

2011年2月18日「平成23年度の国民年金保険料額と前納額が発表されました」
https://roumu.com
/archives/51824444.html

2010年8月25日「過去最低水準となった平成21年度の国民年金納付率」
https://roumu.com
/archives/51772315.html

2010年8月19日「平成21年度の国民年金・厚生年金の収支決算はいずれも赤字に」
https://roumu.com
/archives/51772018.html

2010年6月18日「年金制度の把握に最適!日本年金機構の年金制度教材がダウンロードできます」
https://roumu.com
/archives/51749888.html

参考リンク
厚生労働省「厚生年金・国民年金の平成22年度収支決算の概要の公表について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001lktt.html

(宮武貴美)

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精皆勤手当の見直しを行いたいと考えているのですが

 宮田部長は毎月の給与計算のチェックを行っていて、精皆勤手当のあり方について疑問に感じるところがあった。


宮田部長:
 大熊先生、最近、他の会社では精皆勤手当を支給している事例は多いのでしょうか?
大熊社労士:
 精皆勤手当ですか?どうしてまた突然、そんな話になっているのですか?
宮田部長宮田部長:
 はい、当社では福島さんが毎月の給与計算をしてくれているのですが、一応私が最終チェックをしています。もっとも細かいところではなく、全体を見て、おかしなところがないかを確認しているということなんですけれどね。それで今月も全社員の明細一覧を眺めていたのですが、そこで精皆勤手当が気になったのです。というのもほとんどの社員は毎月これがきちんと支給されており、欠勤や遅刻をして手当が減額になるという者はそれこそ数ヶ月に一人といった感じなのです。このような状態であれば、もう精皆勤手当を支給する意味はないのではないかと思ってしまったという次第なのです。
大熊社労士:
 なるほど。それは遅刻や欠勤をする社員がいなくなったということですから、御社にとっては喜ぶべきことかも知れませんよ。もっとも最近は年次有給休暇が拡充され、また企業によっては時間単位の年休を認めるような場合もあることから、精皆勤手当が減額されるようなことが本当に少なくなりましたね。その意味では確かに多くの企業にとって、精皆勤手当の役目は終わったと言えるのかも知れません。
宮田部長:
 やはりそうですよね。それで他社はこの手当を廃止しているのですか?
大熊社労士:
 そうですね。まだまだ根強く支給されている企業が多いとは思いますが、賃金制度改定を行う際にはこれを廃止し、基本給に組み入れる例が増えているのは間違いないでしょう。求人対策上も同じ金額を支払うのであれば精皆勤手当ではなく、基本給で支給した方が遡及できると考えられますので。
宮田部長:
 なるほど、そうですよね。でも、精皆勤手当を廃止し、基本給に組み入れることでなにか影響はありませんか?
大熊社労士大熊社労士:
 まず時間外手当についてはそもそも精皆勤手当も除外賃金ではありませんので、基本給に組み入れたところで影響はありません。考えておかなければならないのは賞与と退職金ですね。多くの企業では基本給に支給月数を乗じることで賞与や退職金の計算をしていることから、単純に手当を廃止し、基本給に組み入れてしまうと賞与や退職金の支給額が増加してしまうという恐れがあります。
宮田部長:
 当社では退職金は中退共の確定拠出型で行っているので問題ありませんが、賞与制度については基本給に一定の支給月数を乗じて算出しているので影響がありそうですね。
大熊社労士:
 そうですね。このような場合、賞与にしても退職金にしても、基本給とは非連動の制度を導入することが基本方針となります。例えば賞与制度としてはポイント制と呼ばれる仕組みを導入することが多いですね。
宮田部長:
 ポイント制ですか?それはどのような制度なのでしょうか?
大熊社労士:
 はい、それについては次回、じっくりお話させて頂きますね。まず今回の件について言えば、賞与制度を基本給非連動の制度に変更した上で、精皆勤手当は廃止し、基本給に組み入れていくのが良いのではないかと思います。
宮田部長:
 わかりました。それでは次回、そのポイント制という賞与の仕組みについてレクチャーをお願いします。
大熊社労士:
 了解しました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は精皆勤手当の見直し状況について取り上げました。労働基準法においては減給の制裁について一定の制限が設けられていることもあり、昔から勤怠不良の社員への対応として精皆勤手当を支給する例が多く見られました。例えば毎月10,000円の精皆勤手当を支給し、遅刻をするとこれが5,000円に減額され、複数回の遅刻や欠勤があると全額支給停止になるといったものです。かつては欠員による生産活動へのマイナスを避ける意味などから製造業を中心にこの手当の採用率は非常に高かったのですが、近年は年次有給休暇の拡充などもあり、今回の例のようにあまり機能していないという話が少なくありません。諸手当の原則は必要のあるものを必要最小限設定するということにありますので、最近の賃金改定の事例を見ると精皆勤手当を廃止し、基本給に組み入れるという取り扱いが非常に多くなっています。もし同様の状況が見られる場合には、その必要性から吟味されることをお勧めします。

(大津章敬)

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在職中に老齢厚生年金を受け取られる方へ ~働きながら年金を受けるとき (平成23年度版)

lb08085タイトル:在職中に老齢厚生年金を受け取られる方へ ~働きながら年金を受けるとき (平成23年度版)
発行者:日本年金機構
発行期日:平成23年4月
ページ数:6ページ
概要:在職中に老齢厚生年金を受け取りながら働く方に対して、60歳台前半の在職老齢年金の仕組みについてわかりやすく解説したリーフレット
Downloadはこちらから(1,32MB)
http://www.lcgjapan.com/pdf/lb08085.pdf


関連blog記事
2011年3月25日「平成23年4月より在職老齢年金の支給停止基準額は46万円に変更」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51833833.html
2010年9月5日「今年12月にスペインとの社会保障協定が発効」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51776532.html
2010年8月25日「過去最低水準となった平成21年度の国民年金納付率」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51772315.html
2010年8月24日「東京都産業労働局からダウンロードできる「働く人のための労働保険・社会保険」」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51771868.html
2010年8月23日「日本年金機構が発表した「わかりやすい言葉置き換え例集」」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51772489.html
2010年08月19日「平成21年度の国民年金・厚生年金の収支決算はいずれも赤字に」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51772018.html
2010年6月18日「年金制度の把握に最適!日本年金機構の年金制度教材がダウンロードできます」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51749888.html
2010年6月18日「年金制度の把握に最適!日本年金機構の年金制度教材がダウンロードできます」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51749888.html
2010年5月6日「年金記録の回復により支給されることとなった遅延加算金」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51731582.html
2010年3月3日「昨年より更に悪化した国民年金保険料の納付率」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51702726.html
2010年2月3日「平成22年度の年金額も前年据え置き」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51690801.html

参考リンク
日本年金機構
http://www.nenkin.go.jp/index.html

 (福間みゆき)

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中国人事管理の先を読む!第4回「成果やミッションで保有能力を評価する」

 企業が従業員の評価を行う際に用いられる代表的な評価制度として“能力評価”と“目標管理制度”が挙げられます。能力評価は従業員が保有している能力や勤務態度に対する評価、つまり定性評価であり、目標管理制度は期間的な目標に対し、その達成度を評価する定量評価です。KPI(重要業績評価指標)やコンピテンシーなども定性評価の分類に含まれます。しかし、企業で使われている能力評価には以下のような欠点が存在します。
 能力評価の基準があいまいである
 保有能力を評価するため、必ずしも成果とは直接つながりのある評価ではない
 一度に多くの能力を評価しすぎるため、重要課題が絞り切れていない

 能力評価の最大の欠点は、評価基準があいまいであることです。日本で使われる評価基準書自体があいまいに作られており、それを中国に持ってきて運用してしまうため、中国人従業員、管理者双方にとって非常に分りづらい基準になっており、Aを付けようかBを付けようか評価者自身が迷ってしまいます。

 次に、能力は「持っているだけ」で評価してはいけないこと、仕事は保有する能力を使って「何を成し得たか」が重要であるということです。例えば、リーダーシップ能力が求められる幹部はその能力を発揮し、具体的な何かの成果を得て初めて仕事としては評価されるべきものです。しかし、企業で使われている能力評価の基準の多くは、リーダーシップ能力があるかないかを瞬間的な時間軸とあいまいな得点範囲で評価してしまうもので、成果とは関係のない着眼により、時には本当に能力を持っているかどうかさえ分かりにくい評価となってしまっています。

 従業員にはそれぞれ、ミッションやそれを遂行するために要求される能力レベルがあります。従業員に必要な能力が備わっていることが重要であるため、管理者は従業員にどのようなミッションを持たせるのかを把握し、具体的なミッションにどのような能力が必要なのかを絞り込む必要があります。能力評価を実施する過程においてはまた、業務遂行からみてプライオリティの低い能力も評価してしまうという矛盾が存在する点にも留意してください。

 能力評価を機能的に活かすのであれば社員個々のミッションを明らかにし、それを遂行するためにはどのような能力が求められるのかを明確にすべきで、その能力を使って、どのように目標に向けて仕事を遂行するのか、能力の選択と目標管理の遂行を融合させた評価のフォーマットを作成し、きちんと目標設定をさせるべきだと思います。

(2011年1月18日 Bizpresso掲載記事)


[執筆者プロフィール]
清原学
株式会社名南経営 人事労務コンサルティング事業部
海外人事労務チーム シニアコンサルタント(中国担当)
 1961年兵庫県生。学習院大学経営学科卒。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。大手エンジニアリング企業の取締役最高人事責任者(CHO)を歴任し、上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード上海設立。中国進出日系企業約400社の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリー、人材育成に携わる。日本、中国にて講演多数。2011年からは株式会社名南経営にて日本国内での活動を行っている。
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
・ジェトロ上海センター 人事労務委託業務契約
・財団法人 社会経済生産性本部コンサルティング部 経営コンサルタント
・兵庫県中国ビジネスアドバイザー
・神戸学院大学 東アジア産業経済センター アドバイザー


関連blog記事
2011年8月6日「中国人事管理の先を読む!第3回「賞与相場と支給額の決定」」
https://roumu.com
/archives/51863083.html

2011年7月31日「中国人事管理の先を読む!第2回「インフレ経済下における賃金管理」」
https://roumu.com
/archives/51863081.html

2011年7月30日「中国人事管理の先を読む!第1回「外国人の保険加入が義務付けに?」」
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2011年7月23日「東海日中貿易センター「中国社会保険法の施行と在華就労外国人への適用」」
https://roumu.com
/archives/51861405.html

2011年7月12日「中国進出企業が押さえておきたい「中国社会保険法」の影響と対策セミナー パソナ様主催で開催(東京・大阪)」
https://roumu.com
/archives/51859813.html

2011年7月3日「当社中国人事労務コンサルタント清原学が東京投資育成様でセミナーを開催」
https://roumu.com
/archives/51856533.html

参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about


(清原学)

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