「ハイ」の検索結果

[給与計算業務の改善]アルバイトの時給変更タイミング

 気づけば10回目となる不定期連載[給与計算業務の改善]。今回は、アルバイトの時給変更タイミングについて考えてみましょう。



[質問]
 当社では、多くのアルバイトを雇用しているのですが、入社から1ヶ月程度は、一人前の仕事ができるまでには1ヶ月程度の期間がかかります。このため、入社から100時間は、研修期間として通常の時給より50円下げた時給としています。最近、正社員がなかなか採用できず、やむを得ずアルバイトを増員していることもあり、この最初の100時間という労働管理がかなり複雑になっています。特に最近は、入社間もないアルバイトも残業を行っており、100時間を超える日まで特定して管理が必要となっています。どうにかならないものでしょうか?


[回答]
 今回も基本的には、計算ルールの簡素化で対応できないかを検討すべきでしょう。質問にあるような研修の取り扱いはよく見かけます。確かに労働時間で研修期間を管理することは平等な取り扱いになりますが、管理の手間は増加することは明らかでしょう。これを避けるためには、時給の変更タイミングは原則として勤怠の締切日とする必要があるでしょう。質問のケースでは、入社後3ヶ月期間は原則として、研修期間としておきつつ、労働時間や業務の上達度により、研修終了期間を勤怠の締切日に合わせて前倒しする方法などが考えられます。場合によっては、この取り扱いを行うことでモチベーションをあげることもできるかも知れません。


[まとめ]
 今回のような方法が難しい場合には、一定の集計機能がついたタイムカードシステムの導入も考えられます。システム導入の経費はかかりますが、集計ミスを防ぐなどの一定の効果はあるでしょう。この際には、打刻ミスの修正という思わぬ手間が発生しますので、利用法の勉強会開催なども必要でしょう。



関連blog記事
2007年8月2日「[給与計算業務の改善]情報と書類の統一による効率化」
https://roumu.com
/archives/51032021.html

2007年7月12日「[給与計算業務の改善]各種書式の改善で大きな生産性向上を実現 」
https://roumu.com
/archives/51016743.html

2007年7月2日「雇用保険の取得・喪失漏れを防止する方法」
https://roumu.com
/archives/51010200.html

2007年7月1日「[給与計算業務の改善]社会保険料の控除ミスを防ぐ工夫」
https://roumu.com
/archives/51006995.html

2007年6月25日「[給与計算業務の改善]給与計算ソフトへのデータインポート」
https://roumu.com
/archives/51002379.html

2007年6月20日「[給与計算業務の改善]給与計算ソフトからのデータエクスポート」
https://roumu.com
/archives/51001264.html


(宮武貴美)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。

地震で被災した社員が出た場合、どう対応すればいいの?

 前回、結婚のときに与える特別休暇の件で悩まされた大熊社労士だったが、更に話は広がり、地震被害を受けたときの対応についても検討することになった。



宮田部長宮田部長:
 先日、新潟・中越沖地震が発生しましたが、その被害を受けた知人がいるのです。家屋は一部損壊し、ケガをした家族もいたらしいのです。幸いにも被害はさほど大きくなく、ケガの程度も軽かったので良かったのですが、それでも家の片付けやケガをした家族を病院へ送り迎えしたりすることで3日間程度は会社を休んだということを聞きました。
服部社長:
 この中部地区は以前より東南海地震がいつ起きても不思議ではないと言われているので、本格的な震災対策に取り組まなければならないと考えていますが、本音のところなかなか検討が進んでいないのが実情なのです。宮田部長の知人の話のように、もし万一社員の自宅が地震で被害を受けた場合、休暇の取り扱いなど、どのように対応したら良いのでしょうか?
大熊社労士:
 先週末から千葉で比較的大きな地震が連続していますが、最近は全国各地で地震が発生していますから非常に不気味ですね。震災対策についてはその必要性は叫ばれているものの、本格的に取り組まれている会社は少ないのが現状です。防災規程やマニュアルさえないところも多いですし、あったとしても作っただけで訓練などは殆どしていない会社がたくさんあります。御社でもこれを機会に本格的に取り組まれるのが良いと思います。さて、ご質問の地震被害を受けた社員の休暇についてですが、就業規則の特別休暇の条文で、「天災事変のためのやむをえないとき:会社が必要と認めた暦日数」という規定が設けられていますので、まずはこれを用いればよいでしょう。
宮田部長:
 会社が必要と認めた日数は、一般的にはどの程度ですか?また、どのように決定していけばよいでしょうか?
大熊社労士:
 事情が事情だけに、予め日数を決めておくということもできませんので判断が難しいでしょうね。この判断をするためには、まず被害を受けたということとその程度を確認する必要があるでしょう。可能であれば総務関係の社員をお見舞いも兼ねて現地へ行かせ確認できれば判断しやすくなるでしょう。なお、特別休暇を与える場合、土日を含めて最長1週間程度の休暇を付与しているケースが多いようです。
宮田部長:
 被害を受けた社員が数名なら良いのですが、多数の社員が被害を受けた場合に現地へ確認に行くという対応は難しいと思います。そのときはどのようにすればよいでしょうか。
大熊社労士:
 まずは社員の安否確認と家族や自宅の被害状況を確認します。ただ、電話が繋がらない可能性もありますので、そのときの判断基準を事前に決めておくことも必要です。そして電話が使えるようになった時点においても出勤できない状況であれば、その後逐次状況を報告させ出勤したときに特別休暇の事後処理をすればよいでしょう。
服部社長:
 阪神淡路大震災のニュースで記憶にあるのですが、自宅に被害がなくても交通機関や道路に亀裂が入るなどで通行できず出社できない社員も出てくるとは思いますが、この場合はどうしたらよいでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 このときも「天災事変のためやむを得ない」事由として取り扱えばよいでしょう。特に地震直後に無理して通勤させると、その途中でケガや事故にあったりする危険性が高くなり、被害を大きくさせることに繋がります。状況が落ち着いて、ある程度安全が確認された後に、安全なルートを示して出勤させるのが望ましいでしょう。しかし、そもそもそのような状況では会社自体操業を続けられるかどうかは怪しいでしょうね。被害の程度にもよりますが、社員の多くが出勤できないほどの状況であったり、建物や設備に影響があると当分の間、休業しなければならないということも考えざるをえないでしょう。
服部社長:
 わが社の建物も古くなってきたので大きな地震に耐えられるかどうか不安です。ところで、会社が地震で大被害を受けて休業せざるを得なくなった場合、その間の給与はどのようにすればよいのでしょうか?
大熊社労士:
 労働基準法の第26条に休業手当を支払わなければならない条件を規定していますが、天災事変など不可抗力によって休業せざるを得なくなった場合は、賃金の支払義務は免れます。その要件としては、原因が事業の外部より発生した事故であること、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてなお避けることができなかった事故であること、が必要です。
服部社長服部社長:
 もし万一そのような事態になったとしても、社員を家族同様に考えろと先代社長からいわれてきたので、できるだけのことはしてあげたいと思っています。それにしても地震で被害を受けたときには、いろいろ考えないといけないのですね。それでなくても大混乱するでしょうから、事前の対策が必要なことがよく分かりました。
大熊社労士:
 防災対策はやろうと思えばキリがないほどたくさんありますが、とにかくできるところから検討を始め、訓練を繰り返すことが大切です。
服部社長:
 地震やその他の災害で特別休暇を利用することがないようにしたいのは言うまでもありませんが、わが社でも防災について宮田部長を筆頭に本格的に対策を考えてもらうことにします。ありがとうございました。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。前回に引き続き「特別休暇」について取り上げましたが、今回は災害時の取扱いについて検討してみました。ある調査では、被災した社員の休業を認める何らかの制度がある企業は約7割という結果が出ています。内容としては、特別休暇制度や年休、また時効で権利を失う年休を積み立てておき被災時に利用する制度などの活用となっています。なお、被災した際の休暇日数を決めている企業は1割程度にしか過ぎず、日数を決めていない8割の企業の殆どは「必要日数」とし、本人が利用できる年休等の範囲内としています。給与については、年休等の扱いも含めると約7割の企業が実質的に全額を保証するとしています。


 地震対策については中小企業では十分な対策がされていないことが通常です。内閣府や中小企業庁では企業防災の考え方としてBCPの導入を勧めています。ぜひ参考にして、防災対策のレベルアップを図ってください。


[関連条文]
労働基準法第26条(休業手当)
 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。



関連blog記事
2007年8月13日「挙式をしない社員の特別休暇はどのように与えればよいの?」
https://roumu.com/archives/64601650.html
2007年8月6日「配偶者の兄弟姉妹が亡くなったときの特別休暇はどのようにすればよいの?」
https://roumu.com/archives/64597536.html
2007年6月1日「慶弔見舞金規程」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/54367891.html
2007年1月20日「休暇(欠勤)届」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/51723593.html


参考リンク
名南経営セミナー「我が社の防災基礎対策(2007年09月07日開催)」
https://www.meinan.net/seminar/seminar_20070907risk.html
内閣府「企業防災のページ」
http://www.udri.net/portal/kigyoubousai/kigyoubousai.htm
内閣府「防災情報のページ」
http://www.bousai.go.jp/
新潟労働局「疑問?質問??Q&A~中越地震関連」
http://www.niigata-roudoukyoku.go.jp/kyoutuu/niigatakencyuetujisin/20041118jisingimonsitumon.pdf
中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」
http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/index.html
労務行政研究所「慶弔休暇の日数に休日を含めて定めることは、法令上可能か」
http://www.rosei.or.jp/service/faq/faq0/faq0403_04.html


(鷹取敏昭)


当社ホームページ「労務ドットコム」および「労務ドットコムの名南経営による人事労務管理最新情報」「Wordで使える!就業規則・労務管理書式Blog」にもアクセスをお待ちしています。

高年齢者を再雇用する際の処遇は、どう考えればいいの?

 前回、高年齢者の雇用継続制度について検討を実施したが、その会話の中で大熊は、服部社長の社員に対する真剣な想いを強く感じたのであった。さて、今回はそれに引き続き、再雇用時の処遇について検討を進めることとなった。



大熊社労士:
 高年齢者の雇用継続制度に関する規程類や協定書などは問題はないようです。そこで次に進みたいと思いますが、寺田部長と60歳以降の雇用について面談を行うに際して、給与などの処遇面はどのようにお話されるお考えでしょうか?
服部社長服部社長:
 はい、その点が課題として残っているのです。宮田部長が参加したセミナーの資料を参考に検討してみたのですが、それがわが社として適当なのかどうかが分からないので大熊さんのご意見をお聞きしたいと思っていたところなのです。
大熊社労士:
 承知しました。その前に「再雇用制度」というのは定年時点で一旦、雇用契約を終了させ、雇用条件を改めて契約し直すということはご存知でしょうか?
宮田部長:
 はい、理解しています。定年延長制度とは、その点が大きく違っていますよね。給与などの処遇の引き下げが可能というのは分かっているのですが、現実的にどのような条件を提示したら良いか決めかねているところです。
大熊社労士:
 そうですか。処遇を検討する前提としては、再雇用後の職務内容をどのようにするかがポイントとなりますが、この点については御社としてどのように考えていらっしゃいますか?
服部社長:
 後任者の育成がまだ十分ではありませんので、ここ1~2年間は現在の仕事をある程度は担ってもらおうと考えています。それと平行して後任者の育成をしてもらい、次第に業務そのものや責任を後任者に引き継いでもらうという計画です。また、平行して社内にあるいろいろな書類やマニュアルの整備を行ってもらいたいとも考えています。
大熊社労士:
 なるほど、よく分かりました。現在の仕事を当面は担ってもらうということですね。ただ、現在の延長線上で仕事をしてもらうと後任者の育成がなかなか進まないということも危惧されますが、その点はいかがでしょうか?
服部社長:
 そうですねぇ。一定の歯止めが必要だということですね。例えば、勤務時間については非常事態でも起こらない限りは定時で退社してもらい、休日出勤もさせないということではいかがでしょうか?
大熊社労士:
 結構だと思います。加えて引き継ぎ計画書を作成してもらい、進捗状況を報告させることも必要でしょう。ところで、給料水準としてはどのように考えておられますか?
宮田部長:
 当面現在の仕事はそのままですが、定時退社をしてもらうことで勤務時間は2割程度減り、責任も半分程度は少なくできるのではないかと考えています。そうすると、給料は現在の70%ぐらいが妥当ではないかと考えているのですが、いかがでしょうか?
大熊社労士:
 60歳を超えた方の処遇を考えるときに、ポイントの一つとして厚生年金の給付や雇用保険の高年齢者雇用継続給付金があることはご存知でしょうか?
宮田部長宮田部長:
 はい、セミナーでもそのことが強調されていましたので、私自身も少し勉強してみました。給料の額によって年金や給付金が調整されるというものですね。しかし、私の給料を例にして年金相談センターやハローワークでいろいろシミュレーションをやってもらったのですが、調べれば調べるほど分からなくなってしまったのです。
服部社長:
 その報告は宮田部長から受けていました。私の結論としては、そうした給付金等を活用して、最適給与を逆算するのではなく、働きに応じた給料を支給しようということにしたいと思っています。その上で、年金や給付金が受給できるのでしたら、別途個人として受けてもらおうという考え方です。もちろん、本人との面接で勤務時間や給料の希望が出てきたときには、十分希望を踏まえて検討するつもりです。
大熊社労士大熊社労士:
 よく分かりました。本来、そうあるべきだと私も思います。支給額が決まりましたら、念のためご連絡を頂けませんか?私の事務所に60歳以降の賃金シミュレーションソフトがありますので、それで最終的な手取りを確認してみようと思います。なお、シミュレーションするためには寺田部長の給与、賞与データの他、受給できる年金額も必要です。寺田部長が事前に年金相談センターや社会保険事務所で年金がいくらもらえるか既に計算してもらっていれば、それをご提示いただけるとすぐに計算することができます。一度ご確認いただけないでしょうか。
宮田部長:
 わかりました、寺田部長に聞いてみます。手に入れば是非シミュレーションをお願いします。せっかく働いてもらうのでしたら、できるだけ不利にならないような給与設計をしたいと思います。
服部社長:
 高年齢者といっても、現在の60歳台はバリバリ働ける方がたくさんいます。定年後はのんびりと暮らしたいという方は別として、働きたいという社員にはぜひ活躍し、やりがいのあることをしてもらいたいと思っており、その最初の対象者が寺田部長というわけです。彼は、責任感が強いですから、今後定年を迎える社員の良い見本となってくれるものと期待しています。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。前回に引き続き「高年齢者の雇用継続制度」について取り上げてみました。高年齢者の再雇用時の処遇については、定年時に一旦雇用を終了させ、新たな雇用条件のもとで雇用契約を結び直しますので給料を改定することが可能です。しかし、雇用は働きたいという社員ニーズと、働いてもらいたいという会社ニーズが合致して成り立ちますので、高年齢者の能力を十分に発揮してもらうためには、職務にあった処遇をまずは基本とすべきでしょう。一方、厚生年金や雇用保険の高年齢者雇用継続給付金などを活用すると、給料を下げても一定の収入は確保できる仕組みがあります。この仕組みを上手く利用するには社員に制度を詳しく説明するとともに、60歳以降の年金見込額を事前に調べておいてもらうなど社員の理解と協力が必要です。60歳以降の処遇については、会社の方針を設定した上で社員と再雇用についての話し合いをする前に条件面について十分検討しておいてください。


[関連条文]
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 第9条(高年齢者雇用確保措置)
 定年(六十五歳未満のものに限る。以下の条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
一 当該定年の引上げ
二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
三 当該定年の定めの廃止



関連blog記事
2007年7月16日「わが社の「高年齢者継続雇用制度」はこれで良いのでしょうか?」
https://roumu.com/archives/64567296.html
2007年7月16日「多様な労働力を活用するダイバーシティマネジメントで組織を活性化」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51021392.html
2006年12月25日「継続雇用制度における選定基準等に関する協定書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/51220945.html
2006年9月11日「改正高年齢法への対応は67.2%の企業が継続雇用制度を選択」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50717803.html


参考リンク
厚生労働省「改正高齢法に基づく高年齢者雇用確保措置の実施状況について」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/10/h1013-3.html
厚生労働省「高年齢者雇用対策」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koureisha.html


(鷹取敏昭)


当社ホームページ「労務ドットコム」および「労務ドットコムの名南経営による人事労務管理最新情報」「Wordで使える!就業規則・労務管理書式Blog」にもアクセスをお待ちしています。

賞与査定で産前産後休業はどのように取り扱えばいいの?

 服部印刷はやや業務量が減ってくる梅雨の時期だが、夏は目前。今年は業績好調であったので、社員も夏季賞与に期待しているという話が聞こえてきています。会社側でもそろそろ賞与の準備に入りました。



服部社長:
 そろそろ夏季賞与の準備をしなければいけないね。資金繰りは大丈夫かな、宮田部長。
宮田部長:
 はい、もちろん資金繰りはできております。明日にでも支給できますが、いかがしましょうか?
服部社長:
 経理面は相変わらず完璧だね。しかし、明日というのは気が早すぎるよ、例年どおり7月上旬の支給でいいだろう。それとも早く欲しい理由でもあるのかな?
宮田部長宮田部長:
 いいえ、社員の立場からすると、少しでも早くもらえると嬉しいのではないかと思って言ってみましたが、私個人としての特別な理由はありません。それでは、例年と同様の時期の支払いで準備します。
服部社長:
 ところで大熊さん、今年の夏季賞与の動向はどんなものでしょうか?
大熊社労士:
 はい、現時点で発表されている統計は大企業のものばかりですが、前年比で2%前後のプラスという結果が多いようですね。もっとも賞与の支給水準については企業間格差が大きいですから、一概にその水準が高い低いというのが難しいところです。
服部社長:
 そうですか、当社もお陰様で業績は好調なので、今年の夏季賞与は例年よりもプラスで支給しようと考えています。
宮田部長:
 社長、そういえば先日から産休に入った林さんの賞与はどうしたらよろしいですか?
服部社長:
 そうだね、彼女が産休に入ったのは4月に入ってからだったかな?大熊さん、当社では賞与の計算を行う際に出勤率を掛けているのですが、その取り扱いでよろしいでしょうか?
大熊社労士大熊社労士:
 はい、結論としては賞与算定期間における出勤率を乗じて、最終支給額を決定されれば良いでしょう。ちなみにこの問題に関して、ある有名な判例がありますので、ご紹介しておきます。最高裁で平成15年12月4日に出された「東朋学園事件」というものですが、この事件は賞与の支給要件の一つとして、出勤率(出勤した日数÷出勤すべき日数)が90%以上の者との定めていたという事案です。学園側は賞与の支給にあたり、産前産後休業の日数と勤務時間短縮措置の総時間数を欠勤扱いとすることとしましたが、不支給になった賞与の支払い等を求めて従業員側が提訴したのです。判決では「本件90%条項の趣旨・ 目的は、従業員の出勤率を向上させ、貢献度を評価して、従業員の高い出勤率を確保することであり、一応の経済的合理性がある。しかし、産前産後休業や勤務時間短縮措置による育児時間のような権利や利益は労基法等で保障されたものであり、それらの権利・ 利益を保障した法の趣旨を実質的に失わせるような賞与支給の要件を定めることは許されない」として労働者側の勝訴を言い渡しました。
服部社長:
 ということは、産前産後休業を取った場合はその休業の日も出勤したとみなして、賞与を支払わなければならないのでしょうか?
大熊社労士:
 いえ、そうではことではありません。賞与支給に関しては2つの点から判断が求められます。一つは賞与支給の対象者となるかという点と、もう一つは賞与の支給額はいくらになるかという点です。この判例が取り上げているのは前者の賞与の支給対象となるかどうかという点です。後者の点については、賞与の計算式「賞与算定基礎額×支給倍率×(出勤した日数÷出勤すべき日数)」で、実際に出勤した比率に応じて支給することができます。判決でも「賞与の計算式において、産前産後休業の日数分や勤務時間短縮措置の短縮時間分を減額の対象となる欠勤として扱うことは、直ちに公序に反し無効なものということはできない」と示しています。例えば、6ヶ月間の賞与算定期間のうち3ヶ月間にわたって産前産後休業を取得した場合は、休業しなかったときに支給を受けられるべき額の2分の1を支給すればよいということです。
服部社長服部社長:
 なるほど、理解できました。しかし、いろいろな判断のポイントがあるのですね。今後、わが社も正社員の他、パートタイマーも増員していくつもりです。その分、労務管理面では複雑になってくると思いますので、これからもよろしくお願いします。本日は、どうもありがとうございました。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。賞与を支給するときの査定の一要素として使われている出勤率について取り上げてみました。今回取り上げたのは「産前産後休業」ですが、その他に「有給休暇」や「育児休業」「介護休業」等についても同様のことが言え、これらは労働者に認められた権利のため、労働者にとって不利になるような取り扱いはできません。賞与は一般的に支給額が多いため、判断を誤ると労働者または会社にとって影響を大きく受けることから慎重に取り扱うことが必要です。従来から取り扱われていた社内ルールを鵜呑みにせず、それが適法なのかという視点でチェックを行ってみることも必要です。ぜひ一度確認してみてください。参考リンクにも参考になりそうな事例を挙げておきましたのでご覧ください。


[関連条文および通知]
労働基準法第11条
 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。


改正労働基準法の施行について(昭和六三年一月一日)(基発第一号、婦発第一号)
「年次有給休暇の取得に伴う不利益取扱い」
 精皆勤手当及び賞与の額の算定等に際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤として、又は欠勤に準じて取り扱うことその他労働基準法上労働者の権利として認められている年次有給休暇の取得を抑制するすべての不利益な取扱いはしないようにしなければならないものであること。年次有給休暇の取得に伴う不利益取扱いについては、従来、?年休の取得を抑制する効果を持ち、法第三九条の精神に反するものであり、?精皆勤手当や賞与の減額等の程度によっては、公序良俗に反するものとして民事上無効と解される場合もあると考えられるという見地に立って、不利益な取扱いに対する是正指導を行ってきたところであるが、今後は、労働基準法上に明定されたことを受けて、上記趣旨を更に徹底させるよう指導を行うものとすること。


当面の労働時間対策の具体的推進について(平成九年三月三一日)(基発第二三二号)
「年次有給休暇の取得に伴う不利益取扱いの是正」
 年次有給休暇の取得に伴う不利益取扱いの禁止の趣旨の周知徹底を図るとともに、精皆勤手当及び賞与の額の策定等に際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤として、又は欠勤に準じて取り扱うことその他不利益取扱いを行わないよう引き続き指導等を行うこと。



関連blog記事
2007年6月13日「賞与規程」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/54506727.html
2007年6月7日「日本経団連による2007年賃上げ最終集計 結果は6,202円(1.90%) 」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50989612.html
2007年5月30日「2006年の大企業年間賞与平均支給額 非管理職は1,576,821円・管理職は2,911,270円」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50983333.html
2007年5月25日「今夏の大企業賞与妥結額平均は938,555円(プラス2.77%)」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50979303.html
2007年5月9日「2007年夏季賞与は5年連続増加も伸び率は小幅に」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50965560.html
2007年6月5日「賞与試算シミュレーションソフト 最新バージョンv1.06の無料ダウンロード開始」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50976518.html


参考リンク
東京都産業労働局「2007年夏季一時金要求・妥結状況について(平成19年6月6日現在・中間集計)」
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2007/06/60h6b100.htm
茨城労働局「年内での退職を申し出たところ賞与が半分以下に/考課が合理的な裁量の限界を超えている場合は違法」
http://www.ibarakiroudoukyoku.go.jp/soumu/qa/chingin/chingin07.html
茨城労働局「賞与の支給日在籍条項は有効だが、解雇の場合は支払義務が生ずる場合もある」
http://www.ibarakiroudoukyoku.go.jp/soumu/qa/chingin/chingin05.html
島根労働局「支給日に在籍していなかったとして賞与をもらえない」
http://www.shimaneroudou.go.jp/consult/qanda/q23.html


(鷹取敏昭)


当社ホームページ「労務ドットコム」および「労務ドットコムの名南経営による人事労務管理最新情報」「Wordで使える!就業規則・労務管理書式Blog」にもアクセスをお待ちしています。

高校生アルバイトの時間外労働の原則的取扱いとその例外

 先日、あるお客様から「高校生のアルバイトを雇う際に注意をすることはありますか?」という質問をいただきました。今日は、この質問を元に18歳未満の労働者(年少者)の労働時間の原則と例外について取り上げましょう。



[質問]
 当社は書店を経営しており、夕方以降にはレジのアルバイトに高校生を採用していますが、夏休みには、この高校生アルバイトに朝から働いてもらおうと考えています。通常より長時間の労働となりますが、法的に問題ありませんか?


[回答]
 満18歳未満の年少者については、労働時間について一定の制限があります。これに抵触しないよう労働時間管理を行なわなければなりません。年少者については「時間外労働・休日労働に関する協定」(いわゆる36協定)は適用されないため、時間外労働や休日労働を行なわせることができません。従って、労働時間の原則である1日8時間、1週40時間を守る必要があります。但し、満15歳以上で満18歳に満たない労働者については、満18歳に達するまでの間(満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの間を除く。)は、1週間の労働時間が40時間以内に設定し、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮することにより、他の日の労働時間を10時間まで延長することができます。
例)以下のような勤務を行うことが認められています。
 月曜日~木曜日9時間 金曜日4時間(週合計40時間)


[まとめ]
 高校生については、回答のような例外はありますが、この例外を利用するためには、1日の労働時間及び1週間の労働時間をきちんと管理する必要があるため、実務上は非常に煩雑です。また、就業規則等で年少者の時間外労働を禁止している内容も多く、例外を利用するためにはこれらの整備も必要となってきます。これらの点を勘案すると、高校生については原則である1日8時間、1週40時間を守るようにすることが最善ではありますが、夏休みに向け、高校生のアルバイトをフル活用する事業所もあるでしょうから、今回の内容も知識としては押さえておきたいところです。


[参考条文]
労働基準法第60条(労働時間及び休日)
 第32条の2から第32条のまで、第36条及び第40条の規定は、満18歳に満たない者については、これを適用しない。
2 第56条第2項の規定によつて使用する児童についての第32条の規定の適用については、同条第1項中「1週間について40時間」とあるのは「、修学時間を通算して1週間について40時間」と、同条第2項中「1日について8時間」とあるのは「、修学時間を通算して1日について7時間」とする。
3 使用者は、第32条の規定にかかわらず、満15歳以上で満18歳に満たない者については、満18歳に達するまでの間(満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの間を除く。)、次に定めるところにより、労働させることができる。
1.1週間の労働時間が第32条第1項の労働時間を超えない範囲内において、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合において、他の日の労働時間を10時間まで延長すること。
2.1週間について48時間以下の範囲内で厚生労働省令で定める時間、1日について8時間を超えない範囲内において、第32条の2又は第32条の4及び第32条の4の2の規定の例により労働させること。



参考リンク
神奈川労働局「高校生などを使用する事業主の皆さんへ」
http://www.kana-rou.go.jp/users/kijyun/kokosei.htm
鹿児島労働局「年少者」
http://www.kagoshima.plb.go.jp/etc/seido/tebiki/tebiki09.html


(宮武貴美)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。

モバイルブロードバンド普及が仕事のあり方を変える

 先日、弊社社長の影山勝行が毎週連載している「影山勝行ウィークリーレポート」に「会計事務所の仕事が変わる!」という記事が掲載されました。イーモバイルなどのモバイルブロードバンドサービスの普及により、ホワイトカラーの仕事が大きく変わる可能性があるという内容です。こうしたネット環境の整備による仕事への影響は会計事務所に限った話ではありませんので、以下、その内容をご紹介したいと思います。



会計事務所の仕事が変わる! 2007/05/19



 イーモバイル株式会社が今年3月にスタートしたEMモバイルブロードバンドのサービスを試してみた。ノートパソコンにモバイルカードを差し込むだけでインターネットに快適にアクセス出来る。プロバイダー契約不要、月額5980円の定額料金、下り速度で3.6メガまで出る。私のオフィスは光を使っているが速度は殆ど変わらない。エリアも名古屋市及び周辺の主要地域はほとんど繋がる。


 会計事務所の仕事の大半は顧問先企業のオフィスに出向いて行う。パソコンにお客様の会計データや分析情報などを保存して持ち歩くことになるが、盗難や紛失のリスクをどうするかは大きな課題であった。自社内のサーバにデータを保存し、お客様の場所からネットでアクセスできればベストなのだが、お客様のところでネット接続の環境がないとこうした方法も無理である。従来のモバイルカードでは速度が遅すぎて、大きなファイルをサーバからダウンロードするのは実務的ではなかった。しかし、このEMモバイルは高速通信なので、今後の仕事のやり方に相当のインパクトを与えることになると思われる。


 会計ソフトを開いてネットに接続し、過去の決算書や内訳書などをサーバから読み込み、複数の画面を利用することで決算作業の効率化が可能になる。分厚い税法解説書を持ち歩かなくてもネットでその場での検索が可能になるし、何といってもデータを保存したパソコンを持ち歩く危険性が無くなることのメリットは大きい。必要な原始証憑等もその場で簡易スキャナーを用いて、社内のサーバに送信することも行ってみたが想像以上の速度で実現できた。


 パソコンと高速なモバイルカードを用いることによって、会計事務所としての仕事を行う「場所」に制限がなくなったことは、仕事のあり方を根本から変えるに違いない。



参考リンク
影山勝行経営フォーラム バックナンバー
http://www.meinan.net/column/col_keieiforum/back.htm
イーモバイル
http://www.emobile.jp/


(大津章敬)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。

入社誓約書(アルバイト用)

入社誓約書(アルバイト用) アルバイトの雇い入れ時に提出させる入社誓約書のサンプルです。
□重要度:
□官公庁への届出:不要
□法定保存期間:特になし(後々のトラブル発生を想定すれば、できるだけ長く保存することが望ましい)

[ダウンロード]
WORD
Word形式 nyusha_seiyaku_a.doc(29KB)
PDFPDF形式 nyusha_seiyaku_a.pdf(8KB)

[ワンポイントアドバイス]
 多くの企業でパートタイマーやアルバイトを中心としたいわゆる「非正規社員」が増加していますが、こうした従業員については労働条件の通知や誓約書の回収といった人事労務に関する整備が不十分な企業は少なくないようです。しかし、現実を見るとこうした非正規社員の雇用に関するトラブルが非常に増えており、正社員並みの雇用管理が求められています。


関連blog記事
2007年2月5日「パートタイマー労働契約書」
https://roumu.com/archives/52080828.html
2006年11月29日「労働者名簿」
https://roumu.com/archives/50842881.html

 

(宮武貴美)

人事労務の最新情報は「労務ドットコム」をご利用ください。
就業規則作成のご相談・コンサルティングのご依頼は名南経営まで。

人事実務「退職金制度の現状把握はどうすればいいか」

人事実務 現在発売されている人事実務2007年2月1日号の「Q&A実務講座」で、弊社人事コンサルタント大津章敬が執筆した記事が掲載されております。今回は退職金・年金をテーマとした連載の2回目として「退職金制度の現状把握はどうすればいいか」というテーマで、退職金制度の現状分析のポイントと具体的内容について解説しております。機会がございましたら、是非ご覧下さい。



参考リンク
産労総合研究所「人事実務」
http://www.e-sanro.net/sri/books/chinginjitumu/index.html


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。

関東・関西のアルバイト時給 過去最高をマーク!

 数ヶ月おきに取り上げております株式会社インテリジェンスによる、関東および関西エリアのアルバイト平均賃金に関する調査結果の11月分が発表となりました。


 これによれば、関東エリアのアルバイト求人情報98職種平均時給は1,048円(前月1,039円、前年同月1,020円・2.71%増)となっています。これは2006年7月と並んで、集計開始以来最高額となっています。一方、関西エリアですが、アルバイト求人情報98職種平均時給は986円(前月977円、前年同月956円・3.17%増)と、前月比6円の増加で、同集計開始以来最高額を更新しました。関東エリアでは時給の上昇傾向に若干の鈍りが見られますが、関西エリアは、前年増加率でも2006年9月以降若上昇傾向が見られ、高い水準が続いており、まだまだ時給が高騰していくものと予想されます。


 もっとも短期的には年末年始のアルバイト採用も一服しましたので、しばらくは若干落ち着きを取り戻すのではないでしょうか。もっともこのようにアルバイトの平均時給が高騰すると、アルバイトへの依存度が高い業種への影響が懸念されます。



参考リンク
インテリジェンス「11月のアルバイト98職種の平均賃金(関東・関西エリア)」
http://www.inte.co.jp/corporate/news/2006inte/20061226.html
関連blog記事
2006年8月31日「大幅な上昇を続けるアルバイトの平均時給」
https://roumu.com
/archives/50706827.html

2006年7月22日「高水準が続く関東エリアのアルバイト平均時給」
https://roumu.com
/archives/50654692.html


(大津章敬)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。

大幅な上昇を続けるアルバイトの平均時給

 先月もご紹介した株式会社インテリジェンスによる、関東および関西エリアのアルバイト平均賃金に関する調査結果の7月分が発表となりました。


 これによれば、関東エリアのアルバイト求人情報98職種平均時給は1,048円(前月1,041円)と、前月から7円と大幅増になり、集計開始以降の最高額を更新しました。また前年同月の平均時給は1,000円でしたので、対前年増加率は4.81%と、高い伸びが続いています。


 一方、関西エリア概況の平均時給は984円(前月976円)と、前月から8円アップし、4ヶ月連続の上昇。関東同様、集計開始以降最高額を更新しました。前年同月の平均時給は944円でしたので、対前年増加率は4.25%増で、こちらも集計開始以来最高の伸びを示しました。


 このように関東・関西とも相当のハイペースで平均時給が上昇しています。アルバイトへの依存度が高い業種では死活問題となってくるのではないでしょうか。



参考リンク
インテリジェンス「7月のアルバイト98職種の平均賃金(関東・関西エリア)」
http://www.inte.co.jp/corporate/news/2006inte/20060822.html
関連blog記事
2006年07月22日「高水準が続く関東エリアのアルバイト平均時給」
https://roumu.com
/archives/50654692.html


(大津章敬)


当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。