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中国人事管理の先を読む!第20回「進出企業の人事制度(14)人事考課②

 今回は人事考課制度の中でも代表的な制度である目標管理(MBO)のお話をしたいと思います。

 日本本社では多くの企業が目標管理を早くから取り入れ、人事考課のひとつのツールとして運用されています。しかし、進出企業をみますと、営業職に対し数値目標を立てさせるなど一部に目標管理を導入していても、全社的に導入している企業はまだ限られています。感覚的には企業全体の3割程度でしょうか。さらに、営業職に対し目標設定を行っていても、目標が定量的に立てられているか、達成の結果が賞与や昇給の決定に対しロジカルに反映させられているかとなりますと、不十分な企業を多く目にします。

 目標管理の導入に躊躇している企業の多くは、管理者の負担が増えることにその原因があるようです。確かに目標をきちんと立てさせようと思えば、目標設定自体のレクチャーを行い、社員が会社や組織の期待する目標を設定できるようになるまで数回の面談を実施しなければならないなど、日本人管理者が割かれる時間と労力は大きなものになってきます。

 しかし、仕事とは本来、目標を持って遂行するべきもので、毎日時間通りに出社し、時間が終われば帰って行く日々を過ごすだけであれば、とても仕事の成果を考えた勤務とは言えないでしょう。日本人管理者も社員一人ひとりに対して成果を求めるのは当然のことかと思われます。そうであればトドのつまり、社員に目標を持って仕事に臨んでほしいと思うのは必然的であるということになります。目標管理を成功させるには、まず初めから多くを求めないこと、また管理者は忍耐強く執拗に取り組むこと、そして小さく始めることの3つがポイントになります。

 社員に目標を書かせると、まったくピントのずれた目標を書いてくることで一憂する管理者もいますが、目標なんて立てたこともない社員に最初から素晴らしい目標を立てられるはずがありません。うまく書けなくて当たり前なのですから、教え甲斐がありますし、指導を続けた結果、管理者が求める目標を社員自らが立てられるようになれば、組織の成長としては目を見張るものがある訳です。そうなることを願い、目標が立てられない社員をいまから指導していかなければなりません。

 また、最初から欲を出して多くの社員を目標管理の対象にしてしまうと、長続きしない確率が高くなります。最初は管理者の身近にいる社員、あるいは上澄みの幹部社員だけに2つ3つの目標を立てさせ、管理者が十分にケアできる範囲で社員を育てながら、仕事を遂行する上での目標とは何かを徹底的に教え込んでいくことが大切です。
(2011年9月22日 Bizpresso掲載記事)

[執筆者プロフィール]
清原学
株式会社名南経営 人事労務コンサルティング事業部
海外人事労務チーム シニアコンサルタント(中国担当)
 1961年兵庫県生。学習院大学経営学科卒。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。大手エンジニアリング企業の取締役最高人事責任者(CHO)を歴任し、上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード上海設立。中国進出日系企業約400社の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリー、人材育成に携わる。日本、中国にて講演多数。2011年からは株式会社名南経営にて日本国内での活動を行っている。
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
・ジェトロ上海センター 人事労務委託業務契約
・財団法人 社会経済生産性本部コンサルティング部 経営コンサルタント
・兵庫県中国ビジネスアドバイザー
・神戸学院大学 東アジア産業経済センター アドバイザー


清原学による中国人事労務管理関連セミナー情報
[東京]3時間で全体像を理解する!中国労務管理の基礎知識
日時:平成23年11月8日(火) 午後1時30分~午後4時30分
会場:名南経営東京事務所セミナールーム(日比谷)
詳細および申込みは以下より:
http://www.lcgjapan.com/sr/seminar/1111china.html

[名古屋]中国進出企業の労務管理・社会保険セミナー
第1回(中国社会保険法)
「中国社会保険法」の駐在員適用と企業の対策
日時:平成23年10月6日(木)13:30~16:30
場所:ウィンクあいち 1202研修室(名古屋駅)
第2回(労務管理)
中国労働関連法の最新政策と労務管理のポイント
日時:平成23年11月7日(月)13:30~16:30
場所:名古屋商工会議所 3階第5会議室(伏見)
詳細および申込みは以下より:
https://www.meinan.net/seminar/20111006rm.html


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(清原学)

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辞令(昇進)

shoshiki460 昇進した際に、従業員に交付する辞令サンプル(画像はクリックして拡大)です。
重要度:
官公庁への届出:なし

[ダウンロード]

WORD
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pdfPDF形式 shoshiki460.pdf(4KB)

[ワンポイントアドバイス]
 役職に昇進した際には、方針発表会等の全従業員が集まる機会を利用して、辞令交付を行いたいものです。


(福間みゆき)


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欠勤を自動的に年次有給休暇に振り替えても大丈夫でしょうか?

 最近は総務の実務のほとんどを仕切って進めている福島さん。今回は勤怠管理において手間が掛かっている社員欠勤時の取り扱いについて、大熊に質問することとした。


福島さん:
 大熊先生、おはようございます!
大熊社労士:
 おはようございます。今日も元気ですね。
 福島さん:
 ありがとうございます。この週末は友達と近場の温泉に行き、ゆっくり休んだので体調も万全で超元気です!今日は早速教えて頂きたいことがあるのですが…。
大熊社労士:
 はい、どんな内容でしょうか?
福島照美福島さん:
 実は社員が欠勤をした際の取り扱いなのですが、当社では急病などで社員が急遽欠勤することになった場合、原則として年次有給休暇(以下、「年休」という)を事後で取得できるようにしています。手続きとしては翌日以降に出勤した際、上長を経由して年休の申請を出してもらっているのですが、これが結構煩雑なので、欠勤した際に年休が残っていれば、自動的にそれを充当できないかと考えているのです。この取り扱いに問題はありませんか?
大熊社労士:
 なるほど、確かにほとんどの社員は充当で問題ないはずでしょうから、そうしたいという総務の考えはよく理解できます。しかし、その取り扱いは労働基準法的には問題がありますね。
 福島さん:
 そうなんですか?いや、実はもしかしたらそうかなと思って質問させてもらったのです。
大熊社労士:
 さすが労働基準法の勉強をしている成果が出ていますね。福島さんはなぜその取り扱いに問題があるかも知れないと思ったのですか?
 福島さん:
 はい、年休は労働基準法 第39条第5項において「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない」とされていますよね。今回の取り扱いは従業員の請求なしに自動的に年休を取得させるという点で問題があるのかなと思ったのです。
大熊社労士:
 素晴らしい!そのとおりです。年休は従業員が指定した時季に付与するものである以上、その指定がないままに自動的に欠勤日に年休を充当させるのは問題なのです。さすが勉強の成果が出ていますね。
 福島さん:
 ありがとうございます。
大熊社労士大熊社労士:
 また労働基準法上の問題だけではなく、規律保持という点でもその取り扱いはやめておいた方が良いように思います。欠勤しても年休が自動的に充当されるとすると、中には出勤についてルーズになるものが出たり、また曖昧な理由で何日も欠勤するような者が出た場合に指導することが難しくなることも考えられます。
 福島さん:
 確かにそうですね。
大熊社労士:
 よって実務的にはやはり急病などによる欠勤の際には、出勤後、遅滞なく欠勤届を提出させ、特に問題がなければ本人に年休の申請をするかどうかの意思確認をするというのが良いでしょう。ちなみにそもそもの話ですが、当日の急な欠勤について、年休を与えなければならないということはありません。これは年休が残っている従業員に対する恩恵的な取り扱いですので、出勤状況に問題がある従業員などについては一定の基準を設けて、そうした取り扱いを行わないことがあるというルールも整備しておくことが望まれます。
 福島さん:
 ありがとうございました。よく分かりました!

>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。今回は年次有給休暇の取り扱いに関する実務問題を取り上げました。年次有給休暇の取得はあくまでも事前申請が大原則ですので、まずはその取得に関するルールを明確にしておきましょう。また前回の労働基準法改正で時間単位の年休取得が制度化されました。この時間単位取得を認めている事業所においては、遅刻の際にその事後申請を認めるかどうかは大きな課題となっています。下手にそれを認めると、遅刻に対する抵抗感が低くなり、一部の社員において遅刻が増加する恐れがありますので、年次有給休暇の権利の問題と従業員の規律の保持という問題をバランスよく検討し、自社の風土にあったルール作りを行うことをお勧めします。

(大津章敬)

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身元保証書(四者契約)

shoshiki457 従業員が入社の際に提出してもらう書類の中で、比較的一般的なものの1つが身元保証書です。これは従業員が何らかの損害を会社に与えた際、身元保証人が連帯して損害額を賠償するという契約書になります。なお保証人の資格として、従業員とは別に独立した生計を営む者とするといった定めを就業規則で行うことも多くみられます。 これは四者で契約する際の書式(画像はクリックして拡大)です。


□重要度:★★★★
□官公庁への届出:不要
□法定保存期間:特になし(少なくとも契約期間は保存が必要)


[ダウンロード]
WORD12Word形式 shoshiki457.doc(29KB)
PDFPDF形式 shoshiki457.pdf(3KB)

[ワンポイントアドバイス]

身元保証書を作成する際に注意が必要な項目は、以下の2点です。
契約の期間について
 身元保証契約の期間は、保証書に期間の定めがない場合は成立の日より3年間になります。最長の定めは5年であり、仮に5年を超える期間を定めた場合、5年に短縮になります。また、自動更新の条項は認められていませんので、仮に自動更新条項を入れた場合にはその自動更新の条項については無効となります。従って、正確に運用を行うのであれば、最低でも5年に1回、身元保証書の契約の更新手続が必要となります。
従業員の担当業務変更について
 人事担当から経理担当への変更のように従業員の担当業務に大幅の変動があったような場合は、身元保証人にその内容を通知する必要があります。これは担当業務の変更により、その賠償責任を負うリスクが高まることがあるためです。


[根拠条文]
身元保証ニ関スル法律
第一条
 引受、保証其ノ他名称ノ如何ヲ問ハズ期間ヲ定メズシテ被用者ノ行為ニヨリ使用者ノ受ケタル損害ヲ賠償スルコトヲ約スル身元保証契約ハ其ノ成立ノ日ヨリ三年間其ノ効力ヲ有ス但シ商工業見習者ノ身元保証契約ニ付テハ之ヲ五年トス


第二条
1 身元保証契約ノ期間ハ五年ヲ超ユルコトヲ得ズ若シ之ヨリ長キ期間ヲ定メタルトキハ之ヲ五年ニ短縮ス
2 身元保証契約ハ之ヲ更新スルコトヲ得但シ其ノ期間ハ更新ノ時ヨリ五年ヲ超ユルコトヲ得ズ


第三条
使用者ハ左ノ場合ニ於テハ遅滞ナク身元保証人ニ通知スベシ
一  被用者ニ業務上不適任又ハ不誠実ナル事跡アリテ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ惹起スル虞アルコトヲ知リタルトキ
二 被用者ノ任務又ハ任地ヲ変更シ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ加重シ又ハ其ノ監督ヲ困難ナラシムルトキ


(宮武貴美)


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中国人事管理の先を読む!第19回「進出企業の人事制度(13)人事考課①」

 今回からは、社員の評価についてお話を進めたいと思います。人事考課をどのように制度化するかは、企業の人事制度にとって非常に大きなポイントとなってまいります。人事考課は即ち、社員の育成に直結してまいります。そのような視点から考えた場合、社員をどのように育てていきたいかということと、制度にした場合に会社や組織の方針にとってしっくりくるかということも含めて整備していかなければなりません。ことさら経営者は理想や気持ちの焦りから複雑な制度や高いレベルの考課制度を導入したくなるものですが、現在の組織や社員の能力レベルで果たしてそのような制度がすぐに運用できるのかということも同時に考慮していかなければなりません。

 人事考課制度は4割が制度そのもの、6割が運用というように、良い制度として役割を果たすためには運用面に大きく左右されるものです。従って、どんなに良い制度を作っても、あまりに背伸びしすぎてしまうと実際には運用できないという現象が起こりやすくなります。人事考課制度が現状に馴染むのかどうかは組織の成長とともに修正を加えていけばよいのです。兎にも角にも運用できる制度ということを念頭に構築して頂きたいと思います。

 人事考課には2つの要素があり、ひとつは社員の業績(=パフォーマンス)を評価するもの、もうひとつは社員の保有するポテンシャルな能力を評価するものに区分されます。業績はよく「目標管理制度」として制度化され、能力は「能力基準」として考課制度として形成されます。

 「能力基準」は多くの企業で使われておりますが、問題は「目標管理」を取り入れるかどうかの判断になります。日本の企業の多くは目標管理制度を導入しているため、経営者は中国でも目標管理を実施したいという要望を抱くのは理解できます。しかし、現状の社員の能力レベルで目標管理を行うのが得策かどうかを慎重に判断しなければなりません。目標管理は単に目標を持たせて遂行させるだけでは不十分で、目標を設定させるところから定期的に進捗を確認するところまで行う必要があり、言い換えれば管理者自身の負担も非常に大きなものとなります。これを疎かにしてしまいますと、目標は立てさせたはよいけれど、実際はそれを以って管理できていないという、反って悪い結果を招きかねません。日本ですと管理者のマンパワーも比較的豊富ではありますが、中国の場合、総経理一人に非常に多くの業務負担が掛かって来るため、社員のフォローが十分に行き届くかということも見据え目標管理の実施を決断しなければなりません。

(2011年9月7日 Bizpresso掲載記事)

[執筆者プロフィール]
清原学
株式会社名南経営 人事労務コンサルティング事業部
海外人事労務チーム シニアコンサルタント(中国担当)
 1961年兵庫県生。学習院大学経営学科卒。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。大手エンジニアリング企業の取締役最高人事責任者(CHO)を歴任し、上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード上海設立。中国進出日系企業約400社の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリー、人材育成に携わる。日本、中国にて講演多数。2011年からは株式会社名南経営にて日本国内での活動を行っている。
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日時:平成23年11月8日(火) 午後1時30分~午後4時30分
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第2回(労務管理)
中国労働関連法の最新政策と労務管理のポイント
日時:平成23年11月7日(月)13:30~16:30
場所:名古屋商工会議所 3階第5会議室(伏見)
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参考リンク
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(清原学)

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当ブログの記事の無断転載を固く禁じます。

妊娠の申し出を受理した際に本人へ渡す説明資料(例)

shoshiki447 これは、会社が妊娠の申し出を受理し、その際に会社が本人に対して知っておいて欲しいこと(産前休暇の申し出方法、育児休業制度の概要等)を分かりやすくまとめた説明資料のサンプル((画像はクリックして拡大)です。
重要度:
出所:財団法人女性労働協会


[ダウンロード]
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PDFPDF形式 shoshiki447.pdf(12KB)


[ワンポイントアドバイス]
 企業としては、イントラネットに情報を掲示するなどして、日頃から従業員に社内制度についてわかりやすく伝えるようにしておくことが求められます。このような説明資料を渡すなどして、安心して勤務が続けられるようにしておきたいものです。

※2011年11月16日に、ダウンローファイルを差し替えました。



参考リンク
財団法人女性労働協会

http://www.jaaww.or.jp/

(福間みゆき)


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名南経営まで

3時間で全体像を理解する!中国労務管理の基礎知識セミナー 11月8日(火)に東京で開催

清原学の中国人事労務管理セミナー 国内市場の縮小や過去に例がない水準となっている円高の影響を受け、企業の海外進出が止まりません。この流れは社会保険労務士の中心顧客である中小企業にも及んでおり、今後、海外進出に関する相談が急増すると予想されます。

 そこで今回、日本企業にとっての最大の海外進出先である中国の人事労務管理の概要を3時間で学ぶセミナーを企画しました。これから中国のことを勉強する方には最適な内容となっておりますので、この機会に是非、ご参加ください。
※本セミナーは一般企業のみなさまにも最適な内容となっております。多くのみなさまのご参加をお待ちしております。


3時間で全体像を理解する!中国労務管理の基礎知識
平成23年11月8日(火) 午後1時30分~午後4時30分
会場:名南経営東京事務所セミナールーム(日比谷)
講師:株式会社名南経営 シニアコンサルタント(中国担当) 清原学


 人件費の高騰や所得倍増計画などの影響もあり、中国の人事管理は益々難しくなってきております。また各種報道でも見られるとおり、中国全土では企業と従業員との労働争議も増加の一途を辿り、中国の労務管理は進出企業にとっても年々重要なテーマとなっています。

 本セミナーでは、実務家として最低限押さえておきたい中国労務管理の基礎をマスターすることを目的とし、中国建国から経済大国に至るまでの変遷と歴史的背景、中国労働法、労働契約法、労働組合(工会)法など、重要な労働関連法の概要と労務管理のポイントを分かりやすく解説します。
1.社会主義と労働者の概念、改革解放以降の民主主義国家としての中国の政策
2.中国憲法と労働法
3.中国労働契約法の解説と労務リスクを防ぐ実務上のポイント
4.中国の労働組合の仕組
5.中国工会法(労働組合法)と工会設立のポイント
6.有給休暇条例、企業賃金支払条例、中国の祭日制度

[講師プロフィール]
清原学
株式会社名南経営 人事労務コンサルティング事業部 海外人事労務チーム シニアコンサルタント(中国担当)

 1961年兵庫県生。学習院大学経営学科卒。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。大手エンジニアリング企業の取締役最高人事責任者(CHO)を歴任し、上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード上海設立。中国進出日系企業約400社の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリー、人材育成に携わる。日本、中国にて講演多数。2011年からは株式会社名南経営にて日本国内での活動を行っている。
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構 国際化支援アドバイザー
・ジェトロ上海センター 人事労務委託業務契約
・財団法人 社会経済生産性本部コンサルティング部 経営コンサルタント
・兵庫県中国ビジネスアドバイザー
・神戸学院大学 東アジア産業経済センター アドバイザー

[日時および会場]
日時:平成23年11月8日(火) 午後1時30分より午後4時30分
会場:株式会社名南経営東京事務所 セミナールーム(日比谷)
東京都千代田区内幸町1-1-7 NBF日比谷ビルアネックス2F 定員:60名

[受講料]
一般 12,600円(税込)

[お申込み]
 本セミナーのお申し込みは以下よりお願いします。なお、LCG会員のみなさんは会員専用ホームページ「MyKomon」の専用フォームよりお申込みをお願いします。
http://www.lcgjapan.com/sr/seminar/1111china.html

[名古屋でも10月、11月に中国人事労務関連セミナーを開催]
第1回(中国社会保険法)
「中国社会保険法」の駐在員適用と企業の対策
日時:平成23年10月6日(木)13:30~16:30
場所:ウィンクあいち 1202研修室(名古屋駅)
第2回(労務管理)
中国労働関連法の最新政策と労務管理のポイント
日時:平成23年11月7日(月)13:30~16:30
場所:名古屋商工会議所 3階第5会議室(伏見)

詳細および申込みは以下より
https://www.meinan.net/seminar/20111006rm.html


関連blog記事
連載「中国人事管理の先を読む!」
https://roumu.com
/archives/cat_50025165.html

(大津章敬)

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中国人事管理の先を読む!第18回「進出企業の人事制度(12)中国社会保険法 外国人適用を読み解く」

本記事は2011年8月17日 Bizpresso掲載記事のバックナンバー転載です。細則に基づく記事は近日公開予定です。

 2011年8月3日(水)~5日(金)の3日間、大阪、東京で講演を担当します。そのうち2日間が「中国社会保険法」に関するテーマです。参加される方のほとんどは、中国に現地法人をお持ちの本社のご担当者の方。東京は当初100名の会場の予定でしたが、120名以上の応募があり、主催者が急きょ会場を変更されました。皆様の本テーマへの関心の深さがうかがわれます。

 主催者から送られてきた参加者の皆様からの事前質問を見ていますと、「日中間の協定はどうなっているのか」「日本と中国での二重加入はどうなるのか」「情報が錯綜しているが、実際のところ、どのような状況になっているのか」など、本社の皆様のご心配が伝わってまいります。

 上海市からは本法施行直前の6月28日に「外国人の社会保険加入に関する通知」が発表となりました。しかし、内容としてはお粗末なもので、「中央政府の決定を待って上海市も決めるから、それまでは待っていろ」としか解釈できません。果たして、外国人への適用に関する細則はどのような内容で公布されるのか、そのヒントは今まで発表されてきた数々の通知から読み取ることができます。

 まず、ひとつは上海市が09年に公布した「上海市就労外国籍人員と国外永久(長期)居留権人員、台湾・香港・マカオ地区居住者の都市従業員が社会保険に参加する若干の問題に関する通知」((2009)38号)です。これは、上海市で就労する外国人は養老保険、医療保険、工傷保険(労災保険)の3種の保険に任意に加入することができるというものです。ですから、今回の社会保険法以前にも、任意ではありますが外国人に対して中国の社会保険の門戸はすでに開かれているというわけです。

 次に、6月10日に発表になった「中国国内就業外国人の社会保険加入暫定弁法(意見募集稿)」の内容です。この意見募集稿の条文をよく読んでみると、現地採用者と国外からの派遣出向者に対する取り扱いが微妙に異なっていることに気がつきます。

 中国国内で登録登記した企業が募集採用した外国人は「養老、医療、工傷、失業、生育保険に加入」とありますが、国外企業から派遣されている外国人は「国内企業により社会保険登記の手続きを行うこと」というように、外国人であっても明らかに2つのパターンに条文は区分されています。これが何を意味するのか、非常に興味深いところではあります。

 二国間協定がないまま外国人適用が見切り発車となれば、二重加入は避けられない問題ではありますが、加入すべき保険は特定のものに限定されるかもしれません。

(2011年8月17日 Bizpresso掲載記事)

[執筆者プロフィール]
清原学
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 1961年兵庫県生。学習院大学経営学科卒。共同通信社、アメリカAT&Tにて勤務後、財団法人社会経済生産性本部にて組織人事コンサルティングに従事。大手エンジニアリング企業の取締役最高人事責任者(CHO)を歴任し、上海・大連・無錫・ホーチミン・香港の駐在を経て、2004年プレシード上海設立。中国進出日系企業約400社の組織構築、人事制度設計、労務アドバイザリー、人材育成に携わる。日本、中国にて講演多数。2011年からは株式会社名南経営にて日本国内での活動を行っている。
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清原学による中国進出企業の労務管理・社会保険セミナー 名古屋で10月、11月連続開催
第1回(中国社会保険法)
「中国社会保険法」の駐在員適用と企業の対策
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場所:ウィンクあいち 1202研修室(名古屋駅)
第2回(労務管理)
中国労働関連法の最新政策と労務管理のポイント
日時:平成23年11月7日(月)13:30~16:30
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詳細および申込みは以下より
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2011年9月11日「中国人事管理の先を読む!第15回「進出企業の人事制度(9)ベースアップ①」」
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2011年9月10日「中国人事管理の先を読む!第14回「中国社会保険法施行直前!外国人の適用はどうなるのか?」」
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2011年9月4日「中国人事管理の先を読む!第13回「進出企業の人事制度(8)基本給制度」」
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2011年7月12日「中国進出企業が押さえておきたい「中国社会保険法」の影響と対策セミナー パソナ様主催で開催(東京・大阪)」
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2011年7月3日「当社中国人事労務コンサルタント清原学が東京投資育成様でセミナーを開催」
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中国人事管理の先を読む!第17回「進出企業の人事制度(11)ベースアップ③」

 昇給には、「ベア」と「定昇」があるということを前回お話しましたが、限られた昇給原資(予算)の中で、それぞれにどの程度の原資を振り分けるべきかが昇給決定の際の大きな悩みとなります。

 ベアを疎かにしてしまうことで引き起こす最大の弊害は、世間相場や同業社間との給与格差です。特に中国に進出している企業は、自社の給与水準と他社とを比較することに関して非常にセンシティブになっているのが常です。人材の確保や流出の防止を考えれば、それも当然のことと思われます。5年前には同業と比較して競争力を持った給与水準だったのに、ベアを実施しなかったため、現在の給与水準は業界内で相対的にかなり下がってきているという話もよく耳にします。このようなことを考えますと、常に他社と自社との給与水準の比較を行い、相場観を引き下げない程度のベアの実施は不可欠となります。

 しかし、ベアに予算を多く使ってしまうことで、パフォーマンスの悪い社員の給与まで引き上げてしまうことが起こります。また世間相場ばかり気にし過ぎて定昇の予算が僅かになってしまうと、パフォーマンスに応じたメリハリのある処遇の決定がしにくい(処遇に差をつけにくい)状況が起こり易くなりますので、この点も考慮してベア、定昇の予算配分を考えなければなりません。

 ベアを実施する場合、その指標となるのがCPI(消費者物価指数)です。中国のCPIは2006年くらいまで約1~2%前後で推移しており、非常に安定した物価を呈しておりましたが、金融危機の前くらいから急激に物価は上昇し、現在のCPIは5.5%を示しています。一方でGDPやCPIと比較した場合、賃金の伸長率は相対的に下がっています。つまり従業員の生活は年々苦しくなってきているということが窺えます。この経済要因もあり、企業に対して所得の絶対的水準の向上が求められていることになります。このような社会的要請から考えますと、仮に昇給原資全体を10%とった場合、ベアに5~6%の原資は使いたいところであり、残りの原資が定昇に使われるという考え方になります。

 前回もお話しましたが、ベアは「賃金テーブルの書き換え」です。ベアは定率よりも定額、つまり、下位等級の社員に対してほど厚くするのが理想なので、ベア原資を定額(人数で割った金額)に換算します。そこで求められた金額が今回のベアの金額となりますので、それをいま使っている賃金テーブルに一律に加えていくことでベアの作業は終了します。

(2011年8月3日 Bizpresso掲載記事)

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中国人事管理の先を読む!第16回「進出企業の人事制度(10)ベースアップ②」

 日本国内の企業では給与の上昇が鈍り、早い時期からベースアップの概念がなくなり、定期昇給と合わせて実施されるようになりました。中国では2006年に入ってからインフレ経済が進行し、賃金所得政策も重なって、物価上昇の傾向が顕著に現れておりますので、ベアを避けて賃金管理を行うことが難しくなってきています。ここで整理しておきたいのは、昇給は大きく分類して、以下の3つの要素が絡み合って決定されるということです。
①ベースアップ
②定期昇給(評価による昇給)
③昇格

 今回検証したいのは、①のベアと②の定昇です。限られた昇給原資の範囲においてベアと定昇の比率を決めるわけですが、ベアを疎かにしてしまいますと、世間相場の給与水準と自社の水準とが乖離を起こし、新規採用を行う場合、欲しい人材の要求給与が自社の給与に合致しない現象が現れてきます。また社員の流出を招く要因にも繋がります。しかしベアに多くの原資を割いてしまいますと、評価の思わしくない社員の給与まで上昇し定期昇給に原資を使えなくなってしまうことで、評価に応じた昇給に差がつかなくなり、パフォーマンスの高い社員のモチベーションダウンを起こしてしまいます。このように、昇給原資をベアと定昇にどのように予算を配分するかは非常に頭を悩ませる問題なのです。

 ベアには、定額のベアと定率のベアの2通りの方法があります。いずれも賃金テーブル(主には基本給テーブル)の書き換えを行うことになるのですが、定額は基本給テーブルに200元ずつ加えるというように、全員同じ金額でベアを行う方法で、定率は基本給テーブルに5%ずつ掛けるというように同じ比率でベアを行う方法です。

 定額ベアの場合、下位等級の社員ほどその効果が厚く、定率ベアは上位等級の社員に対して厚くなります。現在の中国の人事管理ではベアの上昇が非常に大きなカーブを描いていますので、定率で行ってしまうと、上位等級者の賃金の上昇ピッチが大きすぎてしまい、賃金の絶対額が跳ね上がってしまうため、定額ベアで行う方が組織管理としてはより効果的かと思われます。下位等級者には200元、上位等級者には300元というように、等級に合わせて定額ベアの金額を使い分けるケースもありますが、基本給テーブルというものは一定の法則によってきれいなカーブを描くよう作られていますので、ベアの定額を変えてしまうことで規則性が失われてしまうことにもなり兼ねないため、あまりお勧めはしません。

(2011年7月20日 Bizpresso掲載記事)

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