[改正労基法]割増賃金率引上げに伴う労働条件通知書見直しの必要性

 来年4月に施行される改正労働基準法ですが、先日、これに係る質疑応答が厚生労働省から公表されました。通達等では明確になっていない部分や通達の内容から更に踏み込んだ内容が盛り込まれていますので、この重要な部分を本日より数回に分けて解説しましょう。第1回目の本日は(1)時間外労働、(2)法定割増賃金、(3)代替休暇、(4)時間単位年休の4つのカテゴリのうち、(1)時間外労働の労働条件明示との関係について取りあげましょう。


 改正労働基準法では、いわゆる「時間外労働の限度基準」が改正され、限度時間を超える時間外労働に対しては、割増賃金率を引上げるよう努力義務が課せられました。また、限度時間を超える時間外労働の割増率について36協定に定めることになっています。質疑応答では、この限度時間を超える場合の割増賃金率について労働者に対し、明示する必要があるのかを問い合わせており、回答では労働基準法第15条で定める明示事項に該当するため、書面で明示する必要があるとしています。これにより36協定において特別条項を結んでいる企業では、36協定の内容のみならず、労働条件通知書の内容も見直さなければなりません。


[質疑応答該当部分]
Q3

 限度基準に定める限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率は、法第15条第1項の規定による労働条件の明示に当たり、則第5条第1項第3号の賃金に関する事項として書面により明示する必要があると解してよいか。


A3
 法第15条第1項の労働条件の明示に当たっては、賃金の決定、計算及び支払の方法を明示することとなっているため、当該割増賃金率についても書面で明示する必要がある。


[関連法規]
労働基準法 第15条(労働条件の明示)
 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2  前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即
時に労働契約を解除することができる。
3  前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。


労働基準法施行規則 第5条
 使用者が法第十五条第一項 前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。ただし、第四号の二から第十一号までに掲げる事項については、使用者がこれらに関する定めをしない場合においては、この限りでない。
一  労働契約の期間に関する事項
一の二  就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
二  始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
三  賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
四  退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
四の二  退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
五  臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
六  労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
七  安全及び衛生に関する事項
八  職業訓練に関する事項
九  災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
十  表彰及び制裁に関する事項
十一  休職に関する事項
2  法第十五条第一項 後段の厚生労働省令で定める事項は、前項第一号から第四号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)とする。
3  法第十五条第一項 後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。



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参考リンク
厚生労働省「労働基準法が改正されます(平成22年4月1日施行)」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/tp1216-1.html
厚生労働省「改正労働基準法に係る質疑応答」
http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/dl/tp1216-1k.pdf


(宮武貴美)

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