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コアタイムに遅刻・早退や欠勤があった場合、どのように取り扱えばよいのですか?

 先日より服部印刷ではフレックスタイム制を導入した場合の疑問点について、大熊社労士に相談しているが、今回は遅刻や早退などの欠務があった場合の取扱について話を聞くこととなった。



宮田部長:
 フレックスタイム制については、まだまだ疑問点がありそうです。引続き相談させてください。
大熊社労士:
 分かりました。フレックスタイム制は制度そのものの自由度が比較的高いために、いざ運用した時にどのように取り扱えばよいのか困ることが多くあるのではないかと思います。
宮田部長:
 そうですね。それでは早速ですが、今回、コアタイムを設ける方向で検討をしているところですが、コアタイムに遅刻した場合はどのように取り扱えばよいのでしょうか。
大熊社労士大熊社労士:
 これは非常に実務的なご質問ですね。まずは原則論をお話します。フレックスタイム制は、従業員に始業・終業時刻を自主的に決めさせる制度であるため、1ヶ月に何時間と設定した総労働時間を満たしている限り、遅刻や早退といった考え自体はしないことになります。そのため総労働時間を超えている限り、仮にコアタイムに遅刻があったとしても、その遅刻した時間分の賃金控除は行うことができません。
宮田部長:
 そうなんですか!そうしますと、欠勤についてはどのようになりますか?出勤しない日があっても総労働時間を満たしていれば、この場合も欠勤控除されることはなく、従業員が本人の裁量で出勤する日・しない日を決めることができるということですか?
大熊社労士:
 いえいえ、出勤するかどうかについては従業員に決定権はありません。あくまで始業と終業時刻の決定のみです。しかし、結果として欠勤があったとしても、フレックスタイム制のそのものが、清算期間の総労働時間をもって労働時間の過不足を清算するというものですから、遅刻や欠勤をしたからといってもその時間分の勤務を別の日にしているのであれば、欠勤控除はできないということになりますね。
福島照美福島さん:
 そうなると従業員の中に好き勝手に出勤するかどうかを決めて、結局週4日の出勤をするような者が出てくるのではないか心配です。コアタイムや出勤日を順守させる方法は何かないのでしょうか?
大熊社労士:
 はい、一般的にフレックスタイム制を導入すると規律面が低下しやすいとされますので、そうした実態としての対策を検討しておくことは重要です。具体的な方法としては3つ考えられます。まずは「インセンティブとして手当を支給」という方法です。これはコアタイムに遅刻や早退、欠勤をしなかった場合に手当を支給し、コアタイムに勤務することを促すものです。
宮田部長:
 要は精皆勤手当の発想ですね。
大熊社労士:
 はい、その通りです。次が「賞与査定への反映」、これは賞与において勤務査定の実績を加味する方法です。そして「制裁の適用」。就業規則に「正当な理由なくコアタイムに遅刻・早退、欠勤してはならない」と定め、指導してもなお何度も違反するような場合に、制裁規定を適用し減給処分を行います。
福島さん:
 なるほど。欠勤控除ができないとなると、上記のような方法で、間接的にコアタイムを守ってもらうような仕組みを設けておく方がよさそうですね。
宮田部長宮田部長:
 そうだな。もう一つ質問がありまして、フレックスタイム制であっても休憩は一斉に与えなければならないのでしょうか?様々な時間帯に出勤してくることになりますので、コアタイム内に自由に休憩をとってもらうようにできないかと考えています。
大熊社労士:
 フレックスタイム制であっても、休憩時間は休憩を与えなくてもよいとされている事業を除いては、原則、事業場単位で一斉に与える必要があります。そのため、一斉休憩が必要な場合については、コアタイム内に休憩時間を設定することになります。しかし、確かに出勤して1時間したら休憩時間になるのでは、業務効率が悪くなります。その場合、通常の休憩の一斉付与の適用除外と同じように、一斉休憩除外の労使協定を締結すれば、一斉に休憩を与えなくても問題ありません。具体的には、以下の2点を労使協定の中で定めておきます。
一斉に休憩を与えない労働者の範囲
一斉に休憩を与えない労働者に対する休憩の与え方
宮田部長:
 当社でも営業については労使協定を結んで一斉休憩の除外をしていたので、これに書き加えれば良いですね。
大熊社労士:
 そうですね。併せて、就業規則についても若干の修正が必要になります。具体的には、休憩時間の長さと休憩を取る時間帯については従業員に委ねることを明記しておいてください。
宮田部長:
 分かりました。せっかく就業規則の手直しをするのであれば、他に修正事項がないか点検してみます。
大熊社労士:
 なにかありましたら、いつでも質問ください。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。フレックスタイム制を導入している職場で派遣社員を雇い入れている場合については、その派遣社員についてもフレックスタイム制を適用した方が、業務を運営する上でスムーズにいくことがあります。そこで今回は、派遣社員についてもフレックスタイム制を適用する場合の手続きについて解説しましょう。


 手続きとしては、以下の3つがあります(昭和63年1月1日 基発第1号・婦発第1号)。
派遣元の就業規則に「始業・終業の時刻の決定を派遣社員にゆだねる」旨を定めること
派遣元において、派遣先のフレックスタイム制を参考にして、「フレックスタイム制に関する労使協定」が締結されていること
派遣先が派遣元との間で結ぶ派遣契約において、「派遣社員をフレックスタイム制の下で就業させる旨」を定めること



関連blog記事
2009年4月27日「フレックスタイム制での時間外手当の支払について教えてください」
https://roumu.com/archives/65083065.html
2009年4月20日「フレックスタイム制というのはどのような制度なのですか?」
https://roumu.com/archives/65082983.html
2007年1月21日「フレックスタイム制に関する労使協定」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/51767511.html
2008年3月5日「一斉休憩の適用除外に関する労使協定書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/55001175.html


参考リンク
厚生労働省「効率的な働き方に向けてフレックスタイム制の導入」
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/flextime/index.htm


(福間みゆき)


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労働者派遣契約に係る契約期間遵守証明書[雇用調整助成金]

労働者派遣契約に係る契約期間遵守証明書[雇用調整助成金] 雇用維持事業主申告書と併せて提出する必要がある労働者派遣契約に係る契約期間遵守証明書のサンプル(画像はクリックして拡大)です。
重要度:

[ダウンロード]
WORD
Word形式 haken_junshu.doc(30KB)
PDFPDF形式 haken_junshu.pdf(10KB)

[ワンポイントアドバイス]
 この証明書は、奨励金を受けようとする事業主ではなく、支給対象となる派遣労働者を雇用する派遣元事業主が記入することになっています。そのため、雇用維持を行う判定基礎期間を過ぎましたら、なるべく早く派遣元事業主に記入してもらうように依頼しましょう。


関連blog記事
2009年4月27日「雇用維持事業主申告書[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55254713.html
2009年3月31日「ワークシェアリング推進の大型助成金 残業削減雇用維持奨励金が創設」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51527922.html
2009年3月30日「[速報]雇用調整助成金の助成率 本日の省令で大企業3/4 中小企業9/10へ引上げ」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51527777.html
2009年4月9日「残業削減実施事業所の事業活動の状況に関する申出書」
https://roumu.com/archives/55245567.html
2009年4月6日「残業削減雇用維持奨励金残業削減計画届」
https://roumu.com/archives/55245569.html
2009年3月4日「出向元事業所支給対象賃金負担額調書 様式第6号(4)-2[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55226378.html
2009年3月2日「出向元事業所支給対象賃金補填額調書 様式第6号(4)-1[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55226376.html
2009年2月27日「出向に関する確認書 様式第6号(3)[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55226374.html
2009年2月25日「様式第6号(2)-2[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55225952.html
2009年2月23日「様式第6号(2)-1[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55225950.html
2009年2月20日「雇用調整助成金(出向)支給申請書 様式第6号(1)[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55224895.html
2009年2月18日「教育訓練受講証明書 様式第107号[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55222586.html
2009年2月16日「残業実績内訳書 様式第105号(6)-2[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55222578.html
2009年2月13日「残業実績申立書 様式第105号(6)[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55221364.html
2009年2月11日「様式第105号(4)[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55216480.html
2009年2月9日「様式第105号(3)[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55216475.html
2009年2月6日「助成額算定書 様式第105号(2)」
https://roumu.com/archives/55216474.html
2009年2月4日「休業等支給申請書 様式第105号(1)」
https://roumu.com/archives/55215921.html
2009年2月2日「出向等実施計画(変更)届 様式第102号(1)」
https://roumu.com/archives/55215904.html
2009年1月30日「雇用調整実施事業所の事業活動及び雇用の状況に関する申出書 様式第101号(2)」
https://roumu.com/archives/55213392.html
2009年1月28日「休業等実施計画(変更)届 様式第101号(1)」
https://roumu.com/archives/55213383.html
2009年1月26日「休業等実施計画(変更)届 様式第101号(1)」
https://roumu.com/archives/55213383.html
2009年1月26日「休業・教育訓練実施結果表」
https://roumu.com/archives/55212370.html
2009年1月23日「休業・教育訓練実施予定表」
https://roumu.com/archives/55210909.html
2009年1月5日「労働者代表選任届(休業)」
https://roumu.com/archives/55197846.html
2009年1月2日「委任状(休業)」
https://roumu.com/archives/55197845.html
2008年11月28日「休業協定書」
https://roumu.com/archives/55183250.html

 

(福間みゆき)

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雇用維持事業主申告書[雇用調整助成金]

雇用維持事業主申告書[雇用調整助成金] 平成21年3月30日に拡充された雇用調整助成金制度において、労働者の解雇等を行わない旨の申告をする際に、提出する必要がある雇用維持事業主申告書のサンプル(画像はクリックして拡大)です。
重要度:

[ダウンロード]
WORD
Word形式 koyouiji_shinkoku.doc(55KB)
PDFPDF形式 koyouiji_shinkoku.pdf(18KB)

[ワンポイントアドバイス]
 雇用維持を行う場合に助成率の上乗せ(雇用調整助成金の場合 3分の2→4分の3 中小企業緊急雇用安定助成金の場合 5分の4→10分の9)が行われることになりました。ただし、雇用保険基本手当日額の最高額(現時点では7,730円)が限度となります。なお、派遣労働者を受け入れている場合については、以下の2点を併せて添付する必要があります。
労働者派遣契約に係る契約期間遵守証明書(様式第14号(2))
役務の提供を受けている派遣労働者の派遣就業の実態が確認できる派遣先管理台帳の写し等の書類

 なお、最新の書式は、以下のリンク先にありますので、こちらをご利用ください。
 https://roumu.com/archives/55463892.html


関連blog記事
2009年3月31日「ワークシェアリング推進の大型助成金 残業削減雇用維持奨励金が創設」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51527922.html
2009年3月30日「[速報]雇用調整助成金の助成率 本日の省令で大企業3/4 中小企業9/10へ引上げ」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51527777.html
2009年4月9日「残業削減実施事業所の事業活動の状況に関する申出書」
https://roumu.com/archives/55245567.html
2009年4月6日「残業削減雇用維持奨励金残業削減計画届」
https://roumu.com/archives/55245569.html
2009年3月4日「出向元事業所支給対象賃金負担額調書 様式第6号(4)-2[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55226378.html
2009年3月2日「出向元事業所支給対象賃金補填額調書 様式第6号(4)-1[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55226376.html
2009年2月27日「出向に関する確認書 様式第6号(3)[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55226374.html
2009年2月25日「様式第6号(2)-2[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55225952.html
2009年2月23日「様式第6号(2)-1[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55225950.html
2009年2月20日「雇用調整助成金(出向)支給申請書 様式第6号(1)[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55224895.html
2009年2月18日「教育訓練受講証明書 様式第107号[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55222586.html
2009年2月16日「残業実績内訳書 様式第105号(6)-2[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55222578.html
2009年2月13日「残業実績申立書 様式第105号(6)[雇用調整助成金]」
https://roumu.com/archives/55221364.html
2009年2月11日「様式第105号(4)[雇用調整助成金]」
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2009年2月9日「様式第105号(3)[雇用調整助成金]」
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2009年2月6日「助成額算定書 様式第105号(2)」
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2009年2月4日「休業等支給申請書 様式第105号(1)」
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2009年2月2日「出向等実施計画(変更)届 様式第102号(1)」
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2009年1月30日「雇用調整実施事業所の事業活動及び雇用の状況に関する申出書 様式第101号(2)」
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(福間みゆき)

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フレックスタイム制での時間外手当の支払について教えてください

 服部印刷では前回、製造部制作課のDTPオペレーターへのフレックスタイム制導入に向け、大熊よりこの制度の基本的なレクチャーを受けた。依頼者である製造部長との社内打ち合わせの結果、運用面において疑問点が出てきたため、引続き相談することとなった。



宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。例のフレックスタイム制に関して製造部長と打ち合わせを行ったところ、実際の運用面においてどのようになるのか疑問が出てきたため、確認させてください。
大熊社労士:
 分かりました。いろいろ検討されたようですね。
宮田部長:
 はい。まず最初の疑問点ですが、フレックスタイム制と通常の勤務時間をミックスさせることはできないのでしょうか。具体的には、1週間のうち1回ほど、会議や部内ミーティングを開く必要があるため、その日だけフレックスタイム制を適用せず、これまでどおりの勤務時間で行うといった取り扱いができないのかという意見が出てきたのですが。
大熊社労士:
 うーん、これは難しいですね。フレックスタイム制をこのような変則的な形で行うことは、制度そのものの趣旨に反しますね。なぜならフレックスタイム制においては、清算期間のすべての日において、始業・終業の時刻が従業員の決定にゆだねられている必要があるからです。
宮田部長:
 それでは、一時的に適用しないといったこともできないのでしょうか。
大熊社労士:
 そうですね。例えば会議の日は従業員の個別同意を得た上で会議の時間に出社してもらうのであれば問題ないでしょう。組織を運営する中では今回のように、一定の時間に勤務してもらう必要が出て来ることは避けられません。そうした場合に事情を従業員に説明して勤務を要請すること自体は、業務運営上認められる範囲と考えられます。もっともあまり乱発すると問題ではありますが。
福島さん:
 別の方法として週に1日だけ、コアタイムを前に繰り上げることはできないのでしょうか。
大熊社労士:
 それは可能ですね。例えば通常のコアタイムが「午前10時から午後3時」の場合で、会議を行う日だけ「午前9時30分から午後2時30分」としてコアタイムの開始時刻を繰り上げておくことが考えられます。ただし、午前中のフレキシブルタイムが極端に短くならないように注意が必要ですね。
宮田部長:
 なるほど。次に、時間外や休日労働の割増について教えてください。DTPのオペレーターはお客様のご要望に対応するために短納期の仕事を避けることができず、やはり残業が多いものですからフレックスタイム制を導入することでどのようになるのか気になります。
大熊社労士:
 はい、まず時間外についてお話します。フレックスタイム制の場合、通常、1ヶ月間を清算期間として、この1ヶ月の単位で労働時間を把握します。そのため、1日8時間や1週間40時間ではなく、清算期間の総労働時間と実際の労働時間との間で、過不足分を清算します。
福島さん:
 例えば、実際に働いた時間が200時間で、もともと設定した時間が1日8時間×20日で160時間だったときは、差の40時間が時間外労働になるということですね。
大熊社労士:
 考え方としてはその通りです。ただし細かなことを言いますと、法定内残業と法定残業とに分けることになります。
宮田部長:
 この話は、以前お聞きした「パートに残業をさせた際の時間外手当」と同じ考え方ですね。
大熊社労士:
 はい。法定内残業については割増部分を払う必要はなく(法定内残業についても割増の対象とする定めをしている場合は除く)、通常の賃金相当額を支払うことで足ります。具体的に説明しましょう。清算期間が1ヶ月の場合(法定労働時間が40時間の事業場)、法定労働時間の総枠としては30日の月では171時間25分(40時間×30日÷7日)、31日の月では177時間8分(40時間×31日÷7日)となります。もともと設定した時間が160時間、実際の労働時間が200時間であっても、例えば30日の場合であれば、171時間25分までは割増賃金を支給する必要はなく、通常の賃金相当額を支払えば問題ありません。そして、171時間25分を超えた部分(28時間35分)については、時間外割増が必要で、通常の賃金相当額に1.25を乗じて計算した金額を支払うことになります。
宮田部長:
 分けて考える必要があるということですね。
大熊社労士:
 厳密に管理する場合にはそのとおりです。次に休日労働についてですが、フレックスタイム制は始業・終業時刻を従業員に委ねるもので、休日については自由に選択できる制度ではありません。そのため、労働基準法第35条が適用され、少なくとも毎週1日もしくは4週につき4日の休日を与える必要があり、法定休日に勤務させた場合は休日労働割増の支払が必要です。また、深夜労働についても同じ考えとなり深夜割増の支払が必要となります。
宮田部長:
 なるほど。従業員に始業・終業時刻を任せるだけであって、会社は勤務時間を把握してきちんと清算しなければならないということですね。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は、労働時間の清算方法についてお話しましょう。原則としては、該当する清算期間内で労働時間と賃金を清算していきますが、通達(昭和63年1月1日 基発第1号・婦発代1号)において次のような取り扱いが認められています。
実際の労働時間が総労働時間を超えた場合
 この場合、総労働時間を超えた部分については、次の清算期間の総労働時間に繰り越すことはできません。時間外労働として清算期間内で賃金の清算を行います。
実際の労働時間に不足があった場合
 この場合、定められた時間分の賃金を全額支払った上で、総労働時間に達しなかった時間分を次の清算期間の総労働時間に上積みすることは、法定労働時間の枠内の範囲内であれば問題ありません。ただし、次の清算期間の総労働時間が法定労働時間の総枠を超えた場合は、超過した時間については時間外労働となり、割増賃金を支払う必要が出てきますので、この点に注意が必要です。



関連blog記事
2009年4月20日「フレックスタイム制というのはどのような制度なのですか?」
https://roumu.com/archives/65082983.html
2007年1月21日「フレックスタイム制に関する労使協定」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/51767511.html


参考リンク
厚生労働省「効率的な働き方に向けてフレックスタイム制の導入」
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/flextime/index.htm


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職場復帰及び就業上の配慮に関する情報提供書(平成21年3月改訂)

職場復帰及び就業上の配慮に関する情報提供書(平成21年3月改訂) 心の健康問題により休業している労働者が職場復帰する際に、主治医に情報提供するための書式サンプル(画像はクリックして拡大)です。
重要度 ★★

[ダウンロード]
word
Word形式 mental_fukki21.doc(30KB)
PDFPDF形式 mental_fukki21.pdf(8KB)

[ワンポイントアドバイス]
 心の健康問題を抱える労働者は通常、復帰後も定期的に主治医の診療を受診します。このため、主治医へは職場復帰のタイミングで事業場の対応や就業上の配慮の内容等について情報提供しておくことが望ましいでしょう。この情報交換により、産業医等と主治医が連携を図りながら職場復帰後のフォローアップを行なうことが期待できます。

 平成21年3月の改訂で文面等が若干変更になりました。


関連blog記事
2009年4月20日「職場復帰に関する意見書(平成21年3月改訂)」
https://roumu.com/archives/55246980.html
2009年4月16日「職場復帰支援に関する面談記録票(平成21年3月改訂)」
https://roumu.com/archives/55246979.html
2009年4月13日「職場復帰支援に関する情報提供依頼書(平成21年3月改訂)」
https://roumu.com/archives/55246978.html

 

参考リンク
厚生労働省「「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の改訂について」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei28/index.html

(宮武貴美)

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[ワンポイント講座]派遣社員は常用労働者数にカウントするのか

 4月になると人事異動が多く行われることから、事業所単位で社員の人数を数えてみると以前よりもかなり増減しているところもあるのではないでしょうか。衛生管理者の選任など事業所の安全衛生管理体制を構築していく上では、事業所の労働者の人数がキーポイントとなるため、人数を定期的にチェックしておくことが望まれます。そこで、今回は派遣社員を受け入れている場合の安全衛生管理体制の構築についてお話しましょう。


 法令により求められる安全衛生管理体制は、事業所の業種や労働者の人数によって異なりますが、主なものとしては、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医の選任が挙げられます。特に衛生管理者については、業種にかかわらず常時使用する労働者の人数が50人以上であれば、選任することが義務づけられています。ここで問題になるのが、「常時使用する労働者の人数」の定義ですが、これについては通達が出されており、日雇労働者、パートタイマー等も含めて、常態として使用する労働者の人数を指しています。つまり、正社員だけでなく、その事業所で働くパートやアルバイトも含めて、常用労働者数をカウントする必要があります。そのため、会社としては企業単位ではなく、本社や営業所ごとに労働者の人数を把握して、それにあった安全衛生管理体制を構築することが求められています。


 さて今回の主題である派遣労働者ですが、派遣労働者についてはこの常用労働者の人数としてカウントする必要があるのでしょうか?例えば、本社事業所の人数がパートやアルバイトをいれると45人であるが、派遣社員を入れると50名を超えてしまうといったケースがあります。この場合、全体の人数が50人を超えているので衛生管理者の選任義務があるのでしょうか。それとも自社の社員だけであれば50人を下回っているため、選任の義務はないのでしょうか。この労働者の人数のカウントについても通達が出されており、派遣先については派遣労働者の数を含めて常時使用する労働者の数を算出することになっています。そのため、派遣労働者の人数を含めると事業所の総人数が50人以上となるのであれば、衛生管理者を1人以上置かなければならないということになります。


 また近年においては、過重労働やメンタルヘルスへの対策として使用者の対応責任が高まり、それに伴って衛生管理者に求められる役割が重大なものになっています。また、労働基準監督署が行う定期監督においても、衛生委員会の開催など安全衛生管理体制が適切に守られているのかといった点を重視するようになっています。そのため、企業としては法で定められた人数を満たす衛生管理者が選任されているのかチェックし、足りないようであれば早急に対応することが求められます。


[関連法規]
労働安全衛生法 第12条(衛生管理者)
 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第10条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第1項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。
2 前条第2項の規定は、衛生管理者について準用する。


労働安全衛生法施行令 第4条(衛生管理者を選任すべき事業場)
 法第12条第1項の政令で定める規模の事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場とする。


[関連通達]
昭和47年9月18日 基発第602号
 本条で「常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する」とは、日雇労働者、パートタイマー等の臨時的労働者の数を含めて、常態として使用する労働者の数が本条各号に掲げる数以上であることをいうものであること。


昭和61年6月6日 基発第333号、昭和63年10月1日 基発第652号
 派遣中の労働者に関しての総括安全衛生管理者、衛生管理者、安全衛生推進者等および産業医の選任の義務並びに衛生委員会の設置の義務は、派遣先事業者および派遣元事業者の双方に課せられているが、当該事業場の規模の算定に当たっては、派遣先の事業場および派遣元の事業場の双方について、それぞれ派遣中の労働者の数を含めて、常時使用する労働者の数を算出するものであること。



関連blog記事
2008年10月17日「中小企業で遅れる長時間労働者に対する医師による面接指導制度の認知」
https://roumu.com
/archives/51429470.html

2008年9月5日「職場で急増する職務内容や負荷、環境に関する悩み」
https://roumu.com
/archives/51402104.html

2008年9月2日「長時間労働者への医師による面接指導の記録保存」
https://roumu.com
/archives/51401811.html

2008年3月25日「平成20年4月から長時間労働者への医師による面接指導の実施が50人未満の事業所でも義務化」
https://roumu.com
/archives/51285202.html


参考リンク
栃木労働局「安全衛生管理体制の構築について」
http://www.tochigi-roudou.go.jp/hourei/eisei/kanritaisei.html


(福間みゆき)


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フレックスタイム制というのはどのような制度なのですか?

 服部印刷では、現場からフレックスタイム制の導入要望が寄せられたことから、宮田部長は大熊社労士に相談してみることにしました。



宮田部長宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。実は先日、製造部長から制作課のDTPオペレーターについてフレックスタイム制を導入してもらえないかという相談があったのです。
大熊社労士:
 フレックスタイム制ですか。
宮田部長:
 はい。制作課については担当案件によって勤務時間が不規則になりがちなのです。これまでは現場で工夫しながらなんとか回していたのですが、やはりいまの固定的な始業・終業時刻では業務の実態に合わず、働きにくいという意見が強くなっているようなのです。
大熊社労士:
 確かに、会社全体で同じ勤務時間のルールを適用させなければならないということはありませんね。業務の実態に合わせ、働きやすい環境を創っていくことも総務の大きな役割だと思います。
宮田部長:
 そこでですが、フレックスタイム制について基本的なところから教えてください。お聞きした上で、導入すべきかそれとも現行の制度を少し修正すればよいのか、検討してみたいと考えています。
大熊社労士:
 わかりました。フレックスタイム制とは、簡単に言いますと1ヶ月に何時間働くのかを決めておき、従業員はその中で始業時刻や終業時刻を柔軟に決定していく制度のことをいいます。例えば、今日は10時から19時まで、翌日は8時半から15時までというように、業務の実態にあわせ、自律的に労働時間を決めて働くことができるというものです。
福島さん:
 これが導入されれば、社員は柔軟に働くことができますね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうです。例えば、1ヶ月単位や1年単位の変形労働時間制も業務の繁閑に応じて柔軟に働くことができる制度ですが、フレックスタイム制は更に進んで、従業員が毎日の労働時間を自ら裁量をもって決定するという点に特徴があります。
宮田部長:
 なるほど。しかし、あまりに自由度が高いとお客様や社内からの連絡が付きにくくなるなど、様々な問題が懸念されます。この時間は、必ず勤務するように決めておくことは可能ですか。
大熊社労士:
 はい、可能です。完全に自由とするのではなくコアタイムを設けて、この時間帯は必ず勤務するようにと設定することができます。
福島さん:
 当社の場合、11時から15時までは勤務しておいてもらいたいと思います。このコアタイムは何時間位の幅をもたせることができるのでしょうか。コアタイムの時間帯が長いと、従業員の自由裁量がなくなってしまい、そもそもフレックスタイム制は合わないのではないかと思うのですが。
大熊社労士:
 福島さんの考えのとおりですね。何時間といった時間数は特に示されていませんが、コアタイムの時間帯が長く、協定で定める「標準となる1日の労働時間」とほぼ一致するような場合には、始業・終業時刻を従業員の決定に委ねていることにはならず、フレックスタイム制のそのもの趣旨に反するとされます。
宮田部長:
 コアタイムと併せてフレキシブルタイムというものがあったと思いますが、それはどのようなものですか。
大熊社労士:
 はい、フレキシブルタイムとは、従業員が自分の選択によって働くことができる時間帯を示しておくものです。極端な例ですが、コアタイムもフレキシブルタイムも設けない場合には、深夜の22時に出社して、朝の7時に帰宅するというようなことも起こり得ます。会社としてはこうした状況は困るのではないでしょうか?
福島照美福島さん:
 はい、それは困ります。コミュニケーションを取ることができないだけでなく、過重労働にならないかそちらの方が心配です。やはり職場の規律を維持していく上でもある程度、時間帯を示しておく必要があるのではないでしょうか。
宮田部長:
 確かにそうだ。もしも制度を導入するのであれば、コアタイムとフレキシブルタイムは設けておくべきだね。今日はここまでにして、製造部長の考えを確認してみます。その上でまた相談させてください。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。フレックスタイム制を導入するためには2つの要件があります。まず1つ目が、就業規則等に「始業および終業の時刻を労働者にゆだねること」を定めておくことです。また、労働基準法第89条第1項に、「始業および終業の時刻に関する事項は、就業規則に定めること」とされているため、コアタイム、フレキシブルタイムを設ける場合については、就業規則への記載が必要になっています。そして、2つ目が労使協定を締結することです。この協定は、事業場ごとに締結する必要がありますが、締結を行う者はその事業場に所属している必要はなく、従業員の過半数を占める労働組合の委員長であっても問題ありません。なお、この協定については労働基準監督署に届け出る必要はありません。



関連blog記事
2007年1月21日「フレックスタイム制に関する労使協定」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/51767511.html


参考リンク
厚生労働省「効率的な働き方に向けてフレックスタイム制の導入 」
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/flextime/index.htm


(福間みゆき)


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職場復帰に関する意見書(平成21年3月改訂)

職場復帰に関する意見書(平成21年3月改訂) 心の健康問題により休業している労働者の最終的な職場復帰判断の際に利用する産業医の意見書サンプル(画像はクリックして拡大)です。
重要度 ★★

[ダウンロード]
word
Word形式 mental_iken21.doc(32KB)
PDFPDF形式 mental_iken21.doc(8KB)

[ワンポイントアドバイス]
 メンタルヘルス不全者の職場復帰の決定は、その可否についての判断および職場復帰支援プランの作成を経て行われますが、この際、産業医等が選任されている事業場においては、産業医等が職場復帰に関する意見および就業上の措置等についてとりまとめた「職場復帰に関する意見書」を作成し、それをもとに関係者間で内容を確認しながら手続きを進めていくことが望ましいでしょう。ここでは復職の可否およびその意見、また復職可または条件付き可の場合には、就業上の配慮の内容を明確にしていきます。

 平成21年3月の改訂で文面等が若干変更になりました。


関連blog記事
2009年4月16日「職場復帰支援に関する面談記録票(平成21年3月改訂)」
https://roumu.com/archives/55246979.html
2009年4月13日「職場復帰支援に関する情報提供依頼書(平成21年3月改訂)」
https://roumu.com/archives/55246978.html

 

参考リンク
厚生労働省「「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の改訂について」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei28/index.html

(宮武貴美)

人事労務の最新情報は「労務ドットコム」をご利用ください。
就業規則作成のご相談・コンサルティングのご依頼は名南経営まで。

職場復帰支援に関する面談記録票(平成21年3月改訂)

職場復帰支援に関する面談記録票(平成21年3月改訂) 心の健康問題により休業している労働者の職場復帰判断を行なう際に、職場復帰の可否および職場復帰支援プランに関する話し合いの結果をまとめておく書式サンプル(画像はクリックして拡大)です。
重要度 ★★

[ダウンロード]
word
Word形式 mental_kiroku21.doc(33KB)
PDFPDF形式 mental_kiroku21.pdf(9KB)

[ワンポイントアドバイス]
 安全でスムーズな職場復帰を支援するためには、最終的な職場復帰決定の手続きの前に、必要な情報の収集と評価を行った上で職場復帰の可否を適切に判断し、更には職場復帰を支援するための具体的プランを準備しておくことが求められます。このプロセスは、事業場内の産業保健スタッフ等を中心に、管理監督者および当該労働者の間で十分に話し合い、良く連携しながら進めていく必要がありますが、その面談の結果をこの記録票にまとめ、関係者がその内容を互いに確認しながら進めることが求められています。

 平成21年3月の改訂で文面等が若干変更になりました。


関連blog記事
2009年4月13日「職場復帰支援に関する情報提供依頼書(平成21年3月改訂)」
https://roumu.com/archives/55246978.html

 

参考リンク
厚生労働省「「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の改訂について」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei28/index.html

(宮武貴美)

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パートに残業をさせた際の時間外手当はどのように計算すればよいですか?

 服部印刷では、3月にパートタイマーの退職があったため、4月から新しくパートタイマーを雇うことになった。本日はそのパートタイマーに交付する労働条件通知書の記載方法について大熊に相談をすることとした。



宮田部長:
 大熊先生、こんにちは。実は3月にパートさんの退職がありましたので、今月から2人補充することになりました。
大熊社労士:
 そうですか。確かパートさんについては長年勤められる方が多いというお話でしたね。
宮田部長宮田部長:
 はい。当社のパートさんは、みんな長く働いてくれています。今回はご主人の転勤ということで退職せざるを得ず、本当に残念でした。そこで相談なのですが、久しぶりに労働条件通知書を作るものですから、一点教えてください。労働条件通知書の様式の中の「賃金」のところに、「所定時間外、休日または深夜労働に対して支払われる割増賃金率」を書く欄がありますが、「法定超」と「所定超」という二つがあります。この違いは何でしょうか?
大熊社労士:
 なるほど。それでは、具体例を挙げて解説しましょう。Aさんは1日の所定労働時間が8時間、Bさんは1日の所定労働時間が6時間で、二人とも週3回の同じ日に勤務するとします。パートのため基本的には残業をしてもらうことは少ないと思いますが、もしAさんが残業した場合、8時間以降の勤務については、労働基準法に基づいて時間外割増を支払わなければなりませんね。
福島さん:
 もちろんです。
大熊社労士:
 それでは、Bさんはどうですか?Bさんとの雇用契約では、1日6時間働くことになっています。Bさんに残業をお願いする場合、6時間以降の勤務については時間単価をどのように取扱いますか?
宮田部長:
 Bさんは残業になりますので、25%増の単価になるのではないでしょうか?
福島照美福島さん:
 いや、宮田部長、それはおかしいように思います。同日に同じように勤務を行って、Aさんの場合、8時間働いた以降の勤務についてはじめて割増賃金がつくにも関わらず、Bさんは6時間勤務した後であれば8時間以内であっても割増された賃金になってしまいます。
大熊社労士:
 そうなのです。例えば二人の時給が同じ1,000円とすると、Aさんの場合、8時間以降の勤務については時間単価が1,250円となりますが、Bさんについては、6時間勤務した後の時間単価から1,250円となってしまいます。同じように働いておきながら、6時間勤務した後の時間単価をみると、Aさんは1,000円、Bさんは1,250円となり、Bさんだけが高くなってしまいますね。
宮田部長:
 確かに比較してみると変な感じがします。Bさんも8時間までは同じ1,000円で、8時間を過ぎたら、1,250円とすることはできないのでしょうか?
大熊社労士:
 それを示しているのが、労働条件通知書にある「法定超」「所定超」という区分です。そもそも割増賃金の支払いが必要となるのは、労働基準法第37条に定められているように「法定(労働時間)超」となる1日8時間、1週40時間を超えた場合です。
宮田部長:
 なるほど。「法定超」には法定割増率、つまり当社であれば25%と記入すればよいのですね。では「所定超」はどのようにすればよいのですか?
大熊社労士大熊社労士:
 「所定超」については、所定労働時間を超えた時間、つまりBさんであれば契約時間である6時間を超えた以降8時間に至るまでの時間単価についてどのような取扱いにするのかを記入するのです。所定超については法律で何も定められていませんので、割増をつけず0%としても、法定超と同じように25%の割増をつけるといった取扱いとしても構いません。
宮田部長:
 なるほど。それでは「所定超」のところを0%とすれば、Bさんが残業したとしても、8時間を超えるまでは割増をつけない1,000円の時間単価で働いてもらうことができるということですね。わかりました。当社ではどのような取扱いにするのか社長に相談してみます。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。平成20年4月1日にパートタイム労働法が改正され、パートタイマーについては、採用する際、労働基準法で書面による明示が義務づけられている項目に加えて、次の3点を文書の交付等により明示することになりました。
昇給の有無
退職手当の有無
賞与の有無


 この明示については、新規に採用する場合だけでなく、契約を更新した場合で再度契約を結び直すような場合も必要になります。また、この明示に違反した場合については罰則(10万円以下の過料)がありますので、様式に不備がないかチェックしておきましょう。



関連blog記事
2007年11月2日「ダウンロード開始!平成20年4月改正パートタイム労働法対応モデル労働条件通知書」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51145821.html
2007年11月2日「モデル労働条件通知書(平成20年4月改正パートタイム労働法対応版)」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/54869701.html
2007年9月21日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント4 苦情処理・紛争解決援助」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51063284.html
2007年9月18日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント3 通常の労働者への転換の推進」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51062853.html
2007年9月11日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント2 均衡のとれた待遇の確保の促進」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51062839.html
2007年9月7日「平成20年4月改正 パートタイム労働法のポイント」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51061223.html


参考リンク
厚生労働省「パートタイム労働法の改正について」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2007/06/tp0605-1.html


(福間みゆき)


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