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高年齢者を再雇用する際の処遇は、どう考えればいいの?

 前回、高年齢者の雇用継続制度について検討を実施したが、その会話の中で大熊は、服部社長の社員に対する真剣な想いを強く感じたのであった。さて、今回はそれに引き続き、再雇用時の処遇について検討を進めることとなった。



大熊社労士:
 高年齢者の雇用継続制度に関する規程類や協定書などは問題はないようです。そこで次に進みたいと思いますが、寺田部長と60歳以降の雇用について面談を行うに際して、給与などの処遇面はどのようにお話されるお考えでしょうか?
服部社長服部社長:
 はい、その点が課題として残っているのです。宮田部長が参加したセミナーの資料を参考に検討してみたのですが、それがわが社として適当なのかどうかが分からないので大熊さんのご意見をお聞きしたいと思っていたところなのです。
大熊社労士:
 承知しました。その前に「再雇用制度」というのは定年時点で一旦、雇用契約を終了させ、雇用条件を改めて契約し直すということはご存知でしょうか?
宮田部長:
 はい、理解しています。定年延長制度とは、その点が大きく違っていますよね。給与などの処遇の引き下げが可能というのは分かっているのですが、現実的にどのような条件を提示したら良いか決めかねているところです。
大熊社労士:
 そうですか。処遇を検討する前提としては、再雇用後の職務内容をどのようにするかがポイントとなりますが、この点については御社としてどのように考えていらっしゃいますか?
服部社長:
 後任者の育成がまだ十分ではありませんので、ここ1~2年間は現在の仕事をある程度は担ってもらおうと考えています。それと平行して後任者の育成をしてもらい、次第に業務そのものや責任を後任者に引き継いでもらうという計画です。また、平行して社内にあるいろいろな書類やマニュアルの整備を行ってもらいたいとも考えています。
大熊社労士:
 なるほど、よく分かりました。現在の仕事を当面は担ってもらうということですね。ただ、現在の延長線上で仕事をしてもらうと後任者の育成がなかなか進まないということも危惧されますが、その点はいかがでしょうか?
服部社長:
 そうですねぇ。一定の歯止めが必要だということですね。例えば、勤務時間については非常事態でも起こらない限りは定時で退社してもらい、休日出勤もさせないということではいかがでしょうか?
大熊社労士:
 結構だと思います。加えて引き継ぎ計画書を作成してもらい、進捗状況を報告させることも必要でしょう。ところで、給料水準としてはどのように考えておられますか?
宮田部長:
 当面現在の仕事はそのままですが、定時退社をしてもらうことで勤務時間は2割程度減り、責任も半分程度は少なくできるのではないかと考えています。そうすると、給料は現在の70%ぐらいが妥当ではないかと考えているのですが、いかがでしょうか?
大熊社労士:
 60歳を超えた方の処遇を考えるときに、ポイントの一つとして厚生年金の給付や雇用保険の高年齢者雇用継続給付金があることはご存知でしょうか?
宮田部長宮田部長:
 はい、セミナーでもそのことが強調されていましたので、私自身も少し勉強してみました。給料の額によって年金や給付金が調整されるというものですね。しかし、私の給料を例にして年金相談センターやハローワークでいろいろシミュレーションをやってもらったのですが、調べれば調べるほど分からなくなってしまったのです。
服部社長:
 その報告は宮田部長から受けていました。私の結論としては、そうした給付金等を活用して、最適給与を逆算するのではなく、働きに応じた給料を支給しようということにしたいと思っています。その上で、年金や給付金が受給できるのでしたら、別途個人として受けてもらおうという考え方です。もちろん、本人との面接で勤務時間や給料の希望が出てきたときには、十分希望を踏まえて検討するつもりです。
大熊社労士大熊社労士:
 よく分かりました。本来、そうあるべきだと私も思います。支給額が決まりましたら、念のためご連絡を頂けませんか?私の事務所に60歳以降の賃金シミュレーションソフトがありますので、それで最終的な手取りを確認してみようと思います。なお、シミュレーションするためには寺田部長の給与、賞与データの他、受給できる年金額も必要です。寺田部長が事前に年金相談センターや社会保険事務所で年金がいくらもらえるか既に計算してもらっていれば、それをご提示いただけるとすぐに計算することができます。一度ご確認いただけないでしょうか。
宮田部長:
 わかりました、寺田部長に聞いてみます。手に入れば是非シミュレーションをお願いします。せっかく働いてもらうのでしたら、できるだけ不利にならないような給与設計をしたいと思います。
服部社長:
 高年齢者といっても、現在の60歳台はバリバリ働ける方がたくさんいます。定年後はのんびりと暮らしたいという方は別として、働きたいという社員にはぜひ活躍し、やりがいのあることをしてもらいたいと思っており、その最初の対象者が寺田部長というわけです。彼は、責任感が強いですから、今後定年を迎える社員の良い見本となってくれるものと期待しています。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。前回に引き続き「高年齢者の雇用継続制度」について取り上げてみました。高年齢者の再雇用時の処遇については、定年時に一旦雇用を終了させ、新たな雇用条件のもとで雇用契約を結び直しますので給料を改定することが可能です。しかし、雇用は働きたいという社員ニーズと、働いてもらいたいという会社ニーズが合致して成り立ちますので、高年齢者の能力を十分に発揮してもらうためには、職務にあった処遇をまずは基本とすべきでしょう。一方、厚生年金や雇用保険の高年齢者雇用継続給付金などを活用すると、給料を下げても一定の収入は確保できる仕組みがあります。この仕組みを上手く利用するには社員に制度を詳しく説明するとともに、60歳以降の年金見込額を事前に調べておいてもらうなど社員の理解と協力が必要です。60歳以降の処遇については、会社の方針を設定した上で社員と再雇用についての話し合いをする前に条件面について十分検討しておいてください。


[関連条文]
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 第9条(高年齢者雇用確保措置)
 定年(六十五歳未満のものに限る。以下の条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
一 当該定年の引上げ
二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
三 当該定年の定めの廃止



関連blog記事
2007年7月16日「わが社の「高年齢者継続雇用制度」はこれで良いのでしょうか?」
https://roumu.com/archives/64567296.html
2007年7月16日「多様な労働力を活用するダイバーシティマネジメントで組織を活性化」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51021392.html
2006年12月25日「継続雇用制度における選定基準等に関する協定書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/51220945.html
2006年9月11日「改正高年齢法への対応は67.2%の企業が継続雇用制度を選択」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/50717803.html


参考リンク
厚生労働省「改正高齢法に基づく高年齢者雇用確保措置の実施状況について」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/10/h1013-3.html
厚生労働省「高年齢者雇用対策」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koureisha.html


(鷹取敏昭)


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育児休業中の社員を臨時勤務をさせる場合の育児休業給付の支給調整

 雇用保険の育児休業給付については、雇用保険法が平成19年10月に改正されることもあり、これまで数回、当ブログのテーマとして取り上げてきました。本日もこの育児休業給付に関して実際にお客様から頂いた質問の中から、育児休業中の社員に臨時で働いてもらった場合の育児休業給付の支給調整について取り上げましょう。



[質問]
 当社では、経理課の社員が育児休業を取得しています。本来であれば育児休業中は勤務は行わないのですが、今回、決算処理の都合上、どうしても2日間だけ臨時出勤をしてもらわなければならない状態になっています。本人は了承をしてくれているのですが、この出勤により給与として20,000円程度を支給することになるため、育児休業給付に影響が出るのではないかと心配しています。やはり給与が支給されると調整されてしまうのでしょうか?


[回答]
 今回のケースでは20,000円程度の給与とのことでしたので調整が行われる可能性は低いでしょう。育児休業基本給付金の支給対象期間中に賃金支払がある場合は、その賃金額が休業開始時賃金月額の一定割合を超えてしまうと、その支給額が調整(もしくは不支給)されます。
a.賃金が、休業開始時の賃金月額の50%以下の場合
  賃金月額の30%相当額を支給
b.賃金が、休業開始時の賃金月額の50%超80%以下の場合
  賃金月額の80%相当額と賃金の差額を支給
c.賃金が、休業開始時の賃金月額の80%超の場合
  支給されない


 なお、育児休業基本給付金の支給対象となる休業には、支給単位期間において就業する日が10日以下である場合を指すため、臨時出勤日数が多い場合には、そもそも育児休業として認められないため注意が必要です。


[まとめ]
 育児休業中に出勤を要請することは好ましいことではありませんが、やむを得ず要請しなければならない場合には、このような育児休業取得者が受けられる給付に配慮する必要があります。更に、臨時的な出勤を想定した育児休業規程の見直し、給与の計算方法等、会社として一定のルールを定めておく方が良いかも知れません。


[関連条文]
雇用保険法 第61条の4 第5項(育児休業基本給付金)
5 前項の規定にかかわらず、第1項に規定する休業をした被保険者に当該被保険者を雇用している事業主から支給単位期間に賃金が支払われた場合において、当該賃金の額に当該支給単位期間における育児休業基本給付金の額を加えて得た額が休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の100分の80に相当する額以上であるときは、休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の100分の80に相当する額から当該賃金の額を減じて得た額を、当該支給単位期間における育児休業基本給付金の額とする。この場合において、当該賃金の額が休業開始時賃金日額に支給日数を乗じて得た額の100分の80に相当する額以上であるときは、同項の規定にかかわらず、当該賃金が支払われた支給単位期間については、育児休業基本給付金は、支給しない。


雇用保険法施行規則 第101条の11
 育児休業基本給付金は、被保険者(高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。以下この款及び次款において同じ。)が、次の各号のいずれにも該当する休業(法第61条の4第3項 に規定する支給単位期間において公共職業安定所長が就業をしていると認める日数が10日以下であるものに限る。)をした場合に、支給する。
1  被保険者がその事業主に申し出ることによつてすること。
2  前号の申出(以下「育児休業の申出」という。)は、その期間中は休業をすることとする一の期間について、その初日及び末日(次号において「休業終了予定日」という。)とする日を明らかにしてすること。
3  次のいずれかに該当することとなつた日後の休業でないこと。
イ 休業終了予定日とされた日の前日までに、子の死亡その他の被保険者が育児休業の申出に係る子を養育しないこととなつた事由として公共職業安定所長が認める事由が生じたこと。
ロ 休業終了予定日とされた日の前日までに、育児休業の申出に係る子が一歳(次条各号のいずれかに該当する場合にあつては、一歳六か月)に達したこと。
ハ 休業終了予定日とされた日までに、育児休業の申出をした被保険者について労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項 若しくは第二項 の規定により休業する期間(次項及び第百一条の十六において「産前産後休業期間」という。)、法第六十一条の七第一項 に規定する休業をする期間(次項において「介護休業期間」という。)又は新たな一歳に満たない子を養育するための休業をする期間(次項において「新たな育児休業期間」という。)が始まつたこと(特別の事情が生じたときを除く。)。
4  労働契約の期間、期間の定めのある労働契約の更新の見込み、被保険者がその事業主に引き続き雇用された期間等からみて、休業終了後の雇用の継続が予定されていると認められるものであること。



関連blog記事
2007年7月18日「[雇用保険法改正]育児休業給付を受給した場合の基本手当との調整」
https://roumu.com
/archives/51022618.html
2007年6月13日「雇用保険法改正 育児休業給付率の50%への引き上げの内容」
https://roumu.com
/archives/50990000.html
2007年5月14日「[平成19年雇用保険改正]育児休業給付の給付率引き上げ」
https://roumu.com
/archives/50969725.html


参考リンク
ハローワーク「育児休業給付」
http://www.hellowork.go.jp/html/info_1_h3d.html#b-1
千葉労働局「育児休業給付について」
http://www.chiba-roudoukyoku.go.jp/seido/antei/antei07.html


(宮武貴美)


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届出漏れに注意!海外派遣社員の介護保険適用除外手続

介護保険適用除外等該当届 本日は不定期連載をしています「海外勤務特集」として、海外派遣社員の介護保険の除外について取り上げることにしましょう。



[質問]
 中国派遣を行う当社の社員は現在43歳です。給与からは介護保険料を徴収していますが、海外派遣社員は介護保険料がいらないという話を聞いたことがあります。この話は本当でしょうか?


[回答]
 その社員が日本に住所を有さない場合は介護保険の被保険者とならないため、届出を行うことで保険料の徴収は不要となります。(画像はクリックして拡大)


 まず、介護保険法では被保険者を以下の2つに定めています。
a.第1号被保険者
  市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者
b.第2号被保険者
 市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者


 長期の海外勤務を行う場合、通常は日本の住民票の除表を行います。これにより日本に住所を有さないこととなりますので、「介護保険適用除外等該当届」を社会保険事務所に提出することで、保険料徴収の対象外となります。ただし、被保険者ではないため、介護保険が提供するサービスを受けることもできなくなります。また逆に、帰国した際には被保険者となりますので「介護保険適用除外等非該当届」を提出し、保険料を支払う必要があります。なお、該当届を提出する際には添付書類として住民票の除票の添付が必要となります。


[まとめ]
 この規定は介護保険法に記載されているものであり、届出漏れが発生しやすいもののひとつです。40歳以上の健康保険被保険者が海外勤務となる場合の他、海外勤務中の健康保険被保険者40歳になる場合にも注意しなければなりません。


[関連条文]
介護保険法第9条(被保険者)
 次の各号のいずれかに該当する者は、市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)が行う介護保険の被保険者とする。
 1 市町村の区域内に住所を有する六十五歳以上の者(以下「第一号被保険者」という。)
 2 市町村の区域内に住所を有する四十歳以上六十五歳未満の医療保険加入者(以下「第二号被保険者」という。)



参考リンク
社会保険庁「健康保険・厚生年金保険適用関係届書・申請書一覧」
http://www.sia.go.jp/sinsei/iryo/index.htm


(宮武貴美)


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2007年中小企業賃上げ最終集計 結果は4,149円(1.64%)~日本経団連最終集計

2007年中小企業賃上げ最終集計 結果は4,149円(1.64%) 先日、日本経団連より「2007年春季労使交渉・中小企業業種別妥結結果」の最終集計結果が公表されました。この調査は、原則として従業員数500人未満の17業種765社を対象に行われたもの。この最終集計では妥結済で平均金額が明らかになっている680社の集計結果となっていますが、これによれば今春の中小企業の昇給平均は総平均で4,149円(アップ率1.64%)という結果になりました。昨年の実績が3,901円(1.54%)でしたので、額で248円・率で0.1%のプラスとなっています。(画像はクリックして拡大)


 またこれを規模別で見ると、以下のようになっています。
従業員数100人未満の企業 3,680円(1.54%)
従業員数100人以上300人未満の企業 3,998円(1.54%)
従業員数300人以上の企業 4,410円(1.70%)



関連blog記事
2007年6月7日「日本経団連による2007年賃上げ最終集計 結果は6,202円(1.90%)」
https://roumu.com
/archives/50989612.html
2007年4月1日「中小企業の2007年賃上げ 連合二次集計では4,755円(1.87%)」
https://roumu.com
/archives/50932311.html
2007年3月30日「東京都内労働組合 今年の昇給一次集計結果と過去10年間の推移」
https://roumu.com
/archives/50929482.html
2007年3月27日「中小企業の2007年賃上げ 連合一次集計では5,287円(2.04%)」
https://roumu.com
/archives/50925869.html
2007年3月26日「2007年賃上げ一次集計 日本経団連は6,208円(1.85%)、連合は6,150円(1.99%) 」
https://roumu.com
/archives/50925851.html


参考リンク
日本経団連「2007年春季労使交渉・中小企業業種別回答一覧[最終集計]」
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/062.pdf


(大津章敬)


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私有車の業務上利用に関する規程

私有車の業務上利用に関する規程 先日ご紹介した車両管理規程同様、自家用車を業務に使用する際の承認基準について定めた規程のサンプル(画像はクリックして拡大)です。
重要度 ★★★★

[ダウンロード]
WORD
Word形式 mycar.doc(30KB)
PDFPDF形式 mycar.pdf(11KB)

[ワンポイントアドバイス]
 先日後紹介した車両管理規程は、もっぱら通勤に自家用車を使用することを前提とした規程でしたが、こちらは通勤など、常態として自家用車を使用するのではなく、スポット的に自家用車を業務に利用する場合を念頭に置いた内容となっています。業務にマイカーを使用して、万一事故が発生した場合、会社としての責任を免れることはできませんので、その許可基準について明確化し、厳格に運用することが重要です。


関連blog記事
2007年6月5日「車両管理規程」
https://roumu.com/archives/54415472.html
2007年2月14日「マイカー通勤使用登録申請書」
https://roumu.com/archives/52326892.html
2007年2月15日「駐車場使用申請書」
https://roumu.com/archives/52351673.html

 

(大津章敬)

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海外で治療を受けた場合の健康保険の申請方法

海外で治療を受けた場合の保険適用 先日のブログ記事「海外派遣者の社会保険・雇用保険・労災保険の取り扱い」では、海外勤務者の社会保険加入の問題を取り上げました。名南経営では上海に法人を設立し、数名の社員を実際に派遣しているのですが、今回はその上海の法人に派遣される社員に関して、私が社内で実際に相談を受けた海外での治療費の問題について取り上げてみたいと思います。



[質問]
 前回の質問で健康保険を加入し続けられることが分かりました。本人にも説明したところ、「中国でかかった治療費は日本の保険証を出しても利用できないと想像はつくのですが、それでは実際に病院に行く際にはどうすれば良いのでしょうか?」という質問がありました。一旦、本人が立て替えることになるのかと思いますが、注意点などがあれば教えてください。


[回答]
 ご質問にある通り、海外でかかった治療費は一旦立替て頂き、日本で療養費の支給申請を行うこととなります。この際に添付資料として「診療内容明細書」(画像はクリックして拡大)、「領収明細書」、「およびの日本語の翻訳文」が必要となります。事前に社会保険事務所で「海外療養費支給申請添付書類様式」を入手し、そこに中国で治療を受けた際に医師の証明をもらう準備をしておくと良いでしょう。なお注意点として、あくまでも支給される療養費は国内における保険診療の範囲内となります。海外で受けた治療のすべてが療養費支給申請の対象となるわけではありません。


[まとめ]
 海外勤務における病院への罹り方は、保険の取扱いも日本と異なることから取扱いに不安を感じるものです。事前に書類を渡す工夫を行うとともに、その申請方法や療養費の受取方法も決定しておいた方がよいでしょう。社会保険事務所から直接海外送金することはできないため、代理として事業主が一旦受け取るなどの工夫が必要になると思われます。



関連blog記事
2007年7月13日「海外派遣者の社会保険・雇用保険・労災保険の取り扱い」
https://roumu.com
/archives/51017702.html
2007年7月10日「社員に海外出張させる場合の労災適用」
https://roumu.com
/archives/51015120.html


参考リンク
社会保険庁「健康保険給付関係申請書一覧」
http://www.sia.go.jp/sinsei/iryo/kyufu.htm


(宮武貴美)


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今夏の大企業賞与妥結額平均は910,286円(プラス3.01%)~日本経団連最終集計

今夏の大企業賞与妥結額平均は910,286円(プラス3.01%) 昨日、日本経団連より「2007年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況(最終集計)」の資料が発表されました。調査対象は主要21業種・大手269社(東証一部上場、従業員500人以上が原則)で、今回の最終集計(7月18日)では、妥結済みで集計可能な21業種183社のデータ集計となっています。


 これによれば今夏の大手企業の賞与妥結額平均は、910,286円となり、昨年同季の883,695円よりも額で26,591円、率で3.01%上回るという高水準の結果になったことが明らかになりました。夏季賞与において90万円台となるのは、1959年の調査開始以来初めてのことだそうです。ちなみに製造業の平均は930,876円(前年同季比プラス3.14%)、非製造業の平均は853,013円(前年同季比プラス1.38%)となっています。(画像はクリックして拡大)



関連blog記事
2007月6月30日「今夏の大企業賞与妥結額平均は925,380円(プラス2.85%)」
https://roumu.com
/archives/51007160.html
2007年6月14日「都内労働組合の2007年夏季賞与平均妥結額は790,891円」
https://roumu.com
/archives/50994671.html
2007年5月30日「2006年の大企業年間賞与平均支給額 非管理職は1,576,821円・管理職は2,911,270円」
https://roumu.com
/archives/50983333.html
2007年5月9日「2007年夏季賞与は5年連続増加も伸び率は小幅に」
https://roumu.com
/archives/50965560.html
2007年2月12日「昭和45年から現在に至る我が国の賞与支給水準の推移」
https://roumu.com
/archives/50882853.html


参考リンク
日本経団連「2007年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況(最終集計)」
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/061.pdf


(大津章敬)


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[雇用保険法改正]育児休業給付を受給した場合の基本手当との調整

[雇用保険法改正]育児休業給付を受給した場合の基本手当との調整 今回は、再度10月に改正が行われる雇用保険の改正点の中から、「案外落し穴だなぁ」と感じる育児休業給付と基本手当の算定基礎期間の調整について取り上げましょう。



[質問]
 当社では育児休業を取得し、職場復帰する社員が徐々に増えてきました。総務部でも8月14日が出産予定日の社員がおり、予定日通りの出産となると10月10日から育児休業に入ります。ところで、今回の雇用保険の改正で育児休業を取ると将来の失業手当が減額されるかも知れないと聞きました。本当なのでしょうか?本当であれば内容を教えてください。


[回答]
 今回の改正で、育児休業給付の受給期間と基本手当の所定給付日数の算定基礎期間との調整が行われることになりました。被保険者期間(算定基礎期間)と離職のタイミングによっては、基本手当の額は育児休業を取得しなかった方と比較して少なくなる可能性があります。
【例】雇用保険被保険者期間10年3ヶ月で自己都合で退職した場合
■ケース1:育児休業取得したことがない場合
 雇用保険被保険者期間は10年3ヶ月のため、基本手当は120日
■ケース2:育児休業期間を平成19年10月から平成20年4月までの6ヶ月間取得した場合
 雇用保険被保険者期間は「10年3ヶ月-6ヶ月=9年9ヶ月」となりるため、基本手当は90日


 今回の改正により平成19年10月1日以降に育児休業を開始し、育児休業給付を受けた期間については基本手当の算定基礎期間から除外されることとなります。従って、上記のケース2のように算定基礎期間10年未満の所定給付日数90日、算定基礎期間10年以上20年未満の所定給付日数120日のように、基本手当の所定給付日数の境目となる算定基礎期間となった場合は、育児休業給付を受けた期間によって基本手当が少なくなる可能性があります。


[まとめ]
 この内容は育児休業取得時ではなく、離職時に問題となりやすいといえます。特に、解雇・倒産等で離職を余儀なくされた特定受給資格者については、最大90日の差異がでてきます。離職時にもめることがないよう、育児休業取得時に事前に説明することが求められるでしょう。



関連blog記事
2007年6月13日「雇用保険法改正 育児休業給付率の50%への引き上げの内容」
https://roumu.com
/archives/50990000.html
2007年5月14日「[平成19年雇用保険改正]育児休業給付の給付率引き上げ」
https://roumu.com
/archives/50969725.html


参考リンク
厚生労働省「雇用保険法が変わります!~雇用保険被保険者のみなさまへ」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koyouhoken05/pdf/02.pdf
厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(平成19年法律第30号)の概要」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/koyouhoken05/pdf/01.pdf


(宮武貴美)


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通信教育取扱規程

通信教育取扱規程 社員の自己啓発を支援するため、会社が通信教育を斡旋し、その費用補助を行う制度の取り扱いについて定めた規程サンプル(画像はクリックして拡大)です。
重要度 

[ダウンロード]
WORD
Word形式 tsushin_kyouiku.doc(29KB)
PDFPDF形式 tsushin_kyouiku.pdf(10KB)

[ワンポイントアドバイス]
 受講可能な通信教育の講座を一覧にとりまとめ、小冊子や社内ネットを通じて社員に情報提供し、その自己啓発を支援するという制度は、中堅以上のクラスの企業でよく見られます。また昇進や昇格にあたっては、一定の通信教育の修了を要件としている事例も多く見られますが、その場合にはこうした支援制度を上手に組み合わせていきたいものです。また最近は従来型の通信教育ではなく、インターネットを活用したWEBラーニング(WBT)のサービスも充実してきていますので、今後はそういったツールも採用しつつ、社員の主体的な能力向上を支援するという事例も増加するでしょう。

(福間みゆき)

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新入社員コーチャー制度規程

新入社員コーチャー制度規程 新入社員の指導役として先輩社員をコーチャーに任命する制度の具体的な運用を定めた規程サンプル(画像はクリックして拡大)です。
重要度 

[ダウンロード]
WORD
Word形式 rookie_coach.doc(32KB)
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[ワンポイントアドバイス]
 メンター制度とも呼ばれることがあるこの制度ですが、上司や先輩社員が新入社員の指導役となり、業務はもとより、社会人としてのマナーなどを教育していくという制度です。また最近では新入社員の短期での離職が多くの組織で問題になっていますが、先輩格の社員が定期的に面談等を通じて、その問題解決を図ることで、若手社員の離職率の引下げやモチベーション向上を図ることにも繋がることでしょう。

 なお、この制度では直接的には新入社員のケアを行うということになる訳ですが、運用においてはその最終目的は社員の自立を促進することであることを再確認することも必要ではないかと思います。


参考リンク
日本IBM「技術系社員の育成強化へ新メンター制度を導入」
http://www-06.ibm.com/jp/press/20060526001.html
フコク生命「メンター制度」
http://www.fukoku-saiyo.com/report/mentor.html

 

(福間みゆき)

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