中国人事管理の先を読む!第19回「進出企業の人事制度(13)人事考課①」

 今回からは、社員の評価についてお話を進めたいと思います。人事考課をどのように制度化するかは、企業の人事制度にとって非常に大きなポイントとなってまいります。人事考課は即ち、社員の育成に直結してまいります。そのような視点から考えた場合、社員をどのように育てていきたいかということと、制度にした場合に会社や組織の方針にとってしっくりくるかということも含めて整備していかなければなりません。ことさら経営者は理想や気持ちの焦りから複雑な制度や高いレベルの考課制度を導入したくなるものですが、現在の組織や社員の能力レベルで果たしてそのような制度がすぐに運用できるのかということも同時に考慮していかなければなりません。

 人事考課制度は4割が制度そのもの、6割が運用というように、良い制度として役割を果たすためには運用面に大きく左右されるものです。従って、どんなに良い制度を作っても、あまりに背伸びしすぎてしまうと実際には運用できないという現象が起こりやすくなります。人事考課制度が現状に馴染むのかどうかは組織の成長とともに修正を加えていけばよいのです。兎にも角にも運用できる制度ということを念頭に構築して頂きたいと思います。

 人事考課には2つの要素があり、ひとつは社員の業績(=パフォーマンス)を評価するもの、もうひとつは社員の保有するポテンシャルな能力を評価するものに区分されます。業績はよく「目標管理制度」として制度化され、能力は「能力基準」として考課制度として形成されます。

 「能力基準」は多くの企業で使われておりますが、問題は「目標管理」を取り入れるかどうかの判断になります。日本の企業の多くは目標管理制度を導入しているため、経営者は中国でも目標管理を実施したいという要望を抱くのは理解できます。しかし、現状の社員の能力レベルで目標管理を行うのが得策かどうかを慎重に判断しなければなりません。目標管理は単に目標を持たせて遂行させるだけでは不十分で、目標を設定させるところから定期的に進捗を確認するところまで行う必要があり、言い換えれば管理者自身の負担も非常に大きなものとなります。これを疎かにしてしまいますと、目標は立てさせたはよいけれど、実際はそれを以って管理できていないという、反って悪い結果を招きかねません。日本ですと管理者のマンパワーも比較的豊富ではありますが、中国の場合、総経理一人に非常に多くの業務負担が掛かって来るため、社員のフォローが十分に行き届くかということも見据え目標管理の実施を決断しなければなりません。

(2011年9月7日 Bizpresso掲載記事)

[執筆者プロフィール]
清原学
株式会社名南経営 人事労務コンサルティング事業部
海外人事労務チーム シニアコンサルタント(中国担当)
 1961年兵庫県生。学習院大学経営学科卒。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。大手エンジニアリング企業の取締役最高人事責任者(CHO)を歴任し、上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード上海設立。中国進出日系企業約400社の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリー、人材育成に携わる。日本、中国にて講演多数。2011年からは株式会社名南経営にて日本国内での活動を行っている。
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
・ジェトロ上海センター 人事労務委託業務契約
・財団法人 社会経済生産性本部コンサルティング部 経営コンサルタント
・兵庫県中国ビジネスアドバイザー
・神戸学院大学 東アジア産業経済センター アドバイザー


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参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about

(清原学)

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